工場の中央には我が軍の司令部がおかれている。
その司令部と同じ場所に2名の前線観測員(Forward Observer)がいる。
前線にいる部隊からの砲撃要請を受け、砲兵部隊に連絡をつなぐ役割を果たしている。
本来は番外砲など戦線の後方に配置されている砲兵隊がいたり、多数の砲撃を一度に要請する場合(C&C ON)などには、この前線観測員は戦場において重要な役割を果たす。
しかし今回のようにC&C OFFでしかも番内に砲兵部隊もいる場合、この前線観測員の役割は遅延時間の短縮ぐらいでしかない。
工場の南、ヘレンドA、B、Cを守る歩兵部隊の隊長、シュネイデル少尉から緊急の無線が入ったのがまだ数分前だ。
前線観測員のべバー少尉は連絡を受けたときはいつものように落ち着いていた。
だがソ連軍の攻撃が北、東、南と周囲を取り囲むようにして、しかもかなり大規模な戦力を投入してきてことで落ち着いてはいられなくなっていた。
「これでは包囲されてしまうのは時間の問題だ」
前線で武器を持って戦ったことがないべバー少尉は動揺したが、今は自分の任務を果たすことに集中しようと心がけた。
そして司令部とのやり取りで最初の砲撃要請は南のヘレンドA近辺にすることになった。
砲兵に砲撃地点の座標を伝える。
「くそったれ!あとはなるようになれだ」
べバー少尉はポケットをまさぐりタバコを探し、ゆっくりと火をつけた。
べバー少尉がフーと大きく煙を吐き出したとき、ソ連軍の攻撃が再度始まった。








