「火砲は戦場の神だ」という言葉があるほど、火砲は重要な兵器だとされています。現実と同じくSPWAWでもこの言葉は通用し、火砲の使い方が勝敗を大きく分けてしまいます。同時にSPWAWを始めたばかりの人にとって最もわかりにくいのも、この火砲の使い方です。
SPWAWを面白いと思えるかどうかは、この火砲を上手に使いこなせるかどうかにかかっているので、できるだけ詳しく説明していきます。
基本知識
ここでいう「火砲」とは英語の"Artillery"の訳語に当たり、一般でいう「大砲」の意味です。これを単に「砲」と訳してしまうと、"Gun"との区別がつきにくくなるので訳し分けています。
例えば、"Self Propelled Artillery"と"Self Propelled Gun"は両方とも「自走砲」と訳せますが、通常、前者は迫撃砲・榴弾砲・ロケット砲を搭載した車輌を指し、後者は対戦車砲や対空砲を搭載した車輌を指します。
その国特有の分類や兵科の縄張り争いなどの要素もからむと両者を厳密に区別することは難しいのですが、感覚的に言えば「"Artillery"は山なりに打ち上げて遠くの(あるいは見えない)広い範囲を狙うもので、"Gun"はより直線的・直接的に狭い範囲を狙うもの」という説明が分かりやすいのではないかと思います(もちろん例外は多数あります)。
以下では、主に"Artillery"系の砲=「火砲」を中心に説明していきます。
盤外砲と盤内砲
SPWAWに登場する火砲は、盤外砲(Offboard)と盤内砲(Onboard)に大別されます。「盤」という訳が適切かどうかはともかく、マップ上にユニットが表示されるかどうかで区別されていると思ってください。
つまり「盤外砲」は、マップ上には表示されない火砲ユニットで、それじゃどこにいるのかというと、マップの自陣側のずっと後ろの方にいると考えてください。「盤内砲」の方は、普通のユニットと同様にマップ上に表示されるユニットです。
どうしてこんな区別が必要かというと、第一にスケールの問題です。SPWAWでは1HEXが約50mなので、全ての火砲をマップ上に表示してしまうと、明らかにリアリティを損なうからでしょう。
さらに、両火砲の射程と運用方法の違いも関係しています。「盤外砲」に分類されるのは射程の大きな長距離砲で、他のユニットが無線で砲撃を要請しないと砲撃できません。つまり間接射撃(Indirect-Fire)しかできないのです。
逆に「盤内砲」に分類されるのは、比較的射程が短い火砲で、そのユニットの視界にある敵を直接射撃(Direct-Fire)できる一方、迫撃砲など一部のものしか間接射撃はできません。
火砲の種類
SPWAWで登場する火砲ユニットには、以下のものがあります(Gun系はのぞく)。
名称(クラス分類) | 区分 | 特徴 |
---|---|---|
艦載砲 (Naval Gun) | 盤外 | 駆逐艦(Destroyer)・巡洋艦(Cruiser)・戦艦(Battle Ship)の3種類があり、全火砲の中で射程と破壊力は最強クラス。ただし連絡不能になる確率が最も高い上、登場シナリオも少ない。 |
ロケット砲 (Rocket-Launcher) | 盤内・盤外 | 威力も大きいが、砲弾のばらつきもかなり大きい。一回の砲撃で全保有弾を消費する。 |
榴弾砲 (Howitzer) | 盤内・盤外 | いわゆる「大砲」。SPWAWではカノン砲・山砲・野砲などの分類はないので、類似のものは全てこのクラスに含まれる。種類・口径により威力はさまざまだが、間接射撃時の着弾のばらつきは口径に比例して大きくなる。 |
迫撃砲 (Mortar) | 盤内・盤外 | 威力は小さいものの小型軽量で歩兵とともに行動できる火砲で、間接射撃でも正確な砲撃ができるのが特徴。もっとも使用する機会が多い。口径により軽(Light)・中(Medium)・重(Heavy)に分類される。 |
自走火砲 (SP-Artillery) | 盤内 | 装甲・非装甲の車体に搭載され移動が簡単な火砲。類似のものとして、自走迫撃砲(SP-Mortor)や自走ロケット砲(SP-Rocket Launcher)がある。また、自走ロケット砲の中には盤外砲仕様のものもある。 |
盤外砲
盤外火砲は間接照準射撃しかできません。おおざっぱに言うと、射程距離が長すぎるので自分から直接見える場所には弾を撃てないのです。
したがって、遠距離にある目標を射撃するには、他のユニットが無線で「ココを撃て!」と指示してやらなければいけません。これを砲撃要請と言います。
戦争映画などでよくあるとおり、前線にいる部隊が地図を見ながら無線で砲撃要請してますね。だいたい無線が壊れたりするんですが・・。まあ、そういう感じで使うのだと思ってください。
以下では、盤外砲の運用に必要な知識を説明します。
前進観測員
原則として、無線を備えていればどのユニットでも砲撃要請できますが、どのユニットで要請するかによって、要請してから実際に着弾するまでの時間が大きく変化します。
各ユニットの指揮官能力には火砲技能(Artillery Skill)という値が設定されており、この値が高いほど砲撃要請から実際に着弾するまでの時間が短いのです。
ユニットの中には、前進観測員(Forward Observer;FO)というクラスのユニットがあります。このユニットは名前の通り、砲撃要請・着弾観測専門の部隊で、当然火砲技能値も高く設定されています。砲撃要請の際にはこのFO部隊を利用するのが鉄則です。
砲撃遅延時間
FOユニットで砲撃要請する最大の理由は、砲撃要請から実際に着弾するまでにかかる時間を短縮するためです。この遅延時間(Delay Time)を短くするために、より高い火砲技能値を持つFOユニットで砲撃要請する必要があるのです。
砲撃遅延時間が0.2以下の場合、現在の自ターン終了直後つまり敵ターンが始まる前に着弾し、0.3〜0.5では敵ターン終了後に着弾します。遅延時間が1.0以上になると、一つ次のターンで着弾します。
例えば、遅延時間が"1.0"の場合は、現ターンを終了し、さらに次のターンを終了した後にようやく着弾するということです。
照準の事前登録
間接砲撃に伴う一番の難点は、照準を指定してから実際に砲撃が行われるまでにタイムラグが発生するという点ですが、この悩みを解消してくれる方法が照準の事前登録です。
ユニット配置時にあらかじめ照準HEXを指定しておくことができ、ゲームを開始したらいつでもその照準に対して遅延時間0.1で砲撃できます。
ただし照準の登録機能は、ユニットが自分で配置できるゲーム、つまり
砲撃したい地点は状況に応じて変化することも考慮されており、照準地点は複数個登録できます。何個まで登録できるかは、マップサイズとシナリオの任務(Mission)によって異なり、3〜10個まで登録できます("Assault"シナリオで最大)。
やり方は、
- 配置画面(Deploy Screen)で"B"キーを押して砲撃画面を開きます
- マップ上で登録したい照準HEXをクリックし、
- "Target"ボタンをクリックするだけです
すると、そのHEXに数字つきの砲撃マークが表示されます。最初は"1"と表示され、別のHEXをクリックすると"2"と表示された砲撃マークがつきます。
取り消すには、そのHEXを選択し"Target"ボタンを再度クリックしてください。こうしてゲームを開始すると、これらのHEXに対しては遅延時間0.1で砲撃できるようになります。
着弾タイミングの指定
この画面で指定できることは他にもあります。照準を登録しておくだけでなく、何ターン目にどの火砲で砲撃を行うかも指定できるのです。
任意のHEXをクリックして火砲ユニットのHE弾ボタンを押しただけでは、0ターン目(シナリオ開始と同時)にその火砲が砲撃を行うだけです。
そこで、任意のHEXをクリックし、火砲ユニットのHE弾ボタンを押す前に、"T"キーを押して任意のターン(0〜40)を入力しておくと、指定したターンに指定した火砲が砲撃をおこないます。
この機能を使えば、タイムラグに悩まされることなく盤外火砲が間接砲撃をおこなうことができます。非常に役立つ機能であることは間違いないのですが、使いこなすのは非常に難しい機能であることも確かでしょう。
ゲームを開始する前に綿密な作戦を練っておかないと、「そんなとこ指定する必要なかった!」という羽目に陥ってしまう上、砲撃ターンをいい加減に指定した場合は、自軍部隊の上に砲弾が降りそそぐという悲惨な目に遭ってしまいます・・・。
"Meeting Engagiment"・"Advance"・"Assault"シナリオでの効果的な利用方法としては、自軍部隊の進路になると思われる地点で、かつ敵が潜んでいると思われる地点上に、ある程度の間隔をあけて登録しておくことです。そうすれば、進路や敵の潜伏地点が予想とずれていた場合でも、最寄の照準登録地点に対して照準修正ボタンで修正を行えば、タイムラグを最小限に抑えつつ砲撃することができます。
逆に"Delay"や"Defend"シナリオでは、敵の進軍経路が確認しにくい分、どうしても自陣よりに登録してしまいがちですが、狭い範囲にまとめて登録してしまってはこの機能の利点が生かせません。あくまで間隔をあけて指定しておき、各登録地点付近に偵察ユニットを派遣して敵を確認しだい砲撃しておきましょう。
いずれにしても、照準修正ボタンと組み合わせて利用するのが基本です。
砲撃精度
上述のように、砲撃にかかる時間は砲撃要請ユニットの火砲技能値に左右されます。それでは、指定した照準地点に正確に着弾するかどうかは、どのように決まるのでしょうか?もちろん火砲ユニットの能力にも影響されますが、さらに砲撃要請したユニットが照準地点が見えているかどうかという点が決め手になります。
考えてみれば当たり前の話で、照準地点が見えていないと、ちゃんとそこに着弾したかどうかも確認できません。
SPWAWでは、「照準地点を観測していない場合、着弾の散らばり幅が大きくなり敵に与える損害も半減する」とマニュアルにあります。また、一般に大口径砲ほど砲弾の散らばり幅は大きく、散らばり具合にも一定の法則があります。
対砲兵射撃(Counter Battery Fire)
盤外砲はゲーム中に、砲撃音や閃光を手がかりにして、敵の盤外火砲に対して勝手に砲撃を行うことがあります。もちろん、盤外砲はマップ上に表示されないので、見えるはずもないし、照準を指定することもできません。
つまり、偶然発生するのを待つしかなく、プレイヤーにはほとんど介入の余地はありません。盤外砲だけは一切被害を受けないのは現実的ではないことから導入されたルールです。
盤外砲が対砲兵射撃を受けた場合、砲手に死傷者が発生する他、貴重な弾薬数も減ってしまいます。砲手の数が減ると砲撃遅延時間が増加し、弾薬を失うと役に立たなくなってしまいます。というわけで、気をつけましょう・・・。
盤内砲
盤内砲は機能によって、直接射撃しかできないものと、直接・間接射撃とも可能なものに分類できます。前者の代表は、歩兵砲・対戦車砲・対空砲などのGun系火砲です。そして後者には、迫撃砲や一部の榴弾砲が分類されます。
前者の説明は別項に譲り、以下では後者の直接・間接射撃ができる火砲について説明します。
特徴
盤外砲と盤内砲の最大の違いは、直接照準射撃ができるか否かという点です。盤外砲が間接照準射撃しかできないのに対し、全ての盤内砲はLOS(Line Of Sight;視界)内ならどこでも直接射撃ができます。
直接照準射撃では、FOユニットを必要としたり無線不通で射撃不能になったり着弾がばらつきまくる、といった間接射撃のようなデメリットがありません。間接射撃任務に従事している盤内砲でも、敵から攻撃された場合は、直接射撃で応戦することもできます。
また、盤外砲は「一定の範囲に幅広く抑圧を与える」という特徴を持つのに対し、盤内砲は「強力な火力を一点に集中させ直接損害を与えることができる」という特徴があります。盤外火砲と全く同じ砲が盤内火砲として登場することもありますが、この場合も上記のような射撃効果が適用されます。
弾薬補給
盤外砲と盤内砲のもう一つ大きな違いは、弾薬が補給できるか否かという点です。盤外砲は一切弾薬補給できないのに対し、盤内砲は弾薬補給車(Ammo Truck)や弾薬集積所(Ammo Dump)などがあれば弾薬補給が可能です。
弾薬補給車と弾薬集積所は補給能力が異なり、
つまり、補給車が2台あれば、集積所1個と同じ速度で弾薬を補給できます。次の条件が満たされれば、自ターン終了時に自動で弾薬補給されます。
- 補給ユニットと被補給ユニットが、同一 or 隣接HEXに位置していること
- 補給ユニットと被補給ユニットが、ターン中に移動していないこと
補給ユニットは、複数の盤内ユニットに対して、同時に、無制限に弾薬を補給します。
つまり、条件さえ一定であれば、1台の弾薬補給車は、被補給ユニットが1つでも3つでも、同じ速度で無限に補給し続けます。補給速度に影響する要因は、次の通りです。
- 抑圧状態
- 補給ユニットと被補給ユニットが、抑圧が少ないほど補給速度は向上する
- 被補給ユニットの口径
- 大口径の砲を持つユニットほど補給速度は低下する
- 被補給ユニットの砲種
- 複数の砲を持つユニットは、武装#1から順に補給される。ロケット砲の補給速度はわかりにくい(^^;)
また、
ただし、
砲兵陣地
盤内砲はマップ上に配置や移動ができる反面、盤外砲が対砲兵射撃でしか攻撃を受けないのに対し、マップ上に存在する盤内砲はあらゆる敵ユニットから攻撃を受ける可能性があります。直接射撃で応戦できるとはいえ、総じて火砲ユニットは攻撃に脆いので、「いかに安全に運用するか」という点が重要になります。
盤内砲といえども、間接射撃する際には何らかのユニット(通常はFO)が砲撃要請を行う必要があり、HQ(司令部)との連絡も必要です。盤内砲とHQの連絡を確実にするには、物理的連絡が取れるように両者を3HEX以内に置いておくことです。HQも盤内火砲も攻撃には弱いので、通常は安全な自軍後方に両者を配置することになります。
つまり、安全な後方地帯に固定された「砲兵陣地」を築く、これがオーソドックスな盤内火砲の配置方法です。この方法のメリットは、常に連絡を維持できること、砲撃任務に専念できること、弾薬補給が容易であることなどが挙げられます。
しかしこの方法は万全ではありません。砲兵陣地を固定することのデメリットは、砲撃時の硝煙により発見が容易であること、攻撃されると砲兵力が壊滅してしまうことなどです。特に対人戦では、戦線後方の砲兵陣地を狙うのはセオリーなので、護衛部隊を残しておく、何らかの移動手段を用意しておくなどの対応が必要でしょう。
火砲演習キャンペーン
以上、盤外・盤内火砲の運用方法や特徴を説明してきましたが、文字で読むだけで理解するのは難しいですね。何事も「百聞は一見に如かず」「習うより慣れろ」です。
というわけで、日本鋼豹司令部謹製「火砲演習キャンペーン」を用意しました。付属テキストにはここで書ききれなかった点も多く含まれているので、ご一読することをオススメします。このキャンペーンを通して、盤外・盤内砲兵の基本的な使い方をマスターしてください。
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