AI戦では気にならなかったことも、対人戦をやってみるとすご〜く気になることがあります。例えば、被発見マーク(*)機能。このマークがついていれば視界内に敵がいることがわかります。敵の視界を塞ぎ自分の手の内は見せないのは定石で、双方が同じ条件で戦うのだから問題ないという意見もありますが、被発見マークを頼りに煙幕をたいたり敵位置を推測したりするのは、あまりにもゲーム的だという意見もあります。
このようなゲームならではのテクニックの入り込む余地を減らそうと作られたのが、SPWAWのMOD "Head To Head"(以下、H2H)です。H2Hは対人戦を強く意識したMODで、通常のSPWAWとは異なる点が多く存在します。ここでは現時点での最新版 "H2H fr" の特徴を紹介します。
H2Hの特徴
H2Hの特徴を簡単に箇条書きにすると、次のようになります。
- 地形グラフィックの変更
- 冬季戦モード(グラフィック)の追加
- 効果音の変更
- PBEM用シナリオ・キャンペーンの追加
- PBEM用マップの追加
- ゲーム仕様の変更
- OOBの変更
ゲーム環境関連の変更
地形グラフィックが大幅に修正・追加されています。これは単に「見た目」だけの問題ですが、デフォルトのSPWAWに慣れたプレイヤーにとっては驚くほど新鮮です。マップを作りたい方にとっても、非常に工夫しがいのある材料が揃っています。
変更点は非常に多く全てを書くことはできませんが、例えば、砲弾痕、建物の破損部、タコツボ、塹壕、有刺鉄線、地雷、ドラゴンティース、石壁を利用したバリケード・・・などなど、ほとんど全てが変更されている感じです。詳細は"SHP"フォルダにある "RockinHarry New SPWAW Shapes.pdf" に書かれているので参照してください。

さらに、独ソの東部戦線やソフィン戦争用に「冬季戦モード」なるものまで用意されています。デフォルトでも雪原マップは用意されていましたが、この冬季戦モードでは地形だけでなく、登場ユニットが全て雪を覆ったアイコンや冬季迷彩で表示されるという凝りようです。もちろん歩兵も白い冬季戦用の戦闘服着用です。
「冬季戦モード」を使用するには、 "Winter" フォルダにある自己解凍ファイル(winter.exe)をダブルクリックして必要なファイルを上書きします。元に戻したい場合は、 "Summer" フォルダのファイルを起動するだけです。
グラフィック以外にもう一つゲームの印象を変えてくれるのは、独自の兵器効果音です。どこから集めたのかわかりませんが、デフォルトSPWAWに比べて全体的に「重く痛い音」になっています。特に、機関銃系兵器の効果音はホントに痛々しく、撃たれた時のショックが倍になる感じがします。
シナリオ関連の変更
H2H用に修正された専用シナリオが100個以上用意されています。これらはシナリオ一覧画面で表示されるタイトルの後ろに"PBEM"と表示されます。全て対人テストプレイによりバランス調整が行われているそうです。また、キャンペーンも8個用意されており、新たなものも海外サイトで次々に公開されています。
ユニット配置ラインやVHの位置を調整したPBEM用マップが約40個追加され、用意されている総マップ数はほぼ300個にのぼります。PBEM用マップには、例えば "Arnhem GER(del) US(adv) '44" というタイトルが付けられているので、PBEMのセットアップ時にマップ指定が簡単になっています。また、対戦陣営を入れ替えただけの「ミラーマップ」も用意されています。
ゲーム仕様の変更
Preference の "Seaching" 設定が60%
H2Hではデフォルトの索敵率が大幅に低下されているので、移動していないユニットや1HEXしか移動しない歩兵ユニットはかなり見つかりにくくなっています。これにより、偵察が非常に重要な要素となり、歩兵や牽引砲がこれまで以上に有効に利用できます。
被発見マーク(*)がつかない
被射撃マーク(#)はSPWAWと同様に存在しますが、被発見マーク(*)は表示されません。つまり、ユニットが敵に見つかっているのかどうかを確認できません。これにより、被発見マークを頼りに敵の位置を推測したり、ターン終了時に煙幕をたいて敵視界を完全に封鎖することができなくなります。
死傷者数が表示されない
H2Hでは、砲撃・交戦にともなう死傷者数(Casualities)の報告メッセージが表示されません。これにより、砲撃で敵の存在を確認することができなくなり、交戦時に射撃の正確な効果を把握することもできなくなります。ただし、画面に表示されるユニットアイコンは変化するので、敵歩兵部隊のだいたいの戦力(人数)を推測することは可能です。
敵ユニット名が表示されない
H2Hの戦闘画面では、ダメージを与えたり破壊したユニット以外は、交戦時に敵のユニット名が表示されません。ただし兵器(武器)名は表示されるので、そこから敵ユニットを推測することは可能です。また、自ターンで発見している敵ユニットを右クリックすれば一定の情報は表示されますが、輸送中ユニットの存在は表示されません。
敵ターン中に臨機射撃で壊滅した敵ユニットや煙幕をたいた敵ユニット名も表示されません。ただし、敵ターン終了時に抑圧過剰で退却したユニットや煙幕をたいたユニット名は表示されます。
OOBの変更
史実を正確に再現することに重点を置き、ほぼ全ての国籍・ユニット・兵器で細かい修正が無数に行われています。全てを把握することはできませんが、主要な変更点は次の通りです。
- 国籍別コストバランスを重視
- 主要国の基準経験値が5ポイントUP
- 全国の基準士気値が15ポイントUP
- 乗員・砲手(Crew)は煙幕を炊けない
- "misc. small arms"(雑多な小火器)の威力低下
- 手榴弾携行数を減らし、威力増加
- Sniper(狙撃兵)の射撃精度が大幅向上、近接強襲成功率は大幅低下
- 対戦車砲および戦車砲のROF値が1上昇。
- 携行型対戦車ロケット砲の対ソフトスキン使用可
- 対戦車歩兵の射撃精度低下
- 間接射撃可能な砲兵のROF値UP(盤内砲はさらに倍)
- 盤内砲の射撃精度Down(迫撃砲を除く)
- 砲撃遅延時間UP
国籍別の特徴を鮮明にするため、基準経験・士気・指揮官能力は大幅に変更されているようです。これと連動してユニットコストにも国籍別に大きな変更が加えられ、例えばソ連軍は基準経験値が低いので、より安く大量のユニットが買えるようになっています。
ユニットや兵器に関する大きな変更点はほとんどが歩兵と砲兵のもので、歩兵に関しては、より見つかりにくく対戦車戦闘に強くなっています。その一方、機関銃や狙撃兵はより凶悪になっており、歩兵同士の戦闘はますます技術が必要になりそうです。
砲兵に関しては、さらに扱いにくくなったという印象です。具体的には、遅延時間が長くなったことで盤内砲でも「発見とともに要請→敵移動前に着弾」というパターンが難しくなりました。また、"ROF"(Rate Of Fire;射撃率)値が上昇したことで、1回あたりの砲撃威力は増していますが、すぐに弾が無くなるようになっています。ROF値の上昇は盤内砲でより顕著なので、盤内砲を使用する場合には何らかの補給手段が必要になると思われます。
また、H2HではSPWAWにはないクラスやユニットが追加されています。以下のものは全ての国籍で使用できます。
MMG(中機関銃)クラス
MMGクラスの機関銃ユニットは、移動後の射撃が可能です。
Dive Bombers(急降下爆撃機)クラス
ユニット名の後ろに"*"マークがついている航空機は、急降下爆撃機クラス扱いになります。通常の戦闘爆撃機よりも射撃精度が大幅に向上しています。
Field Command Posts(野戦指揮所)
固定ユニットで、司令部(HQ)ユニットと同様に、5Hex以内にいる友軍ユニットの抑圧除去と回復支援機能を持ちます。最前線の塹壕に潜む歩兵や砲兵の周辺に設置することで、敵の砲火による抑圧を速やかに回復させることができます。
Personnel Shelter(簡易シェルター)
分隊規模の歩兵や軽砲クラス(重量1xx)の砲を内部に遮蔽できる掩蔽壕(Bunker)です。前面以外の装甲厚が255と最強の固定ユニットで、激しい砲撃から内部のユニットを守ることが出来ますが、ただの壕なので兵器は一切装備していません。車輌と同様に"L"キーで乗降できますが、内部にいるユニットは車輌搭乗扱いになるので射撃するには「外に出る」必要があります。
Ammo Boxes(弾薬箱)
Wild Bill Wilder氏の一部シナリオで登場する"Ammo Canisters"(弾薬缶)と同じように働きます。移動できない固定ユニットで、補給速度は弾薬補給トラックと同じ、ただし値段は弾薬トラックよりも安いのが特徴です。
ドイツ軍OOBは、H2Hの作者 Panzer Leo氏が過去に作成した自家製の "custom German OOB" が元になっています。細部まで非常に凝った作りになっているのは当然ですが、一見して驚くのはドイツ軍ユニットが全てドイツ語表記になっていることです。これには海外でもわかりにくいと批判があるようですが、慣れてしまえば雰囲気を楽しめるというのが作者の主張です。
ユニットクラスや説明テキストは英語のままなので、全くわからなくてお手上げということにはなりませんが、以下に頻出単語の簡単な独−英−日対訳を載せておきます。
編成・一般用語
(独略) | (独) | (英) | (日) | 備考 |
---|---|---|---|---|
Kp | Kompanie | company | 中隊 | - |
Zug | Zug | platoon | 小隊 | - |
Grp | Gruppe | squad | 分隊 | - |
HZg | HalbZug | section | 班 | 半個小隊の意。車輌・砲の編成で使用 |
Trp | Trupp | section | 班 | 分隊の一部の意。歩兵編成で使用。「〜隊」とも訳す |
(l) | leicht | light | 軽 | 「軽〜」と訳す |
(m) | mittelschwer | medium | 中 | 「中〜」と訳す |
(s) | schwer | heavy | 重 | 「重〜」と訳す |
装甲ユニット関連用語
(独略) | (独) | (英) | (日) | 備考 |
---|---|---|---|---|
PSW | Panzerspaehwagen | armored car | 装甲車 | 厳密には「装甲偵察車」 |
SPW | Schuetzenpanzerwagen | armored personell carrier | 装甲兵員輸送車 | 厳密には「歩兵装甲車」。いわゆるAPC |
Aufkl. | Aufklaerer | recon unit | 偵察用車輌 | 「偵察〜」 |
- | SpaehPanzer | recon tank | 偵察戦車 | − |
StuG | Sturmgeschuetz | assault gun | 突撃砲 | − |
JPz | Jagdpanzer | tank destroyer | 駆逐戦車 | − |
- | Sturmpanzer | assault tank | 突撃戦車 | − |
歩兵ユニット関連用語
(独略) | (独) | (英) | (日) | 備考 |
---|---|---|---|---|
Inf | Infanterie | infantry | 歩兵 | − |
Pio | Pionier | engineer | 工兵 | − |
- | Schuetzen | infantry men | ライフル兵 | 「狙撃兵」とも訳すが、H2Hではただの大戦前期の歩兵名称 |
Gren | Grenadiere | infantry men | ライフル兵 | 「擲弾兵」とも訳す。上記"Schuetzen"の大戦後期呼称 |
- | Scharfschuetzen | sniper | 狙撃兵 | これぞ文字通りの狙撃兵。SPWAWでいう"sniper"に相当。 |
- | Spaeher | Scout infantry | 偵察兵 | − |
- | Skijaeger | ski infantry | スキー兵 | 「スキー猟兵」とも訳す |
FJ | Fallschirmjaeger | Airborne infantry | 空挺兵 | 「降下猟兵」とも訳す |
Gebirgsjg | Gebirgsjaeger | mountain troops | 山岳兵 | 「山岳猟兵」とも訳す。H2Hでは「特殊部隊」扱い |
- | Fuesilier | - | 狙撃兵 | 名誉称号的なニュアンスで、実態は「特殊部隊」扱いのエリート歩兵 |
PzJaeger | Panzerjaeger | AT Infantry | 対戦車兵 | 「装甲猟兵」とも訳す |
Pz Vern Trp | Panzer Vernichtungs Trupp | AT Infantry | 対戦車兵 | 「装甲撃滅隊」とも訳す。少年兵にPFを持たせた大戦末期の悪名高い部隊 |
- | Rad | Bicycle Infantry | 自転車兵 | − |
VG | VolksGrenadiere | - | 国民擲弾兵 | 大戦末期の徴集兵 |
VS | VolksSturm | - | 国民突撃兵 | 大戦末期の徴集兵 |
砲兵ユニット関連用語
(独略) | (独) | (英) | (日) | 備考 |
---|---|---|---|---|
Art | Artillerie | Artillery | 砲兵 | − |
Gesch | Geschuetz | Gun | 砲 | − |
Mrs | Moerser | Mortar | 迫撃砲 | "GrW" も同義 |
- | Raketen | Rocket | ロケット砲 | − |
- | Vorg Beobachter | Forward Observer | 前進観測員 | いわゆるFOに相当 |
Art Beob Fhrzg | Artillerie Beobachtungs Fahrzeug | - | 砲兵用観測車輌 | いわゆるFO車輌に相当 |
その他ユニット関連用語
(独略) | (独) | (英) | (日) | 備考 |
---|---|---|---|---|
- | Befestigung | Fortification | 要塞 | − |
GefStand | Gefechtsstaende | Command posts | 指揮所 | − |
- | Gleiter | Glider | グライダー | − |
Mun | Munition | Ammunition | 弾薬 | − |
- | Nutzfahrzeug | Utility vehicle | 多目的車輌 | − |
LKW | Lastkraftwagen | truck | トラック | − |
- | Schlepper | Prime mover | 牽引車 | − |