Command Control 02

Last updated on May. 12, 2007

本稿では、"Command Control"ルールをオンにしてシナリオをプレイする際の注意事項を解説します。分かりやすく解説するために専用シナリオを用意しました。このシナリオに沿って説明していきます。

準備

Preferences
  1. 専用シナリオをダウンロードしてください
  2. DLしたZIPファイルを任意の場所に解凍してください。
  3. 解凍した中身(scen205.cmt・scen205.dat)をSPWAWをインストールしたディレクトリの「Scen」フォルダにコピーor移動します。
  4. SPWAWを起動して"Preferences"画面を開き、右図のように"Command Control"設定他をオンにします。
  5. 205番目のシナリオ"Command Control Ensyu 01"をロードしてください。

ブリーフィング

Nor大佐である。本稿の目的は、指揮統制ルールをオンにしてあらゆるシナリオを戦い抜ける指揮官を養成することにある。すでに諸君は「理論編」を熟読して理解しているものとして説明を進める。実は読んでいない、または理解していないという者は直ちに「理論編」に戻り、鋭意学習に努めること。

・・・では、実践編を開始する。

戦況概要

シナリオ情報

シナリオをロードして最初にすることは、シナリオ情報ウィンドウにカーソルを合わせ、情報を収集することである。右図のような情報が入手できるはずだ。

状況を説明する。戦闘日時は1939年6月24日1300時。場所は中国北東部某所。天候は曇天。有効視界は15。総ターン数12なのでおよそ一時間の戦闘が予想される。今回の任務は進撃(Advance)だ。


マップ情報

次にマップを見てもらいたい。敵は蒋介石率いる国民党軍だ。

情報によると、東の高台には歩兵砲陣地が設置されている。おそらく赤丸で囲んだ地点に敵部隊は潜んでいると思われる。詳しい戦力は不明だが、歩兵と機関銃を中心とする守備隊が配置されているようだ。敵兵は軍閥上がりなので練度・士気とも低い。しかしドイツ製の兵器を装備しているとの情報がある。

対する我が方の主戦力は、関東軍の精鋭歩兵一個中隊。すでに高台の西側に迫っている。70粍迫撃砲一門と観測班も同行している。さらに増援として、騎兵一個小隊が北方から急行している。

目標となるVHは全部で7個だ。うち一つはすでに占領済みである。残り6個はほぼ5ヶ所に散在している。諸君の目的は、敵陣を一掃して全VHを確保することである。

編成状況

戦力編成

次に確認するのは戦力編成である。指揮統制ルールのもとでは、指揮系統を把握しておくことが重要である。右図の司令部アイコンをクリックするか"H"キーを押して、編成表を開くのだ。編成表をみれば自軍戦力が一目で分かるようになっている。さらに部隊ごとの細かい情報を入手することもできる。


編成画面

編成画面の説明に移る。画面左には現在アクティブな部隊の詳細情報が表示される。上図で言えば、編隊A(Formation A)の指揮官はNor大佐(Col Nor)であり、命令ポイントや各種能力まで表示されている。

画面中央には編隊ごとの操作を簡単に行えるアイコンが並び、各編隊の指揮官名も表示されている。ここを見れば我が戦力は編隊A〜Iで構成されていることがわかる。

画面右には各編隊に所属するユニットの一覧が表示されている。これらの情報を頭に叩き込んで欲しい。

指揮系統確認

総司令部

では具体的に指揮系統がどうなっているのかを説明する。

総司令部は、Nor大佐(Col Nor)が率いるAOユニットである。全ての部隊はこの総司令部の指揮下に入る。例外はない。小官の本戦闘での職分は大隊長であり、A0ユニットは「大隊司令部」となる。わざわざ「Daitai HQ」と明記してあるので間違えることはないだろう。

理論編で説明した通り、A0ユニットには偵察能力が与えられるので、指揮統制ルールによる移動制限を受けないことは了解済みだろう。


中隊長

大隊長の次にエライのは中隊長である。本戦闘では老兵少佐(Major Rohei)が中隊長であり、指揮するB0ユニットが「中隊司令部」に相当する。ただの歩兵部隊だが、中隊長権限により偵察能力を持っている。

同時にこのユニットは「歩兵中隊長」なので、これから説明する第一〜第三歩兵小隊および中隊付機関銃班が指揮下に入る。例外は、増援で登場する騎兵小隊と迫撃砲およびFOだけである。


C小隊

次に編成表に並ぶのはC小隊である。つまり「B歩兵中隊」に含まれる「第一歩兵小隊」に相当する。

C小隊は、C0・C1・C2・C3・C4という5つのユニットで構成されている。このうち、C0ユニットは第一歩兵小隊長であるJunkers中尉(1Lt Junkers)が指揮する「第一小隊司令部」に相当する。C1〜C3ユニットは全て歩兵分隊であり、第一分隊〜第三分隊に相当する。C4ユニットは擲弾筒分隊である。

次にD小隊とE小隊だが、これはC小隊と同じ扱いになる。両小隊とも「B歩兵中隊」に属し、D小隊は「第二歩兵小隊」、E小隊は「第三歩兵小隊」に相当する。それぞれSufiy少尉(2Lt Sufiy)とメロンマン少尉(2Lt Melon-man)が小隊長を務める。


重機関銃班

次に編隊Fである。F0・F1という二つのユニットから構成される重機関銃班は、これまで見てきた歩兵部隊のような小隊編成をとっていないが、「B歩兵中隊」に所属する中隊支援機関銃班である。班長はZwerg軍曹(Sgt Zwerg)である。


次は増援として登場する編隊Gの騎兵小隊だが、マップには表示されないが編成表には載っている。

G騎兵小隊はG0〜G4の5ユニットで構成され、G0はサト大尉(Cpt Sato)が指揮する「騎兵小隊司令部」である。G1〜G3は騎兵分隊、G4は小隊支援火器である軽機関銃分隊となる。これら全てのユニットは偵察能力を持っている。なぜなら偵察任務に当たるのが騎兵の本分だからだ。

重要なのは、このG騎兵小隊の上級指揮官はA0のNor大佐だけだということだ。階級から言えばB0の老兵少佐も上官にあたるが、G騎兵小隊はB歩兵中隊には隷属していない。したがってサト大尉が命令ポイントを貰えるのは総指揮官であるNor大佐だけなのだ。

前方観測班

編隊Hは前方観測班(FO)である。指揮官はえが佐久軍曹(Sgt Egasaku)。FOもその独立性から偵察能力を付与されており、指揮統制ルール下で移動制限を受けない。騎兵小隊と同じく、直属上官は総司令部のNor大佐だけだ。

騎兵小隊と違って注意すべき事は、FOは砲撃要請を担当するので命令ポイント不足に陥りやすいということだ。命令が貰えるのはA0だけなので、A0の3HEX以内に入れておくことが重要になる。

もちろんFOは無線を装備しているので、理屈からいえばA0からいくら離れていても命令の授受は可能だが、我が軍の無線機は不調になることが多いのだ・・。したがって物理的な連絡を保てる3HEX以内にいることが望ましい。


70粍迫撃砲

最後の編隊Iは70粍迫撃砲である。今回は砲兵科が渋ったので1門しかいない。指揮官はライコウ軍曹(Sgt Raikou)である。

直属上官はやはりNor大佐だけだ。砲兵ユニットはほぼ間違いなく無線機を装備している。しかし前述の理由により、砲撃要請を担当するFOとは物理的連絡を取れる距離にいた方が望ましい。

FOは命令をもらうためA0の近くにいた方がよいことを考慮すると、A0・FO・砲兵は常に3HEX以内にいれておくのが最も安心できる配置と言えるだろう。


説明が煩雑になるのを避けるため、今回は各ユニットの無線装備状況や各指揮官の保持する命令ポイント数には言及しなかったが、この点も確認しておいて欲しい。

作戦会議

では作戦会議に入る。理論編で解説したように、指揮統制ルールのもとではまず綿密な作戦を練る必要がある。諸君の中で理論編を充分に理解してない者は「そんな面倒な・・適当に動けばなんとかなるだろ!」と考える者もいるだろう。

しかしこの点を覚えておいてもらいたい。数多いシナリオの中には、あらかじめ作者が移動目標地点を指定していないものもあるということだ。

C&Cオンでプレイすることが明記されているシナリオは、だいたいにおいて移動目標が指定されているが、時には不注意で、時には故意に見当違いの方向に移動目標を指定している場合もあるのだ。そういう場合は自分で移動目標を修正しなければならない。この時作戦が必要になるのだ。言い換えれば、移動目標地点を指示するためには作戦を立てておく必要があるということだ。

今回は訓練が目的なので、移動目標地点は全く指定していない。全部隊の移動目標は現在のところマップ左上のHex(0,0)にある。すなわち、このままでは偵察能力を持っている「大隊司令部」「中隊司令部」「FO」そして増援で登場する「G騎兵小隊」しか自由に移動できない。

移動目標設定の三原則

作戦を立てる際に考慮すべき点を説明する。ほとんどのシナリオでは、VHを確保しなければ勝利できない。当たり前のことを言うが、VHを占拠するにはVH上まで移動しなければならない。

したがって、どの部隊がどのVHを踏むのかは最低考慮しておかなければならず、移動目標地点は、目的のVHと現在位置を結ぶ延長線上に配置すべきなのだ。これが原則その一だ。ただし移動範囲にはある程度の余裕があるので、厳密に延長線上という点を意識する必要はない。

次に考慮すべき点は、敵の配置である。敵も馬鹿ではないから簡単にVHを踏ませてくれるわけはない。VH周辺では何らかの抵抗があると考えるべきだ。すなわち、敵は少なくともVHを視界に入れられる位置に配置されていると考えるのが妥当だろう。

ここで、敵の居場所が「目的のVHと現在位置を結ぶ延長線上」であれば問題はない。こちらは進軍して敵を掃討しつつVHを確保できるからだ。しかし、そうでない場合はどうか。敵がこちらの移動目標線上にいなければ、遠距離での交戦を強いられてしまう。遠距離交戦は、充分に準備を整えた防御側が有利になることが多く、攻撃側はそれ以上接近できなければ圧倒的に不利なのだ。

この点を考えると次の結論に辿り着く。場合によっては、敵の掃討を任務とする部隊とVHを確保する部隊とに分ける必要があるということだ。これが原則その二だ。

最後の原則は、第二の原則と矛盾するが効率を重視することだ。一番簡単なのはマップ縦列を埋め尽くすくらいの戦力がある時で、この場合は全部隊がまっすぐ並行移動するだけで敵を一掃でき、VHも手に入れられるだろう。移動目標は進行方向のマップ端に設定するだけだ。

しかし実際にはそんな大戦力がある時は少ない。限られたユニット数で広大なマップをくまなく移動するには、効率的な移動目標の設定が必要だ。二ヶ所のVHの距離が近ければ、その中間地点の延長線上に移動目標を指定するのが良いだろう。そうすれば移動目標を途中で変更することなく、二ヶ所ともVHが押さえられるからだ。つまり、移動目標はなるべく途中で変更しなくて済むように指定すべきなのだ。

ではこれらの点を考慮して、諸君に作戦をたててもらおう。

作戦例

ここからは具体的な操作の説明以外は、あくまで一例であると考えてもらいたい。

作戦例

では本司令部の立てた作戦を披露しよう。図の通りだ。

3個の歩兵小隊はそれぞれマップ東端の"Plt #1"〜"Plt #3"に移動目標を指定して進撃。第一小隊は"VH #5"、第二小隊は"VH #1"および"VH #3"、第三小隊は"VH #2"および"VH #4"の攻略を担当する。

中隊機関銃班も"Plt #1"を目標にするが、中央付近までの前進に止める。「B0中隊司令部」は機関銃班とともに攻撃に参加するが、命令ポイントが勿体ないし必要もないので移動目標は指定しない。

体勢をDefendにしておくのは迫撃砲のみ。A0およびFOは進撃体勢のまま現在地に留まって砲撃支援に専念する。

もちろんこの作戦は必ずしも「正解」ではない。指揮官の数だけ作戦は考えられるはずだ。諸君は独自に作戦を練り、体勢と移動目標地点を指定してみて欲しい。その前に各種操作の仕方を説明しておく。

体勢と移動目標地点の指定方法

体勢の変更方法

再び編成表画面を開いて欲しい。体勢の変更はユニットを右クリックして開くユニット情報画面でも行えるが、編隊単位で変更するなら編成表画面で行うのが一番簡単だ。ただし1ユニットのみ変更したいという場合はユニット情報画面から行う必要がある。

右図の通り、中央のアイコンの中に円形矢印のマークがある。これが体勢変更ボタンだ。このシナリオでは任務(Mission)が進撃なので、デフォルトでは全編隊が進撃(Advance)体勢になっている。防御体勢に変更したい編隊(この場合は編隊I)の欄のこのボタンを押せば、体勢がDefendに切り替わる。作戦に応じて、編隊ごとに体勢を変更していくのだ。


移動目標地点の指定方法01

次に移動目標地点の指定方法だ。例として「C歩兵第一小隊」を指定しよう。C小隊に属するユニット(C0〜C4)をクリックしてアクティブにしておき、ツールバーから右図の赤旗アイコンをクリックする。ショートカットは";"(セミコロン)キーが対応している。


移動目標地点の指定方法02

これで移動目標指定画面に切り替わる。画面右端からツールバーが消えたのがわかるだろう。この画面で移動目標にしたいHEXをクリックするだけだ。右図のような閉じるボタンを押さない限り、何回でもクリックしてやり直してよい。指定し終わったら閉じるボタンを押して終了する。


命令ポイント

賢明な指揮官なら、移動目標を指定する前に「C0小隊司令部」の命令ポイントがいくつあったか記憶しているはずだ。命令ポイントは画面下部の情報ウィンドウで右図のように表示されている。

(C:4)という表示は、「このユニットはC0ユニットの命令ポイント4を利用できる状態にある」ということを意味している。ただし、最初に持っている命令ポイントはランダムなので、1〜2ポイントの違いがあるかもしれない。今回は4ポイントだったということで話を進める。

移動目標を指定し終わると、この項目が(C:1)に変わったはずだ。編隊の移動目標を指定(変更)したことにより、3ポイントの命令を消費したのだ。


こうして、編隊D・E・Fにも移動目標地点を指定していく。もちろん、必要があれば他の編隊の移動目標も指定してよい。全ての移動目標を指定し終わったら、ようやく戦闘開始だ。

戦闘開始!

ここからは全く自由に戦闘を開始してよろしい。諸君の立てた作戦が成功だったか失敗だったか、徐々に判明していくはずだ。しかしそれでは心許ないという弱気な指揮官のために、指揮統制ルールの解説を兼ねてもう少しだけ様子をみよう。

砲撃要請

まず最初に、歩兵小隊の前進を援護するために砲撃支援を要請することにしよう。実は、指揮統制ルールの有無が最も影響するのは、この砲撃要請なのだ。

その前にFOユニットをクリックして、命令ポイントを確認して欲しい。(H:3)と表示されているはずだ。これは編隊H(FOのこと)の命令3ポイントを利用できるという意味だ。砲撃要請は火砲1門あたり1ポイントの命令を消費するので、FOだけではこのターンに3門の火砲しか砲撃できないことがわかる。

しかし、あらかじめFOは「A0総司令部」と物理的連絡を取れるように配置している。総司令部の命令は現在5ポイントあるので、実質8回の砲撃要請が可能なのだ。このように考えると、FOとA0を3HEX以内に配置することがいかに重要かがわかると思う。

砲撃要請

では実際に砲撃を行おう。手持ちの火砲は、歩兵小隊に属する擲弾筒分隊が3つと70粍迫撃砲の合計4ユニットだ。擲弾筒の射程は短いので狙いは限られるが、この際砲撃地点はどこでも良い。

ただし、指揮統制ルールのもとでは砲撃指定は慎重に行わなければならない。

砲撃アイコンを押した時点で命令ポイントが消費されてしまい、取り消しボタンを押してやり直そうとしても命令ポイントは元に戻らないからだ。


今回はFOも用意されており、総司令部との連絡も万全なので、砲撃要請の命令ポイントが不足する恐れはないが、常にこのような恵まれた状況があるわけではない。それに今回のような場合でも、仮にFOやA0が敵の砲撃で狙われると状態悪化を招き、一時的とはいえ利用できる命令ポイントは良くても半減、悪くすればゼロになってしまう。

このような最悪の状況を考えると、砲撃要請できる部隊が沢山いるほど有利だと言える。もちろん命令さえ出せれば、どのユニットでも砲撃要請はできるが、砲兵系でなければ遅延時間が大きくなりすぎて使い物にはならない。

今回の場合、擲弾筒は歩兵小隊に属しているので、各歩兵小隊長が砲撃要請をおこなえば遅延時間も短く命令ポイントの消費も分散できる。

同様に、迫撃砲は自らの命令を使って砲撃しても良いのだ。盤内砲なら自ら砲撃要請できるので、編隊のユニット数が少なく、ある程度熟練した高位の指揮官がいれば、毎ターン自ら砲撃できる自給自足体制をとることも可能だ。

しかし、盤外砲の場合はお手上げだ。盤外砲が大量に用意されている場合、毎ターンすべての盤外砲に砲撃要請するのは容易ではない。命令ポイントがそこまで豊富ではないことが多いからだ。

つまり、指揮統制ルール下では、砲撃要請できるかどうかは利用できる命令ポイント次第なのだ。肝心な時に命令ポイント不足に陥らないように、時には命令ポイントを貯めることも必要で、そのためには砲撃要請するユニットを常に分散させておくことが大事なのだ。

最後にもう一点だけ注意しておく。歩兵小隊に属する擲弾筒分隊は、常に小隊長の3HEX以内にいれておかないと砲撃できない。「理論編」で学んだ通り、分隊長は命令ポイントを持っていないためだ。おまけに今回登場する擲弾筒分隊はすべて無線機を持っていないので、小隊長と物理的連絡がない限り誰も砲撃要請できないのだ。

さらに当然のことだが、砲撃するターンは移動できない。しかし他の歩兵分隊は前進しなければならないだろう。小隊長は戦闘中の歩兵分隊の士気を保つために前進するか、擲弾筒に砲撃させるために停止するか、難しい選択を迫られるのだ。

行軍

理論編で説明した通り、移動の基本単位は小隊(編隊)である。常に小隊長の3HEX以内に全分隊をいれるように移動できれば完璧だ。

ずいぶん不便なように感じるかもしれないが、小隊長が中心にいれば一個小隊は最大で300m(6HEX)まで展開できる。実際はその両端50mも隣接することになるので、敵をカバーできる範囲は400mに及ぶ。このマップは縦方向が950m(19HEX)なので、三個小隊あれば充分だろう。

移動目標が適切であれば問題ないが、微妙にずれていると感じた場合は注意せよ。

必ず分隊から先に移動し、小隊長は最後に全分隊の中心に移動することを心がけるのだ。先に小隊長が移動してしまうと、連絡不能に陥る分隊が発生することがある。もちろん、無線を装備している分隊はこの限りではない。各分隊をよく調べ、無線を装備している分隊とそうでない分隊を知っておくのは小隊長の義務である。

そして移動目標地点と実際の移動可能範囲の感覚を掴んで欲しい。やってみると、移動可能範囲は意外に広いと感じるかもしれない。移動可能範囲の両端を1HEXずつ移動していけば、命令ポイントを消費することなくかなりの幅に展開することも可能だ。

一般的にマップ横列が巨大になるほど、移動目標によって「行きたい所にいけない」という状況に陥る可能性は減少する。例えば西から東に進行する場合、マップ東端中央に移動目標を指定しておけば、前進しながら少しずつ移動範囲を修正できるので、極端に言えば、東端に着く頃には一番上でも一番下でも行けるのだ。

移動範囲表示に関する注意点としては、偵察能力をもっているユニットを選択した際に、正確な移動範囲が表示されないことがある。そういう場合はもう一度そのユニットをクリックするか、"F8"キーを押せばよい。

練習を兼ねて、あえて移動範囲外に移動してみるのもよい経験だろう。一度移動範囲外に出たユニットは、そのターンの間は移動制限がなくなる。命令ポイントは消費するが、通常、歩兵小隊はそんなに頻繁に命令ポイントを使う必要はないので問題ないだろう。

さて、ここまで熱心に読んでくれた指揮官諸君は、そろそろ戦闘を進めて欲しい。この続きを読むのは、少なくとも5ターン目まで進めてからだ。果たして順調に進むことができるだろうか?案外簡単なものだと感じるかもしれない。

罠!

サプライズ01

前項では移動範囲外に移動してみろと言ってみたものの、これを真に受けて命令ポイントを無駄遣いしたら、5ターン目には裏切られたと感じるかもしれない。

5ターン目といえば、3ターン目の敵ターンに森の中から敵騎兵が出現し、何とか撃退してホッとしたところのはずだ。ところがその直後の4ターン目の敵ターンに、敵の便衣隊(ゲリラ)が"VH #0"付近に潜入するのだ!

しかし私を恨んではいけない。各シナリオに用意されている事前説明テキストには多くの罠が含まれているものだ。指揮官は真実を見抜く目を養うことも必要なのだ(笑)。

後方に敵部隊!

サプライズ02

さて、このサプライズは、指揮統制ルール下で最も困るパターンを示すために用意したものだ。

すなわち、移動目標の反対側に敵が出現した場合である。諸君はどういう戦況になっているだろうか?私の場合は右図のような展開になっている。すでに"VH #1"と"VH #2"は押さえた。敵の陣地もちらほら見えている。しかし、攻撃部隊の最後尾は中央の石垣付近にいる中隊司令部と機関銃班だ。

最初から勢いよく前進した指揮官は、すでに高台のふもとくらいまで到達しているかもしれない。敵の前線部隊を蹴散らした指揮官もいるだろう。おまけに私の言葉を信じて、移動範囲外への移動を繰り返していたら、小隊の命令ポイントは枯渇し、総司令部の命令ポイントまで減っているかもしれない。・・・嗚呼、ご愁傷様。

サプライズを見抜け!

落ち着いて状況をよく見れば、その他のVHは10〜30点なのに、"VH #0"の価値は250点もあるではないか!それにこのままでは200円の価値を持つ総司令部の命も危ない。直ちに潜入した敵ゲリラを何とかしなければならない。

しかし近くにいるのは、戦力としては当てにならない総司令部・FO・迫撃砲のみ。歩兵部隊はすでにかなり前進しており、敵の姿はみえるものの効果的な攻撃はできそうにない。反転しようにも移動目標は全く逆方向だ。さあどうする?

指揮統制ルールの目的は、プレイヤーをこういう困難な状況に陥らせることにある。そして有能な指揮官は、この窮地を楽しみつつ危機を乗り切るのだ。

実際、このようなサプライズが用意されているシナリオは少なくない。こういう危機に陥った時に、すぐにシナリオを止めてしまうようでは成長の望みはない。何らかの解決の糸口があることを信じ、あらゆる手段を試してみるのだ。

といっても、こういう時にはこうすべし!というようなセオリーは存在しない。正直に言うと、サプライズが起こってから対処するのでは遅いのだ。

最初からこの"VH #0"の価値が他のVHに比べて異常に高く設定されていることや、3ターン目に突如敵の騎兵が突撃してきたこと、前線の敵兵が何だか弱すぎること、これらの細かい手がかりから「いつか何かが起こりそうだ」と想像できるかどうかがキモなのだ。上手なシナリオ作者は、必ず何らかの手がかりを提供しているものだ。

大佐!何とかしてください!

では、具体的な対処法を検討しよう。

中隊司令部、機関銃班、第一歩兵小隊の最後尾の部隊は攻撃することは可能だろう。第二・第三小隊の擲弾筒も視線が通っていれば擲弾筒で直射するのだ。この時、自由に移動できるのは中隊司令部だけのはずだ。だから中隊司令部は、他のユニットが出来る限りの発砲でゲリラの抑圧を上げた後、一気に隣接して蹴散らす必要がある。

これでもゲリラが掃討できそうにない場合、仕方ないので3つの歩兵小隊のうち最も近い小隊を派遣する必要がある。

この場合の選択肢は二つ。移動目標を変更して小隊まるごと戻すか、移動目標は変更せず命令ポイントを消費して移動範囲外への移動をするかだ。

どちらが得かは状況によるだろう。移動目標の変更は3ポイント消費するが、掃討が終わったら再び変更しなければならないことを考えると、合計6ポイント必要だ。移動範囲外への移動は、1ユニットにつき物理通信なら1ポイント、無線通信なら2ポイントだ。少ないユニットですぐに一掃できそうならこちらの方が得だろう。

ただし命令ポイントをケチる余り、総司令部がやられるのは最も愚かな選択だ。連絡不能と命令ポイント不足が重なって対処方法がなければどうしようもないが・・。取りうる選択肢をよく考えて決断してくれ給え。

挽回!

そんなこんなの苦労を乗り越えていくと、6ターン目にようやくサト大尉の騎兵小隊が到着する。

騎兵小隊は偵察能力をもち戦力としても充分なので、ゲリラ掃討に苦労した諸君は実に「使える」部隊だと感じるかもしれない。そうなのだ。指揮統制ルール下では、偵察能力の有無がユニットの使い勝手に大きく影響する。

これは兵器や部隊の性能以上に重要になることもある。偵察能力は単に敵を見つけやすいというだけでなく、自由に移動できるという要素の方が重要なことが多いのだ。さあ、これでもう何も教えることはない。思う存分暴れてくれたまえ。

指揮統制ルール下の攻撃三原則

・・・いや、最後にもう一つだけ忠告しておこう。心配するな。今度は良い話だ。移動方法や命令ポイントに悩まされているのは諸君だけはない。敵も同じなのだ。この点をよく考えてみるのだ。指揮統制ルール下では、どういう攻撃をされるのが最もイヤなのかを。

まず考えられるのは、小隊(編隊)司令部を優先的に攻撃することだ。小隊司令部とそれに属する分隊がいれば、絶対に小隊司令部を攻撃するのだ。

そうすればその小隊長は命令を出すことができなくなる。小隊長が命令を出せなければ指揮下の分隊は効果的な戦闘ができなくなる。これは特に小隊に砲兵分隊が含まれている場合に顕著だ。

諸君の擲弾筒分隊を考えればわかるだろう。運がよければ小隊長の持つ無線を破壊することもできるかもしれない。そうすれば、敵の指揮系統を繋ぐ鎖が一つ崩壊するのだ。

さらに今回は敵に砲兵はいないが、砲兵がいる場合はまず砲兵陣地を襲うことだ。攻撃部隊は強力でなくても良い。優秀な狙撃兵が二三発狙撃するだけでも、抑圧度は急上昇するのだ。

FOや砲兵小隊長を釘付けにすれば命令ポイントは半減する。すると指揮下の砲兵分隊も含めて命令が使えなくなり、大規模な砲撃が行えなくなるのだ。

最も効果的な攻撃は、総司令部を襲うことだ。

A0ユニットは全ユニットに命令ポイントを渡せる唯一のユニットである。つまりA0ユニットを釘付けや退却・潰走状態に追い込んで命令ポイントを半減またはゼロにすれば、敵の指揮系統は半ば崩壊したといって良いのだ。本当に総司令部を壊滅できれば、勝利は決定的だろう。

そこまでうまくいくことは少ないだろうが、これらの他にも効果的な攻撃方法は多々考えられるだろう。

例えば先ほどのゲリラのように、敵の移動目標地点の反対側に回り込むのは常套手段だ。指揮統制ルール下では、あらかじめ敵の移動目標を予測して、敵がすぐには接近できない側背面から攻撃できる作戦を練っておくことが重要なのだ。わずかあれだけの戦力でも、その効果のほどは諸君の身をもって実感した通りだ。

大事なのは、自分がやられてイヤだった攻撃を覚えておくことだ。そしてきっちりお返しをしてやるのだ。さらに、そのような攻撃を防ぐ準備を常に整えておくことができれば、最高の指揮官になれるだろう。

大団円

以上述べたようなことを常に考えながら戦うと、指揮統制ルール下ではプレイ時間が倍増してしまうかもしれない。極小マップで登場ユニット数も少なく、わずか一時間(12ターン)のこのシナリオでも、かなりの時間がかかっただろう。

果たして諸君はこの訓練シナリオを楽しむことができただろうか。時間ばっかりかかって面倒臭すぎると感じた指揮官は、次回から指揮統制ルールをオフにしてプレイした方がよいかもしれない。

別に指揮統制ルールを使った方がエライというわけではないのだ。なんといってもゲームなのだから、楽しめるルールでやるのが当然だ。

しかし、この訓練シナリオで指揮統制ルールの「コク」を味わい、面白いと感じることができた指揮官が一人でもいれば、この長文を書いた甲斐もあったというものである。

本稿は単発シナリオプレイの参考になるように書いたものであるが、書ききれなかったことも多い。利用した訓練シナリオも、歩兵戦に焦点を当てているので車輌部隊が全く登場しない。

実際には、無線を装備した車輌の通信を保ちながら自在に戦闘を繰り広げる技術も指揮官には必要となる。したがって、ここで書いていることは、あくまで必要最低限の知識として習得して欲しい。

さらに、キャンペーンの場合には「部隊購入(編成)」という単発シナリオにはない要素が入るので、もう少し別のノウハウが考えられる。が、それはまた別の機会に譲ろう。

戦闘結果

最後になったが、この訓練シナリオの結末はどうなっただろうか?本シナリオはC&Cルール訓練用であり、この一点に集中できるように難易度はかなり低くしている。

したがって勝ち負けは重要ではないが、勝負にこだわる指揮官のために基準となるテストプレイの結果を公表しておく。

806:68で9ターンDV。このスコアを上回った指揮官は、すでに指揮統制ルールを理解し、抜群の戦闘技能を持っていると自負してよいだろう。

一方、運悪く敗北を喫してしまった指揮官も落ち込む必要はない。勝敗は兵家の常、塵も積もれば山となる。この結果に懲りず、指揮統制ルールを常に利用してプレイしていれば、いずれは無敵の指揮官になれるだろう。疑問があればいつでも質問して欲しい。

・・・では訓練を終了する。