戦車兵への道02

Last updated on May. 12, 2007

SPWAWの装甲戦闘システムは非常に複雑でわかりにくいものです。マニュアルや海外の掲示板である程度の情報を集めることはできますが、あやふやにされている部分も多く、中には明らかに誤解している情報も沢山あります。おそらく戦車戦に関連する要素とその関係を明確に理解している人はほとんどいないと思われます・・・と、ここまでは以下の説明が間違っている場合のエクスキューズです。

当然筆者も理解しているとは言い難いですが、本稿を書くにあたりできる限り情報収集し整理してみました。参考になれば幸いです。

攻撃方法

戦車の攻撃と言えば、主砲をバンバン撃つことだけを想像しがちですが、いろいろな攻撃方法があります。

タンク・パニック

迫り来る戦車というものは非常に恐ろしいものらしく、戦車が初登場したWW1から現代まで、戦車を見ただけで逃げ出したという兵士の話は尽きません。

SPWAWではこの点もルール化されており、基本的に全てのユニットは敵戦車が視界に入ると恐慌(Tank Panic)を起こす可能性があります。恐慌をおこしたユニットは、発砲することなく退却(Retreated)状態になり、全移動力を使って逃げ出します。

マニュアルによればパニックになるのは歩兵ユニットとされていますが、実際には歩兵だけでなく火砲や非装甲車輌、さらに重戦車に対しては装甲車や軽戦車でさえもパニックを起こします。

一般的に言えば、対戦車兵器を持たないソフトスキンユニットが最もパニックを起こしやすいようで、私の経験では、馬車やトラックなどの非武装輸送車両が最もパニックを起こしやすいという印象があります。

ただし、敵戦車が視界内にいるだけでパニックが起きることはまず無く、距離が接近するほど発生しやすくなるようです。また、3HEX以内に味方の装甲車輌や対戦車兵器が存在する場合は、パニックを起こす確率が低下します。

発生条件がはっきりしないのでこのルールを積極的に利用するのは難しいですが、1930年代の戦闘ではそこそこ役に立つかもしれません。敵に対戦車兵器がない場合は、戦車の機動力をいかして一気に距離を詰めるべきでしょう。逃がす前に撃った方が良いという意見もありますが・・・。

蹂躙攻撃

蹂躙攻撃(Overrun)は、武装を乱射しながら走り回り敵を履帯で踏みつけ押しつぶすといった装軌車輌特有の攻撃方法です。

蹂躙攻撃ができるのは、戦車などの全装軌車輌だけでなく、牽引車などの半装軌車輌でも可能である点に注意して下さい。逆に装輪車輌である軽車両やトラックなどはもちろん、重武装の装甲車でも装輪式のものは蹂躙攻撃はできません。また、蹂躙攻撃を仕掛けられる相手は、歩兵系ユニットと盤内砲ユニットに限定されます。

攻撃の前提条件は、歩兵における白兵戦(Melee)とほぼ同じで、射撃回数と移動力を残した状態で敵と同じHEXにいる必要があります。敵に与える損害の程度は、攻撃車輌のサイズ、車載機銃や主砲のHE弾の有無、さらに経験値と指揮官技能値という要素で決まります。

つまり、サイズが大きく、主砲にHE弾を擁し車載機銃も複数あり、ユニット経験値と指揮官技能値が高ければ大打撃を与えることができます。

蹂躙攻撃は"Alt+O"キーで発動し、射撃回数と移動力の続く限り同一ターンで何回でも発動可能です。また、同一HEXに敵ユニットが複数いる場合は、一回の蹂躙攻撃で全ての敵を対象にします。つまり、弱体化した複数の敵を1HEXに追い込んで蹂躙攻撃をかければ、一発で敵を全滅させることも可能です。

とはいえ、優勢な敵に対して蹂躙攻撃をかけるのは至難の業です。同一HEXにスタックするまでに臨機射撃を浴びる危険があり、蹂躙攻撃の発動に失敗すれば反撃を食らう可能性もあるからです。

一般に、臨機射撃できる状態(Ready,Pinned)の歩兵に対して蹂躙攻撃をかけるのは危険とされています。ほとんどの歩兵は戦車に対抗できる兵器(例.手榴弾)を持っているので、できるだけ退却・潰走状態まで追い込んでから蹂躙してやりましょう。

盤内砲の反撃は歩兵以上に脅威です。対戦車砲や野砲はもちろん、小口径の迫撃砲でさえ直射されれば戦車といえども無傷ではいられません。また、砲ユニットは蹂躙攻撃を受けると自爆する可能性があり、そうなると攻撃車輌は移動不能(Immobilized)になってしまいます。

したがって盤内砲に対して安全に蹂躙攻撃するには、歩兵と同様に退却・潰走状態まで追い込むか、砲手(Crew)が離脱するまで待ちましょう。大半の砲手はピストル程度の兵器しか持っていないか非武装なので、ハーフトラックでも充分蹂躙できます。

車載機銃

装甲車輌が装備する機関銃は次の4種類に分類されます。

TMG
(Turret Machine-Gun)
初期の戦車や軽戦車の中には、砲を持たず機関銃を主武装とするものがあります。このような砲の代わりに砲塔に取り付けられた機関銃を砲塔機銃と言います。全周攻撃できるのが特徴で、常に第一兵器になります。
BMG
(Bow Machine-Gun)
球形機銃架。いわゆるボールマウント式の機銃。半球形の防盾とともに車体前面に固定された機銃です。車体前方にしか射撃できません。常に第四兵器になります。
CMG
(Co-axial Machine-Gun)
同軸機銃。何と同じ軸かと言えば主砲。主砲の隣に主砲と同じ向きで取り付けられているので、砲塔の向いている方向にしか射撃できません。通常は第二兵器になります。
AAMG
(Anti-Aircraft Machine-Gun)
対空機銃。主兵器として使われることもありますが、通常は砲塔上部に取り付けられ全周旋回する機関銃です。

SPWAWに登場する戦車は、主砲を除いて最大で3つの機関銃を装備していますが、主砲を射撃した際にこれらの(第二兵器以下の)機関銃も全て発砲するとは限りません。この理由は二つあります。

一つは、戦車に搭載されている機関銃は肉薄攻撃してくる敵歩兵を倒す近距離用兵器なので、遠くにいる敵に対して発砲することは少なかったことを表すため、もう一つは、狭い車内で主砲を撃ちながら同軸機銃や車体機銃を同時に操作するのは難しいことを表すためです。

このため、射距離が6HEX(300m)を超える場合は乗員が経験値チェックを受け、失敗すると車載機銃は発砲できません。結果的に主砲と全機銃を発砲する場合もあれば、主砲しか発砲しない場合もあります。ただし、主砲が壊れている場合や使用不能にしている場合は、常に全機銃を発砲します。

また、対空機銃(AAMG)は"Ready"状態でしか使用できません。抑圧を受けて"Buttoned"になった車輌は、砲塔ハッチを閉めてしまうと想定されるためです。

些細なことのようですが、このルールは覚えておいて損はありません。主砲の射撃回数は最も少ないので、主砲口径が小さく車載機銃が多い戦車が7HEX以上でソフトスキンと戦う場合、主砲だけを何回か撃つよりは、いっそ主砲使用をオフにして機銃を撃ちまくった方が効果的かもしれません。

直接射撃

SPWAWでは、"Z"キーを使えば第一兵器(戦車の場合は主砲)で見える範囲を直接射撃することができます。

通常の射撃は敵ユニットに対する射撃であるのに対し、「Z射撃」は地形に対する射撃だと考えて下さい。「Z射撃」は直接射撃(Direct Fire)と訳されますが、機能としては火砲の間接射撃に近い効果を持つようです。

口径105mm以上あるいは弾頭サイズ値が5以上の主砲ならば、建物などを倒壊させることができる上、着弾地点の隣接HEXにも何らかの損害を与えます。つまり、敵がそこにいることは分かっているけど見えない場合や、怪しい建物を倒壊させたい場合、射線が通らない地点に隠れている敵に抑圧を与えたい場合などに役立ちます。

「Z射撃」は第一兵器(主砲)のHE弾を使用するので、対ソフトスキンには有効ですが、装甲車輌にはほとんど損害を与えません。また小口径砲で「Z射撃」してもほとんど効果はなく、HE弾のない主砲では「Z射撃」自体できません

与える損害の程度は主砲の"Kill"値で決まります。つまり、"Warhead"値が5以上で"Kill"値が大きければ、着弾地点を含め周囲6HEXにいる敵を死傷させたり抑圧を与える可能性があります。

とは言え、敵に直接損害を与えたいなら普通に射撃した方が効率が良いので、見える敵に対してわざわざZ射撃する必要はありません。ただし、敵が密集している場合や建物に塹壕化している場合は、Z射撃の方が効果的かもしれません。大口径砲を持つ戦車なら広い範囲に抑圧を与えたり、建物を倒壊させて大ダメージを与えることができるからです。

あるいは建物が密集する市街地などでは、Z射撃−歩兵突入−寄せて寄せて−蹂躙攻撃というのも黄金パターンです。

装甲貫通システム

上述のように戦車の攻撃方法はいろいろありますが、これらはほとんどソフトスキンを対象にした攻撃法です。戦車の最大の敵である敵戦車を確実に破壊するには、やはり主砲の砲弾で敵の装甲を撃ち抜くしかありません。

装甲を貫通できるかどうかには様々な要素が影響しますが、基本的には砲弾の威力が装甲の強度を上回るかどうかを判定しているだけです。ただし、貫通イコール破壊ではないことを覚えておいて下さい。損害(Damage)判定は、貫通力判定とは別に行われ、貫通しても損害が発生しないことや、貫通しなくても損害が発生することがあります。

装甲貫通力表

ユニットデータ画面では右図のような装甲貫通力表(Penetration Table)が表示されます。ここではティーガー後期型を例に説明します。

ティーガー後期の貫通力表

一番上の欄に書かれている"1"〜"50"までの数値は射距離をHEX数で表しています。左欄には兵器スロット1に装備されている主砲名称と弾種が並んでいます。

弾種には4種類ありますが、その主砲で使用できるものは全て表示され、実際にその弾種を持っているかどうかは考慮されません。

貫通力表では、各射距離での装甲貫通力をmm単位で表しています。ただし、この貫通力は地面に垂直な装甲板(傾斜0度)に砲弾が直角に命中した場合(入射角90度)の値だという点に注意が必要です。実際には、敵戦車の装甲傾斜や入射角なども考慮して貫通力が算出されるので、この値以下になることが多いと考えた方が良いでしょう。

また、HEX単位で表示される射距離は、その数値以下の射距離での最大貫通力を表しています。例えばティーガーのAP弾の貫通力は、1HEXでは最大162mm、2〜10HEXなら最大151mm、11〜20HEXなら最大138mmの装甲を貫通できる可能性があるということです。

貫通力表をみると、弾種によって貫通力が異なることに気づきます。さらに、HE弾とHEAT弾は射距離に関わらず貫通力は一定ですが、AP弾とAPCR弾は射距離が長いほど貫通力は低下しています。また、APCR弾は他の弾種に比べて射程距離自体が短いことに注意しましょう。

弾種

第二次大戦で使用された砲弾の種類は多数ありますが、SPWAWでは以下の4種類にまとめられています。ここで各弾種について簡単に説明しておきます。

HE
(High Explosive)
「榴弾」と呼ばれ、主に砲弾の破片と爆風によって敵を殺傷することを狙ったもので、装甲を持たないソフトスキン(歩兵や非装甲車輌)に対して効果的です。基本的に炸薬が爆発することで損害を発生させるので、射距離による影響を受けにくい弾種です。
SPWAWではHE弾には10%の確率で不発弾になる可能性があり、この場合の装甲貫通力は50%〜100%の範囲で変動します。一般にHE弾の装甲貫通力は低いですが、大口径弾が直撃すると貫通しなくても様々な損傷が発生します。
AP
(Armor Piercing)
「徹甲弾」と呼ばれ、運動エネルギーによって装甲を貫通することを狙う砲弾です。装甲貫通後に榴弾のように作用するAPHE(徹甲榴弾)も含まれます。
主目標はハードスキン(装甲車輌やトーチカ)です。AP弾は高初速で撃ち出した方が運動エネルギーは大きくなるので、長砲身の砲ほど貫通力は向上します。同じ理屈で砲弾が長距離を飛ぶほど運動エネルギーは低下するので、貫通力も低下します。
APCR
(Armor Piercing Composite Rigid),
HVAP
(Hyper Velocity Armor Piercing)
「硬芯徹甲弾」や「高速徹甲弾」と呼ばれ、弾芯に比重が重く硬いタングステンなどを使いAP弾の貫通力を高めるべく改良されたものです。タングステンは貴重な金属で、物資不足に悩んだドイツでは44年末にはAPCR弾の生産ができなかったようです。
装甲貫通力はAP弾に勝っていますが、空気抵抗がAP弾より大きいので射程距離が短く、射距離が伸びるほど貫通力の低下幅もAP弾より大きくなるのが特徴です。SABOT(装弾筒をつけた砲弾)もAPCRの一種として扱われ、APCR弾より射程が長い反面、射距離の影響をより多く受けるのが特徴です。
HEAT
(High Explosive Anti Tank)
「対戦車榴弾」と呼ばれ、メタルジェットで装甲を溶かし高温・高圧で戦車内部に損害を与えるという何やら恐ろしげなものです。もともと対ハードスキン用の砲弾ですが、ソフトスキンに対しても使用できます。
HE弾と同じく射距離に関わらず貫通力は一定ですが、10%の確率でメタルジェットの噴出が歪む可能性があり、この場合の貫通力は通常の10%に低下します。また、スカート(後述)を装備した車輌に対してはHEAT弾の効果が無くなります。

これら4種類の砲弾には、それぞれ異なる装甲貫通モデルが使用されます。つまり、HE弾には基本装甲厚(カタログ装甲厚)、HEAT弾には幾何学的装甲厚(実質装甲厚)、APやAPCR弾ではT/D比に基づく弾道学的装甲厚(後述)を使用して貫通判定が行われます。ま、この辺の意味がわからなくてもゲームはできます。私もわかってませんから。

SPWAWではどの弾種を使用するかをプレイヤーが選択することはできません。どの弾種を使用するかは、AIが勝手に判断してくれます。基本的に、対ソフトスキンにはHE弾、対ハードスキンにはAP弾・APCR弾・HEAT弾が使用されます。

問題は貴重なAPCR弾とHEAT弾が選択される基準ですが、これはイマイチ不明です。戦車を相手にする場合、一般的にはこれら特殊な対戦車砲弾は一番最初に使用され、弾切れになるとAP弾を使用することが多いようです。が、対戦車砲や一部の戦車は、標的によってAPCR弾をセーブすることもあるようです(弱い相手にはAPCR弾を使用しない)。

HE弾はハードスキンに対しても使用できますが、AP(APCR)弾をソフトスキンに対して撃つことはできません。つまり、AP(APCR)弾しか持ってない戦車が対戦車砲や歩兵を攻撃する場合は、車載機銃に頼るしかなくなります。

また、HEAT弾しか持っていない戦車がソフトスキンを攻撃する場合、通常射撃では機銃のみの射撃になりますが、兵器選択射撃(Cキー)で主砲を選べばソフトスキンに対してもHEAT弾を使用できます

T/D比

貫通力表は「地面に垂直な装甲板(傾斜0度)に砲弾が直角に命中した場合の値」を示していると書きました。しかし実はもう一つ前提があります。それは「T/D比が1未満」という条件です。

T/D比(T/D Ratio)とは、装甲厚(Thickness of armor)で砲弾直径(Diameter of shell)を割り算した値です。つまり「T/D比が1未満」というのは、装甲厚より砲弾直径の方が大きい場合を指します。そしてT/D比が1未満の場合かどうかで貫通力モデルが異なるのです。

T/D比はAP弾やAPCR弾などの運動エネルギー弾の貫通力に影響します。運動エネルギーは、中学校で習ったように「質量と速度の二乗に比例」します。つまり砲弾の貫通力を高めるには、重い弾を速いスピードでぶつければよいわけで、第二次大戦中の戦車砲が大口径化の一途をたどったのはこのためです。

理論通りにいけば、他の条件が一定の場合、砲弾の初速が速いほど貫通力は増加していくはずですが、第二次大戦期の戦車戦ではT/D比という第三の要因が貫通力に大きく影響したようです。

装甲厚よりも砲弾直径が大きい(T/D比が1未満)場合、傾斜装甲が持つ防御力は砲弾直径に比例して低下し、砲弾直径が大きいものほど貫通力は高くなります。簡単に言うと、75mm砲弾よりも88mm砲弾の方が、T-34の傾斜装甲を無効化できたそうです。

・・・と偉そうに書きましたが、私にはその理屈がよく分かりません。さらに詳しく知りたい方は、このへんなどを参考にしてください。

細かい理屈はともかく、大口径弾を薄い装甲に撃ち込んだ場合はイロイロと有利になると覚えておきましょう。逆に装甲厚より砲弾直径が小さい場合(T/D比が1以上)はイロイロと不利になります。

例えば、小口径弾が浅い角度で命中すると跳弾になる確率が高いのに対し、大口径弾ならば跳弾発生率は非常に低くなります。

装甲の質

良質な装甲を作れるかどうかはその国の冶金技術が影響します。単純に言えば、同じ厚さの装甲でも強度が均一でなかったり不純物が混じっていたり中にスがたっているような鋼鈑は弱くなります。

大戦前から鉄鋼業が盛んな独米は高い技術を誇り、大戦後期のドイツは物資不足に悩みますが、主力戦車には良質な装甲を多用しました。また、大国ソ連は大戦中に猛烈な勢いで鋳造技術を高めますが、質より量を優先する傾向がありました。残念ながら我が日本は、質も量も他国の水準に及びませんでした・・・。

装甲の種類と強度係数
説明説明強度係数
4xHigh quality or face hardened armour高品質or表面硬化装甲0.9〜1.3
5xHigh hardness OR low quality/flawed armour均質圧延装甲(優)0.8〜1.15
6xHigh hardness AND low quality/flawed armour均質圧延装甲(劣)0.7〜1.05
7xCast armour鋳造装甲0.6〜0.95

SPWAWでは装甲の質は4種類に分類され、それぞれ異なる強度係数を持っています。

この装甲の質は、二桁で表される装甲スカート値の先頭桁で表示されます。

二番目と三番目はどう訳せばよいのかわかりませんが、均質圧延装甲の一種として"high hardness armor"というものがあるようです。また、"flaw"は「瑕疵」くらいの意味で、製造時の欠陥を示していると思われます。

簡単に説明すると、表面硬化装甲はドイツ軍戦車の前面装甲(の一部)などに使われた硬い装甲で、跳弾を発生させやすいという特徴を持っています。しかし大口径弾に対しては割れやすいという欠点もあり、その点では均質圧延装甲の方が優れていました。

均質圧延装甲が二種類(実際は"4x"の高品質装甲も均質圧延装甲とみなされるので三種類)あるのは、当時の技術では高品質なものを作るのは難しいという点を反映しているのだと思われます。

鋳造装甲はソ連が得意とした鋳型に鉄を流して作る方法で、複雑な形状でも簡単に大量に作れるというメリットがある反面、品質にばらつきが出やすく強度も弱いとされています。

実際は一つの戦車に全て同じ装甲が使われることはありませんが、SPWAWでは全ての戦車の装甲は便宜的にこの4種類に分類されます。

ま、細かい意味はわからなくても構いません。重要なのは、評定値が小さいほど質が高く、強度係数が大きくなるという点です。また、同一装甲でも強度係数は一定ではありません。装甲が厚くT/D比が小さくなるほど強度係数は大きくなります。

強度係数の最大値は1.3で最小値は0.6なので、例えば同じ50mmの装甲でも質とT/D比の条件が異なれば、実質装甲厚は65mm〜30mmまで変化し、実に35mmもの差が発生するのです。

外部装甲

強力な装甲を持つ戦車であっても、むき出しの履帯や転輪は弱点です。戦車の中には、対戦車ライフル(AT-Rifle)や砲弾の破片からこれらを守るために、車体側面に薄い装甲板を取り付けたものもありました。また大戦後期になると、バズーカやパンツァーファウストに代表されるHEAT弾を使った対戦車兵器に対処するために、車体・砲塔を覆うように外部に薄い装甲板を取り付けることもありました。

これらの増加装甲は、スカート(Armor Skirt)・エプロン(Apron)・シュルツェン(Schurzen)などと呼ばれますが、SPWAWでは全て装甲スカート値として考慮されています。ちなみに、工兵戦車など前部にローラーやブレードを備えているものには装甲スカート値がついていませんが、装甲貫通力計算には考慮されているようです。

装甲スカート値(Armor Skirt)は二桁で表されますが、スカート厚は下位一桁だけで表現されています(先頭桁は装甲の質を表す)。スカート厚は命中した弾種に応じてランダムに1〜3倍され、有効装甲厚(車体や砲塔の装甲厚と傾斜により求められる)が計算された後に加算されます。よくわかりませんね。

簡単に言えば、基本的にスカート値が1増えるにつれ、5mmの増加装甲が基本装甲厚に加算されるようです。つまり、"x1"ならば5mm、"x2"ならば10mmの装甲が加算されます。

ただしスカート厚は弾種の影響を受けるので、HEAT弾に対してはスカートの有無が大きく影響する反面、AP弾やAPCR弾に対してはほとんど意味がないようです。また、HE弾に対する影響はよくわからないとされています。つまり、スカートがあればHEAT弾は貫通できなくなるということを覚えておきましょう。

入射角

SPWAWの装甲貫通システムでは、砲弾が装甲に命中した角度が垂直・水平方向ともに考慮されます。基本的に垂直・水平方向とも装甲板に対して直角に命中すれば貫通力は最大になります。

水平方向の入射角は彼我の相対的な位置によって変化し、これを積極的に利用する方法が「食事時の角度」です。一方、垂直方向の入射角には装甲の傾斜角とともに、彼我の地形の高低差が影響します。

敵戦車より高い位置(高地など)から射撃すれば、傾斜装甲の効果を減らせる上に、上面装甲へ命中(トップヒット)する可能性があります。どんな強力な戦車でも上面装甲は最も薄いので、高い位置からの射撃は非常に有利です。ただし、ティーガーなどの垂直装甲を持つ戦車に対しては、自ら装甲に傾斜を与えることになるので注意が必要です。

また、高地上の戦車は非常に発見されやすいという点も忘れてはいけません。それゆえ高地に登った直後は敵の集中砲火を浴びる危険性がありますが、いったん高地上で"In-cover"状態を獲得すればハルダウン効果を持つので有利に戦えます。

逆に、敵より低い位置から射撃するのは最悪です。傾斜装甲の効果はより強調され跳弾発生率は高くなります。

しかし、敵との距離が150m(3HEX)以内で高低差が5m以上ある場合、射撃ユニットが経験値チェックに成功し前面装甲に命中すると、底部装甲へ命中(ボトムヒット)したことになります。また、史実を考慮してボカージュ(Bocage)地形にいる装甲車輌にも、常にボトムヒットの危険があります

底部装甲は側面装甲厚の1/4で傾斜0度と規定されるので、この条件が整えば貫通率は飛躍的に上昇します。

このルールを利用して、斜面を超えてくる戦車を高地の反対斜面で待ち伏せる方法を反斜面(Reverse-Slope)戦術と言います。高地上に現れる敵を各個撃破できるのが利点ですが、撃ち漏らすとトップヒットをもらう危険があります。

垂直・水平方向の入射角は、彼我のHEXの中心点を結んだ角度を基準にしますが、ユニットはHEX内でも動いていると想定されるので、実際の入射角算出には修正値が加減されます。つまりSPWAWでは一回射撃するごとに貫通力を計算するので、全く同じ射撃条件でも+-10%の範囲内で貫通力に誤差が発生します。

損害

SPWAWでは最初に命中箇所判定を行い、続く貫通判定の後に損害判定が行われます。損害判定に使用される要素は、砲弾の種類と弾頭サイズ、命中箇所、命中後の運動エネルギー残量、砲弾の侵徹に伴い内部に押し出された装甲の量などです。

ただし、発生した損害が常に射撃したユニットに「わかる」とは限りません。損害が小さい場合は、射撃したユニットが充分に近くにいないと損害の程度がわからない(表示されない)可能性があります。

最も損害が少なくなるパターンは、装甲薄・サイズ大・乗員少・生存性大の車輌に対して小口径のAPCR弾がわずかに侵徹した場合です。あるいはサイズ値が大きく装甲が薄い車輌は、貫通弾を受けても損害が発生しないまま弾がすっぽり抜けてしまう可能性もあります。

逆に、貫通しなかった場合でも損害が発生する可能性はあります。損害発生率が最も高くなるパターンは、大口径のHE弾が外装の多い砲塔に命中した時で、この場合は"Vulnerable Location Hit"(脆弱箇所への命中)が発生する確率が上昇します。

「脆弱な箇所」には、工具箱(Tool box)・無線アンテナ(Radio mast)・主砲(Main gun)・同軸機銃(Coaxial MG)・光学装置(Optic)・測距装置(Range finder)・赤外線センサー(Infrared sensor)・砲塔旋回盤(Turret ring)が含まれます。

脆弱な部分の装甲厚は命中部の装甲厚の半分と想定されるので貫通確率も高くなりますが、貫通しなくても高確率で何らかの損害が発生します。

例えば、無線をやられると以降の無線通信は不能になり、主砲や機銃をやられると使用不能に、光学装置や測距装置をやられると命中率が大幅に低下し、砲塔旋回盤をやられると砲塔が回らなくなります。

乗員の経験値によっては戦闘中に故障箇所を修理する可能性がありますが、工具箱がやられてしまうとあらゆる修理ができなくなってしまいます

脆弱な箇所には履帯(Track)やサスペンション(Suspension)も含まれます。これらの駆動系に損害が発生した場合は当然移動不能になります。駆動系の損害は戦闘によって生じる他、険阻な地形を高速で移動するだけでも故障という形で発生する可能性があります。

車輌ユニットにはシステムに対する損害以外に、車輌乗員(Crewman)に対する損害も発生します。一般に、貫通しなくても大口径弾が命中すれば衝撃によって乗員の抑圧は急上昇し、車輌から離脱する可能性が高くなります。

また、サイズ値が大きい車輌は発見されやすく弾が当たりやすいという欠点がありますが、乗員生存性(Survivability)も高いので、貫通弾を受けても乗員は無事という可能性は高くなります。

乗員が死傷すると車輌ユニットそのものの戦闘能力が低下します。例えば、乗員が1名でも不足すると砲弾の装填が遅くなると想定されるので、ターン当たりの射撃回数は著しく減少します。

射撃

戦車の「強さ」は、主砲の貫通力と装甲防御力のみで語られることが多く、大口径砲と重装甲を擁した戦車ほど「強い」とされます。確かに敵戦車の装甲を貫通できるかどうか、あるいは敵の砲弾を防げるかどうかは重要ですが、そもそも敵戦車を撃破するにはまず砲弾が敵に当たらなければお話になりません。

命中さえすれば貫通しなくても損害を与える可能性があることを考えれば、何よりも命中させる能力が重要だと言えます。

射撃回数

1ターン当たりの射撃回数(ROF;Rate Of Fire)は、砲口径と抑圧に反比例し、ユニットの経験・指揮官技能・乗員数に比例します。カタログスペックから言えば、小口径で乗員数が多い戦車ほど射撃回数は多くなります。ただし同じ兵器でも、抑圧・経験・指揮官技能値によって射撃数は変化します。

射撃回数は移動するだけでも減ります。その法則はイマイチはっきりしませんが、車輌ユニットで言えば、最大移動力の半分以上移動すると射撃回数が1つ減り、全移動力を消費するともう一回減るようです。

ただし砲安定値(Targeting)が高いユニットは移動に伴う射撃回数の減少率が小さくなります。車輌に限って言えば、移動しただけで全く撃てなくなるということはないので、特に気にする必要はないかもしれません。

逆に射撃するだけでも移動力は減ります。こちらは法則がはっきりしています。すなわち、最初の三回の射撃で移動力は半減します。

その内訳は、一回目の射撃で移動力は1減り、二回目の射撃で最大移動力の25%を失い、三回目の射撃で最大移動力の24%を失います。四回目以降の射撃では移動力は減少しません。これらをトータルすると、三回の射撃で常に最大移動力の半分を失うことになります。また、敵から攻撃をうけるだけでも最大移動力の25%を失います

これらの法則を知っておけば、撃ちすぎて移動できない!という目に遭うことが少なくなるでしょう。

例えば、最大移動力24の戦車が、消費移動力1の道路を4HEX移動して敵の攻撃を受けたとすると、24-4-(24*.25)=14となり、残り移動力は14になります。この時点でさらに5HEX先まで移動したい場合、何回射撃して良いでしょうか?

一回射撃すると、移動力1ポイントを失うので、14-1で残りは13になります。

二回射撃すると、最大移動力の25%を失うので、13-6で残りは7になります。

三回射撃すると、最大移動力の24%を失うので、7-6で残りは1になります。

というわけで、移動力を5残しておくには二回まで射撃して良いということになります。と言っても実際は敵が撃ち返してくる可能性が高いので、一回しか射撃できないかもしれません。まあこんな面倒な計算をする必要はありませんが、撃ったり撃たれたりすると最大移動力の4分の1が無くなる、と覚えておけば役にたつかもしれません。

命中率

ソフトスキンに対しては命中しなくても抑圧を与えることはできますが、AP弾で互いの装甲貫通を狙う戦車戦では命中するかどうかが最も重要な問題です。ポップアップで表示される予想命中率がアテにならないのは歩兵戦と同じですが、戦車戦の場合は修正値が多くなるのでほとんど信用できないことを覚えておきましょう。

命中率は0%や100%になることはなく、どのような場合でも少なくとも1%は命中・非命中の可能性があります。また、常に10%程度(射撃ユニットの経験値によって上昇する)はラッキーショットが発生する可能性があり、この場合は情報画面に"Vulnerable Location Hit"と表示されます。

命中率を修正する要素には経験・抑圧・状態・サイズなどいろいろありますが、上述の射撃回数もその一つです。車輌ユニットの射撃回数による命中率ペナルティは歩兵と異なり、一回目の射撃で40%(歩兵は80%)、二回目の射撃で20%、三回目以降は0%、つまりペナルティ無しになります。

ただしこれは停止状態で同一の敵を射撃する場合の話で、途中で移動したり照準を変更したり(異なる敵を撃つ)すると、その度に一回目の射撃ペナルティ(40%)を課されることになります。ということで、射撃は停止状態で同一目標に三回セットで行うのが基本です。

もう一つ何か覚えておくとすれば、射撃統制値(FC;Fire Control)の役割です。FC値を5倍したものが基準命中率に直接加算されるので、FC値が高いものほど最終的な命中率も高くなります。

例えばFC値が3なら3*5=15%命中率が向上します。歩兵戦ではこのFC値が大きな役割を果たし、事実エリート歩兵はFC値が高いのですが、戦車戦では話はそう簡単ではありません。

なぜなら戦車戦の多くは移動しながら行われるからで、戦車戦の命中率に最も影響するのは彼我の移動速度(移動距離)です。

射撃統制値と砲安定値

ゆっくり動いている車と高速で動いている車を射撃する場合、どちらの方が命中させやすいでしょうか?そうです。車輌ユニットは歩兵ユニットと異なり、速く移動する(ターンあたりの移動距離が長い)ものほど敵の弾も命中しにくくなります。

ならば高速で移動した方が有利かと言えば、そうとも言い切れません。高速で移動するほどこちらの射撃も命中しにくくなるからです。移動中に射撃するよりは、停止して射撃した方が命中しやすいことは言うまでもありません。

これら相反する二つの命中率には、FC値と砲安定値(Targ;Targeting,Stability)が大きく影響します。

車輌ユニットの射撃統制値は照準器の性能を示し、最低レベルのいわゆる"Eyeball Mk1"(肉眼照準)から単純なアイアンサイト、果てはレティクルつきの光学照準器までさまざまなものがあります。史実ではドイツの照準器性能は高かったので、ゲーム中でもドイツ戦車のFC値は他国に比べて高くなっています。

一方、砲安定値はOOBエディタでは"Stab"と表示されますが、第二次大戦期の戦車はスタビライザーなんて持ってなかったのでスタビライザーの性能を表しているわけではありません。この表記が残っているのは現代戦を扱ったSP3の名残のようで、SPWAWでは"Targeting"と表示されるように、移動・砲塔旋回・乗員の行動を協調させる能力を抽象的に表した値だと考えられます。

Targ値は車輌ユニットに固有の属性で0〜4の値を取り、砲塔の有無・砲塔旋回速度・砲塔乗員の人数によって決まります。砲塔の無い自走砲や駆逐戦車は低く、砲塔旋回速度が速く乗員の多い戦車は高い値を取ります。

FC値が高いものほど「移動目標に対する命中率」が向上し、Targ値が高いものほど「移動射撃時の命中率」が高くなります。具体的な修正値の公式は次のようになります。

この式だけから最終的な命中率を推測することはできませんが、要は敵や自分が動いた距離がペナルティになり、FC値やTarg値はそのペナルティを埋めてくれることは覚えておきましょう。

命中率を上げたい場合は、自分は停止して敵が長距離移動する前に射撃するのが基本です。逆に敵の命中率を下げたければ、なるべく長距離を移動した後に交戦するべきでしょう。

国籍・クラス別特性

射撃管制値(FC)と砲安定値(Targ)
名称FCTarg
新砲塔チハ41
4号戦車F2(S)53
M4A1シャーマン43
T-34 43年型41
3号突撃砲G41
マルダーII40

右表は、1942年時の日独米ソの代表的な戦車の射撃統制値と砲安定値を示しています。

これは特定の年代の一車種の例ですが、この表からおよその国籍傾向も読み取れます。また、クラス別の特徴を示すために、突撃砲(Assault Gun)クラスの3号突撃砲と対戦車自走砲(SP-ATG)クラスのマルダーもくわえています。

まず射撃統制値(FC)を比較すると、国籍別でもクラス別でも大きな差はありません(同年代ならば)。ただし、ドイツの戦車は優秀な光学機器を表すために、他国に比べて1ポイント程度優れていることがほとんどです。

一方、砲安定値(Targ)には国籍別でもクラス別でも大きな差があります。ドイツやアメリカの戦車は常に高いレベルにあり、残念ながら日本の戦車は最低レベルです。

この差は砲塔部の兵員数や砲塔旋回速度の差を表しています。ソ連の戦車は数値こそ日本と同じですが、これは戦車構造の差だけでなく戦車運用法の違いをも表しています。

第二次大戦期の戦車は完全な移動射撃(走りながら撃つ)をすることは難しく、ほとんどの場合は命中率を高めるために一時停止して射撃していました。ところがソ連は命中率うんぬんよりもとにかく撃ちまくることを優先し、止まってしまえば命中率で勝るドイツ戦車に負けてしまうので常に移動し続けることも要求されました。

SPWAWではこのようなソ連戦車の運用特徴を表すために、ソ連戦車の砲安定値は低く設定されています。

また、3号突撃砲とマルダーを4号戦車を比較すると違いは一目瞭然です。突撃砲や対戦車自走砲は砲塔がなく、そもそも移動しながら射撃するようにはできていないのです。

この点は非常に重要で、これらのユニットを戦車と同じように運用してしまうとその利点が全く生かされないことになります。突撃砲や対戦車自走砲は完全に停止して撃ってこそ、その力が発揮できるのです。

以上をまとめると、同年代の戦闘車輌ユニットの場合、FC値にはほとんど差がなくTarg値では大きな差がつくことがわかります。

つまり自分が停止して移動中の敵を射撃する場合、最新鋭の戦車同士なら車輌の性能による命中率の差はほとんどないのです。しかし自分が移動して射撃する場合は、ドイツやアメリカの戦車が圧倒的に有利になります。

もっと言えば、ソ連戦車がドイツ戦車と対する場合、同じ距離の移動射撃をしても勝ち目はないのです。自分の射撃命中率だけを考えると、ドイツ戦車が4HEX移動して射撃するのとソ連戦車が1HEX移動して射撃するのはほぼ同じ条件です。しかしこの条件では、ソ連戦車は4HEX移動した目標を狙うのに対し、ドイツ戦車は1HEXしか動いていないソ連戦車を狙うことになります。FC値に差がないとしても、どちらが有利かは言うまでもありません。

したがってドイツ軍は史実と同様に、物量で勝るソ連戦車を「足」でかき回して各個撃破を狙うという戦法が可能になるのです。

測距装置

射撃統制値や砲安定値とともに戦車戦で重要な役割を果たすもう一つの要素が、測距装置値(RgF;Range Finder)です。この値は遠距離射撃時の命中率に影響します。

大戦初期の戦車は、照準器に写る敵戦車の背の高さからだいたいの距離を推測して射撃していました。現代の感覚で考えるといい加減な感じがしますが、戦車砲弾は高速でほぼ水平に飛ぶので距離が近ければ正確な距離測定をする必要はなかったのです。

ところが砲の大口径化に伴い最大射程が伸びると、遠距離での交戦も増え敵との距離を正確に測定する必要がでてきました。

各国戦車の測距装置(RangeFinder)
名称RgF
新砲塔チハ3
4号戦車F2(S)6
M4A1シャーマン4
T-34 43年型4

右表は、代表的な戦車の測距装置値を示しています。

この分野では技術力の差がはっきり現れ、光学機器の精度に優れるドイツ軍が圧倒的に優勢です。米ソはワンランク以上差があり、我が日本は常に最低レベルです。

ただし、どの国でも火砲(牽引式)や対空兵器は遠距離交戦を前提としているので、その国の中では最も優れた測距装置を持っています。

RgF値による距離帯域と命中率修正
基準距離第一帯域第二帯域第三帯域第四帯域
帯域〜(RgF+1)*6〜(RgF+1)*8〜(RgF+1)*10〜(RgF+1)*12(RgF+1)*12〜
修正なし0.67倍0.5倍0.33倍0.25倍

RgF値の働きをまとめたのが右表です。

RgF値に1を足した値を6・8・10・12倍して距離帯域を計算し、それぞれの帯域で表のような命中率にペナルティ係数がかかります。RgF値が大きいほど、命中精度が低下する距離が長くなるというわけです。

例えば4号戦車F2(S)とT-34 43年型を比較すると、命中率が半分になる第二帯域は、4号が56〜70HEXであるのに対しT-34は40〜50HEXになります。

つまり50HEXの距離で交戦すると、T-34の命中率は半減するのに対し4号は7割程度にしか低下しません。T-34はFC値で負けている分基本命中率も劣るため、遠距離戦では一層不利になるのです。

ちなみに測距装置は「脆弱箇所」なので、戦闘によって壊れる可能性があります。通常なら4号戦車F2(S)の基準帯域(命中率が50%)は、ACC値の19HEXから(6+1)*6=42HEXの範囲ですが、測距装置が壊れると基準帯域は(0+1)*6=6HEXとなってしまい、本来のACC値19HEXでの命中率は、50%*0.25=12.5%になってしまいます。

まとめ

貫通力や装甲防御力で勝っていても、FC・Targ・RgFという命中性能を決める三要素が全て劣っていれば、不利な戦いを強いられます。上述の4号戦車F2(S)とT-34 43年型の例で言えば、T-34は普通に撃ち合ってもダメ、機動戦に持ち込んでもダメ、遠距離交戦でもダメ・・・。いったいどうすれば勝てるのでしょうか?

残された手段の一つは接近戦です。近距離戦なら基本命中率や移動距離によるペナルティの影響は小さくなります。極端に言えば、敵に隣接できれば命中率に影響するあらゆる要素をほぼ無視できるのです。さらに貫通力が多少劣っていても、近距離戦なら互角に戦えるでしょう。問題は、タダでさえ命中率の良い敵にいかにして接近するかです。

つまるところ、一対一で撃ち合う限り性能差は絶対的なので、この差を埋めるには数で優位に立つしかありません。「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」式に10対1で突撃されれば、どんなに優秀な戦車でもほぼ勝ち目はありません。隣接射撃でも装甲を貫通できないほど劣った戦車が相手でも、囲まれてタコ殴りにされれば装甲は無事でも乗員が手を挙げてしまうでしょう。接近さえできれば、貫通力は絶対的な要素ではないのです。