砲兵将校への道

Last updated on May. 12, 2007

「砲兵への道」では、火砲に関する基本的な説明を行いました。これだけの知識があればほぼ不自由なく火砲ユニットを使えるはずですが、それでも砲兵に関する悩みは尽きないでしょう。ここではあらゆる状況で火砲を有効に使える「砲兵将校」となるために、さらに高度な実践的知識を紹介します。

おさらい

砲兵の種類と特徴

砲兵ユニットの分類方法は多々ありますが、その特徴を簡単におさらいすると次のようになります。

盤外砲
射程が長く広範囲の弾幕展開が可能。抑圧を与えるのに適しているが、命中精度が悪い。補給手段がない。連絡不能になる。
盤内砲
射程は短いが命中精度に優れる。補給手段があり連絡不能確率も低い。同種の盤外砲に比べると直接殺傷力に優れる。
大口径砲
射程が長く砲撃威力(抑圧・殺傷)が大きい。命中精度は低く保有弾数も少ない。
小口径砲
射程は短く砲撃威力も小さい。命中精度は高く保有弾数が多い。
野砲(HOW・FH・FG含む)
射程が長く砲撃威力も大きい。煙幕弾も少数保有。
迫撃砲
射程は短く直接殺傷力は低い。命中精度の高さと煙幕弾保有数が多いのが特徴。
ロケット砲
一回の射撃で全保有弾を消費する。命中精度は最悪だが威力は最強。

編成

日105mm盤外砲中隊

盤内砲と盤外砲は編成面でも異なります。

盤内砲はほぼ全てが1門=1ユニットで構成され、2門=2ユニット=1個班(Section)、4門=4ユニット=1個砲兵中隊(Battery;Bty)となります。また迫撃砲は班−小隊編成をとります。

これに対して盤外砲は、同じ1ユニットでも1門編成のものと4門編成の砲兵中隊があり、3個砲兵中隊=1個砲兵大隊(Batallion;Btn)になります。

SPWAWはほとんどのシナリオが中隊〜大隊規模の戦闘なので、支援に当てる盤外砲の目安としては、1個砲兵中隊が基準となります。

中〜大隊規模の地上部隊に対して、これ以下だと砲兵支援としては少な目、これ以上だと潤沢と言えます。繰り返しになりますが、この砲兵中隊は1ユニットが4門の砲を持っていることに注意して下さい。

もちろん、盤外砲1個中隊だけ用意すれば充分かと言えばそうではありません。例えば、一般に盤外砲は広範囲に抑圧を与えることを主目的とするので、特定のHexをピンポイントで狙い撃つという用途には不向きです。

バランスの良い砲兵支援には、盤外・盤内を含めて複数種の砲兵ユニットを組み合わせることが不可欠ですが、多くの状況に柔軟に対処できるという意味で盤外砲兵中隊は支援砲兵の中核になります。

というわけで、砲兵将校たるもの、何よりもまずこの盤外砲中隊を上手に使いこなすことができなければいけません。

盤外砲の運用

盤外砲の大敵は、連絡切れ対砲兵射撃弾薬の枯渇の3つです。盤外砲は国籍や時期に関わらず無線を装備していますが、連絡不能(Out Of Contact)事態は常に25〜33%の割合で発生します。これを防ぐ手段は一切ありません。

敵の盤外砲による対砲兵射撃(Counter Battery Fire)もランダムに発生し、積極的な対処方法はありません。対砲兵射撃の発生確率を上げる方法は、砲兵を遊ばせておく(砲撃任務を与えない)ことくらいです。

ただし、対砲兵射撃は射程(Range)に基づいて発生するので、敵の盤外砲よりも射程の長い砲だけを用意しておけば、一方的に対砲兵射撃を加えることも可能です。

つまり積極的に対砲兵射撃を行おうとするなら、射程の長い150mmクラスの砲(あるいはさらに射程の長い艦載砲)を揃え、敵の盤外砲が砲撃任務を行うのをじっと待つ、という戦法がベストでしょう。実際に対砲兵射撃が発生するかどうかは運次第ですが・・・。

弾薬の枯渇はこれらの中で最も頻繁に直面する最大の問題です。最も極端な例で言えば、ロケット砲は一射撃で全弾薬を撃ち尽くしてしまいます。比較的使いやすい迫撃砲でも、連続射撃すればあっという間に弾切れになってしまいます。それでも盤内砲であれば補給手段を用意することで対処できるのですが、盤外砲には補給する術さえありません。

通常弾の運用

105mm盤外砲中隊−ユニットデータ

保有弾数が限られた盤外砲をできるだけ長く使い続けるには、一射撃あたりの消費弾薬数を減らすことです。

どうやったらそんなことができるのか?「盤外砲中隊は4門の砲で構成されている」のでしたね。ならば4門のうちいくつかを使用禁止にしてやればよいのです。

砲撃画面で盤外砲のユニットデータボタンをクリックすると、右のような情報画面が開きます。

"Weapon"欄に表示されている緑色の文字上をクリックすると、その兵器を一時的に「使用停止」にできるのです。この機能を使えば、例えば砲1だけで射撃したり砲2と砲3で射撃したりという操作が可能になります。

では、どの砲門を停止すれば最も効率よく射撃できるのでしょうか?確かに1門だけで射撃すれば弾薬消費量は抑えられるでしょうが、砲撃効果も低下してしまいます。

このように弾薬消費量だけで砲撃効果も考えると、2門ずつの組み合わせがベストの選択になるでしょう。2門ずつで射撃すれば、理屈上は二倍長持ちするはずですが・・・何事も理屈どおりにはいきません。

使用砲門と一射撃あたりの消費弾薬
使用砲門消費弾薬着弾画像
#1〜#47発×4
#1・#27発×2
#3・#415発×2
#1・#37発×2
#2・#415発×2
#17発×1
#2or#3or#415発×1

そこで実際にテストを行った結果が右の表です。テストには日本軍の105mm盤外砲中隊とFOを用い、経験・士気値は90、火砲技能値は80に設定しました。105mm盤外砲の弾薬保有量は砲1門につき50発で、4門合わせると200発になります。

エンサイクロペディアでみると、このユニットの射撃速度(Rate Of Fire;ROF)は"5"になっています。通常ならばROF値から判断して「このユニットは1ターンに5発撃てる」ことになりますが・・・間接射撃にはこの法則は当てはまりません。つまり、盤外砲が1回に消費する弾薬数は必ずROF値以上になり、正確には予測できないのです。

ROF値が信用できないことだけ覚えておいて、実際に何発使うかは撃ってみればわかります。

右表から4門全てで砲撃した場合、1門につき7発、4門あるので合計28発消費します。つまり、このペースで砲撃すると7ターン少々しか砲撃できないことになります。ターン数が長いシナリオでは結構厳しいことがわかりますね。

次に、砲1と砲2で砲撃した場合(砲3・砲4は停止)も7発ずつ消費しますが、面白いのは砲3と砲4で砲撃した場合は15発ずつ消費するということです。さらに、砲1だけを使用した場合と砲2・3・4を別個に使用した場合もテストしても、この傾向が確認されました。表には載せていませんが、砲2〜4を同時使用した場合(砲1のみ停止)も1門あたりの消費弾薬は15発でした。

これらの結果から、「砲1を使用しない場合は、1門あたりの弾薬消費量はほぼ倍になる」という法則があることがわかります。砲1を使えば弾薬消費量は抑えられることがわかりましたが、砲撃効果に関してはどうでしょうか?

といっても「砲撃効果」を具体的に測定するのは難しいので、着弾を調べてみました。画像では着弾を見やすくするために硝煙を消しています。実際には砲弾痕が残っていなくても着弾しているHEXもある点に注意してください。

各画像を比較すると、使用する砲の組み合わせによって着弾傾向が異なることがわかります。例えば、4門全てを使用した場合は照準地点"@"周辺にまんべんなく着弾しますが、砲1と砲3では北側に、砲2と砲4では南側にずれています。

そして、着弾傾向は4門全てを使用した場合と変わりませんが最も砲弾痕が大きいのは、砲3と砲4の組み合わせです。2門しか使ってないのになぜ?と思われるかもしれませんが、消費弾薬量はこちらの方がわずかに多いのです。

実際、この砲3と砲4の組み合わせで何回か砲撃を繰り返してみると、照準のやや手前に格子状に着弾することがわかります。敵に抑圧を与えるという観点から言えば、この着弾パターンは非常に効率的です。

この結果から、最も砲撃効果が高いと判断できるのは、砲3と砲4の組み合わせでしょう。ただし1門あたりの消費弾薬量は多いのでこの組み合わせでの砲撃は3回少々しかできません。しかし、残りの砲1と砲2の組み合わせで7回少々の砲撃を行えるので、トータルで考えるとこの盤外砲中隊は10回以上砲撃できることになります。

以上をまとめると、「4門編成の盤外砲中隊を効率的に使用するには、砲1・2および砲3・4の二種類の組み合わせで運用すべし」ということになります。砲1・2の組み合わせは、消費弾薬が少なく着弾精度が高いという特徴があり、砲3・4の組み合わせは、着弾範囲は4門全て使用した場合と変わらず砲撃効果は高いという特徴があるのです。

この各組み合わせの利点をいかせば、広範囲の敵に抑圧を与えたい場合は砲3・4の組み合わせ、逆に精度の高い砲撃を加えたい場合は砲1・2の組み合わせを使用すればよいでしょう。さらに敵歩兵の大群など「おいしい目標」を発見した場合は、砲3・4の組み合わせに砲2を加えれば、一度に45発もの砲弾を撃ち込むことができるのです。

ここで挙げた例は105mm盤外砲中隊ですが、この砲門操作は他の盤外砲や一部の盤内砲にも適用できます。砲兵将校たるもの、のんべんだらりと砲撃命令を出すだけではいけません。常に弾薬数と砲撃効果を考慮しつつ、メリハリのある砲撃を心がけましょう。

煙幕弾の運用

盤外砲の主要な任務の一つは煙幕の展開です。盤外砲の煙幕は他のユニットが張る煙幕に比べて「濃く」、広範囲に展開できるという特徴があります。また、盤内砲の場合、煙幕弾(Smoke Ammo)は他の弾薬と違ってゲーム中に補給できない点に注意する必要があります。

砲兵将校たるもの、規定量の煙幕弾を有効に使う術を知らなければいけません。そのために、まず砲撃画面を開いてユニット情報を見てみましょう。

日150mm盤外砲中隊−ユニット情報

ここでは日本軍の"150mm Battery"を例にします。ユニット情報画面では保有する煙幕弾数が表示されます。右図の例では24発あることがわかります。

日150mm盤外砲中隊−エンサイクロペディア

さらにエンサイクロペディアで"150mm Battery"を調べると、右のように表示されます。ここで必要な情報は、ユニットの射撃速度(Rate Of Fire;ROF)です。例では"3"になっています。つまり、「このユニットは1ターンに3発撃てる」ことを示しています。

ただし、ROF値はベテランレベルのユニットの射撃速度を示しているということに注意してください。ベテランユニットとは、経験値が80〜99のユニットを指します。これより経験値の低いユニットならば確実に射撃速度は低下し、逆にエリートレベルのユニットなら射撃速度はROF値以上になることに注意しましょう。

これらの数値から 24/3≒8 という計算がなりたち、この砲兵ユニットは約8回の射撃で煙幕弾を使い切ってしまうことがわかります。何ターン分の煙幕射撃ができるかを知っておけば、必然的にいつ射撃を行うべきかも判断できるでしょう。

ただし、煙幕弾の場合は、通常弾のような使用砲門の制限は無意味です。1門で砲撃しても4門で砲撃しても消費する煙幕弾数は常に一定で、使用砲門数が少ない場合は展開する煙幕が少なくなるだけです。狭い地域に薄い煙幕を展開したい場合は砲門制限する意味があるかもしれませんが・・・そんな必要はありそうにないですね。(^^;)

・・・と、以上書いたことはv8.01まではなりたっていたのですが、v8.2になって煙幕弾の間接射撃ルールが大幅に変更されたようです。

v8.2でテストした結果、盤外・盤内砲とも煙幕弾消費量はROF値に関わらず、一律で「4発」に固定されてしまったようです。その代わりでしょうか、ほとんどの火砲で煙幕弾保有量が大きく低下しているようです。というわけで、上記の煙幕保有量/ROF値で射撃回数を割り出す方法はv8.2では通用しません。v8.2以前のSPWAWをプレイする場合のみ参考にしてください。(^^;)

砲撃計画

砲兵将校たるもの、上述のようなテクニックを駆使して弾薬消費量を制限しなければいけません。しかし弾薬消費量を抑える根本的な解決法は「無駄弾は撃たない」という姿勢を徹底すること、言い換えれば「必要な時だけ撃つ」ことなのです。

砲兵の任務

砲兵はいつ使うべきか?これは砲兵の運用思想に関わるので一概には言えませんが、ドイツ軍を例にすると次のような砲兵任務が挙げられます。

遮断射撃
発煙弾の使用をともない、一定時間敵の視覚を奪う。
阻止射撃
敵の移動を一定時間阻止し、特定の移動経路を阻む。
制圧射撃
敵を一定時間釘付けにし、遮蔽態勢を強いて交戦不能にする。
破砕射撃
敵の戦闘力を低下させ、一定時間交戦不能、または当初の目的を達成し得なくすることを狙う

「遮断射撃」は煙幕を使って敵の視界を塞ぎ、自軍に有利な状況を作り出す任務です。ユニットの移動経路を隠して攻撃の焦点をできるだけ隠したり、多方向からの攻撃を避けるために煙幕で交戦範囲を限定することにより、地上部隊を支援します。

煙幕は地上部隊でも張れますが、広範囲に「厚みのある」煙幕を張れるのは砲兵だけです。特に大口径の盤外砲は一回の射撃で南北500m(10hex)程度の弾幕を張ることもできます。地上部隊が持っている煙幕弾は危急の場合にとっておき、煙幕展開は砲兵に任せた方が良いでしょう。

「阻止射撃」は敵の進撃・通過が予想される重要な地点を封鎖する任務です。未然に敵の行動を防止するという意味合いが強く、その目的は、敵に砲撃の危険性を感じさせ、特定地域への進出を放棄させることにあります。例えば、ある高地を常に砲撃することによってその高地への進出意図を挫いたり、敵集団の後方を砲撃することで退路を塞いだりします。

敵の進出前から砲撃しておくことにより、敵の進攻路を限定・誘導することも期待できますが、当然膨大な砲弾が必要になります。砲兵資源を贅沢に使用する任務であり、したがって実際のゲームでは実施することの少ない任務でもあります。

「制圧射撃」は敵の抵抗力を一時的に無力化する任務です。具体的には、該当地域の敵を釘付け状態に追い込むことにより、直後に行われる地上部隊の攻撃時に敵の反撃を阻止し、自軍地上部隊の攻撃を有利に導きます。

いわゆる敵を「ピヨらせて」から地上部隊が突入するという戦闘の黄金パターンには不可欠な要素であり、ゲーム中で使用することが最も多い砲兵任務です。

「破砕射撃」は砲兵力で積極的に敵の粉砕を狙うもので、大規模な砲兵部隊や大口径砲が必要になります。地上部隊との協調が必要な点は同じですが、「制圧射撃」は主である地上部隊を従である砲兵が支援するという要素が強いのに対し、「破砕射撃」では砲兵の方に重点が置かれ、敵を抑圧するだけでなく直接損害を与えることが目標になります。

このように砲兵の任務を明確化することで、砲兵が「必要な時」がはっきりします。これらの任務はいずれも地上部隊との協調が不可欠で、地上部隊の行動との時間的なズレが少ないほど効果を発揮します。例えば、敵ターン終了直後に「制圧射撃」が完了していれば、自軍は有利な状況で攻撃前進できるでしょう。しかし、「制圧射撃」から3ターンも経って前進すれば、敵はすでに抑圧除去に成功し万全の迎撃態勢に復帰しているでしょう。このような砲撃は単なる砲弾の無駄遣いになってしまいます。つまり、砲撃を効果的にするには、地上部隊の状況に合わせて最適なタイミングで弾幕を張る必要があるのです。

遅延時間の仕組み

図解−遅延時間

砲兵将校たるもの、着弾のタイミングを自在にコントロールできなければいけません。まずは基本を押さえておきましょう。この図は、砲撃遅延時間(Delay Time)によって、砲撃がいつ着弾するかを示しています。

SPWAWでのいわゆる「砲撃フェイズ」は、自ターンと敵ターンの間に存在します。ここでは「第一弾幕」「第二弾幕」「第三弾幕」のみ表示していますが、この後も第四、第五・・と続きます。しかしそんなに先のことは考える必要はなく、次の自ターン終了時点である「第三弾幕」までの計画を立てておけば良いでしょう。

この図の通り、遅延時間が0.0〜0.2であれば、少なくとも砲弾の一部が第一弾幕で着弾します。ただし、この遅延時間の範囲でも次のような差が発生します。

遅延時間 0.0
発射した全弾が第一弾幕で着弾する。
遅延時間 0.1
発射した弾数の最大約80%が第一弾幕で着弾、残りは第二弾幕で着弾する。
遅延時間 0.2
発射した弾数の最大約20%が第一弾幕で着弾、残りは第二弾幕で着弾する。

勘の良い方はおわかりでしょうが、遅延時間0.3〜0.5についてもこの法則が当てはまります。つまり、0.3の場合は全てが第二弾幕に着弾し、0.4の場合は80%が、0.5の場合は20%が第二弾幕で着弾し、残りは次の第三弾幕で着弾するということです。もちろん、遅延時間が1.0以上の場合も全く同じことが言えます。

もう一つ覚えておきたいのは、弾薬補給のタイミングです。弾薬補給は「自ターン終了時に」行われると書きましたが、厳密に言えば、第一弾幕の着弾後に行われます。つまり、遅延時間が0.0〜0.2であれば、発射した砲弾(の全部or一部)を直後に補給できるのです。盤内砲の補給手段を有する場合は、この点も考慮に入れておく必要があるでしょう。

遅延時間と砲撃任務

ここまで読むと「なるほど、やはり遅延時間は短い方が良いな」と感じるかもしれません。確かに使いやすさから言えば、常に遅延時間0.0〜0.2で砲撃要請できれば便利でしょう。そのターンで戦闘の焦点となった地域の敵部隊に、移動する間を与えず砲撃を加えられるからです。これは大きな利点ですが、遅延時間が短いのは必ずしも良いことばかりではありません。

まず第一に、全ての砲撃を常に第一弾幕で送り込めるとすれば、あっという間に弾薬が枯渇してしまいます。第一・第二弾幕(敵ターンの前後)に全てが着弾するということは、全く敵に命中しなかったりあるいは砲撃が過剰だったりした場合でも変更が効かないということです。しかし、遅延時間0.4や0.5で砲撃する場合は、第二弾幕(敵ターン終了後)での着弾を確認し、希望通りの砲撃ができていなかったりすでに充分な砲撃効果があると判断すれば、次の自ターン中にその砲撃命令をキャンセルして消費弾薬をセーブするすることもできるのです。

さらに自ターン終了直後、敵の移動前に砲撃を加えることは、状況によっては不都合もあるということです。砲撃が命中したとしても次は敵のターンです。当然、敵は抑圧を回復し体勢を整えようとするでしょう。敵が運良く回復に成功すれば、砲撃効果はほとんど無くなってしまうことさえあり得るのです。

ここでもう一度、上記の砲兵の任務を振り返ってみましょう。例えば、自軍の行動を敵から隠すことを意図する「遮断射撃」は、敵の行動前、つまり第一弾幕で着弾させないとほとんど効果はありません。効果を最大にするには遅延時間0.0での着弾がベストです。しかし、自軍地上部隊の突撃に備える「制圧射撃」では、第一弾幕に着弾するとむしろ効果が薄く、敵の行動が終了した直後の第二弾幕で着弾させるべきで、具体的には遅延時間0.3がベストと言えるでしょう。このように、いつ着弾させるのが最適かは目的とする任務によって異なり、遅延時間が短いことは必ずしも有利ではないのです。

また、この砲撃遅延時間の違いが戦果に大きく影響するのは、航空機による爆撃です。弾薬設定を通常設定でプレイする限り、多くの航空機は一回の爆撃でほとんどの爆弾を消費してしまいます。つまり、航空機による爆撃チャンスは一回限りで、タイミングを外すと全く無意味になってしまいます。敵の移動経路を予測して第二弾幕で爆撃するのは不確定要素が大きいので、理想を言えば、敵目標の居場所を確認した直後に遅延時間0.0で爆撃・・といきたいところですが、優秀なFOが爆撃要請しても、ほとんどの場合航空機の爆撃遅延時間は0.4〜0.5になってしまいます。

このように、FOを使って砲撃要請しても望み通りの遅延時間にはならないという状況は多々あります。すでに「砲兵への道」を読んだ方は事前照準を使えば良い!と気づくでしょう。確かに事前照準があれば、遅延時間をある程度コントロールすることができます。しかし、例えば本司令部のPBEM標準ルールでは、遭遇戦では事前照準ナシという厳しいルールがあります。このような場合はどうするか?砲兵将校たるもの、いかなる場合でも砲撃を自在にコントロールする技術が必要になります。

遅延時間とFO

まず事前照準についておさらいしておきましょう。事前照準は配置画面(Deploy)で登録でき、登録可能数はマップサイズと任務(Mission)によって異なり、3〜10の間で変動します("Assault"・大マップで最大)。そしてゲーム中、この事前照準HEX上への砲撃遅延時間はどのユニットが要請しても0.1になります。

つまり事前照準を指定しておくメリットは、遅延時間が0.1になることとともに、FOの命令消費を抑えられることにあります。C&Cオンでプレイする場合は、砲撃要請によるFOの命令消費は重大懸案です。しかし事前照準を指定しておけば、FOに十分な命令数が無い場合は、FO以外のユニットで砲撃要請しても遅延時間0.1で砲撃できるのです。

事前照準を活用するには、戦闘開始前に充分地形を読んで敵の侵攻路や戦闘の焦点になりそうな地域を推測する必要があることは言うまでもありません。しかし実際には、事前照準上がズバリ「おいしい」砲撃地点(敵が周辺に密集している)になる可能性は少ないでしょう。ほとんどの場合は、事前照準を起点にして照準修正を行わなければいけないはずです。しかし、照準の修正に伴う遅延時間の増大を抑えるには有能なFOが必要です。熟練のFOなら遅延時間の増大を0.1で抑えられますが、新米FOだと0.3〜0.4も増大することがあります。このような場合、一回照準修正しただけで砲撃遅延時間は最悪で0.5になってしまいます。つまり、実際に砲弾の大半が着弾するのは、次の自ターン終了後の第三弾幕になってしまうのです。もちろん、第三弾幕で着弾しても効果が期待できると判断して砲撃するのであれば良いのですが、焦るあまりただ闇雲に砲撃命令を出してしまうようでは砲兵将校失格です。

このような状況を避けるためにも、まずは遅延時間に関わる要素を確認しておきましょう。遅延時間は火砲とFO(砲撃要請ユニット)の能力に左右され、FO能力は指揮官の砲兵指揮値とユニットの経験値に左右されます。具体的に把握しておくべきは次の二点です。

この値は砲撃要請する火砲の種類によって異なりますが、盤内迫撃砲を例にした場合、基準遅延時間が0.3以下、修正遅延時間が0.2以下であればそこそこ優秀なFOです。前者が0.4、後者が0.3以上なら「使いにくい」レベルと言えるでしょう。ちなみに、1942年以降の米軍は、盤内砲に対する基準遅延時間が0.1で盤外砲でも1.0を切るというズル〜イ仕様であることも知っておきましょう。

遅延時間のコントロール

さて、砲兵将校このFOの能力を把握した上で大まかな砲撃方針をたてます。優秀なFOがいる場合は簡単です。遅延時間を常に0.4以下に抑えて、第一・第二弾幕での素早い着弾を主体とし、盤外砲や航空機を使用する場合は先を見越した第三弾幕での着弾を検討します。修正遅延時間が0.1であれば、遅延時間を細かくコントロールするのもたやすいでしょう。

問題はFOが無能な場合で、盤内砲の基準遅延時間が0.5、修正遅延時間が0.3などという場合です。しかし、こういう時こそ砲兵将校としての技術を生かすことができるのです。困難な状況を喜びに変えましょう(^^;)。

このような場合は、常に1ターン先の砲撃計画を立てておく必要があり、最初から第三弾幕での着弾を基準に考えます。現ターンの第三弾幕も1ターン待てば第一弾幕になるのです。例えば、基準遅延時間が0.5、修正遅延時間が0.3であれば、砲撃要請する際に一回の照準修正を行い、強引に遅延時間を1.0にしておきます。すると1ターン後には遅延時間0.0の第一弾幕で着弾することになります。二回の照準修正を行っておけば、1ターン後には遅延時間0.3の第二弾幕で着弾させることができるというわけです。

この方法のポイントは、1ターン分のロスをあらかじめ考慮に入れ、次のターンで砲撃させるか否かに関わらず、複数の砲兵を常に遅延時間1.0以上で待機させておくという点にあります。実際に砲撃するかどうかは、1ターン経過した時点で判断するのです。目論見どおりに敵が照準地点に現れていればそのまま遅延時間0.0や0.3で砲撃し、敵の進路予想が外れて砲撃する必要がなければ、さらに照準修正を行い、再び遅延時間を1.0以上にして次のターンに備えるのです。

この「浮動照準法(仮称)」とでも言うべき砲撃法のメリットは大きく三つあります。一つは、無能なFOでも充分運用でき、極端に言えばFOがいなくても使えるという点です。通常、複数の砲兵に一斉に命令を出すのは困難ですが、遅延時間が1.0以上でも良ければFO以外のユニットでも問題ないので、FOの命令消費を分散することができるのです。優秀なFOがいれば、最初の砲撃要請はFO以外に指定させ、その後FOが照準修正を行い遅延時間を0.1刻みで操作するといった使い方もできます。

もう一つのメリットは、盤外砲にとって避けられない連絡不能事態の影響を受けにくいという点です。一度砲撃要請してしまえば、その盤外砲が連絡不能になっても砲撃命令は遂行されます。もちろん連絡不能中は照準修正もできませんが、連絡が取れている時に砲撃要請しておくことで、少なくとも砲撃が全くできないという最悪の事態は回避できます。

しかし最大のメリットは、砲兵の弾薬消費を大幅に抑えられるという点でしょう。この点は弾数の限定された盤外砲や、上述したワンチャンスの航空爆撃で大きな威力を発揮します。敵の強力な戦車を視認できるまで遅延時間1.0で照準を「浮動」させ続ければ、いつか必ず遅延時間0.0でピンポイント爆撃できる機会が来るはずです。

もちろん修正遅延時間が大きければ、予想もしない地点に敵が現れた場合などの緊急事態での対処は難しくなります。複数の砲兵を照準を分散させて常時待機させておくのはそのような場合の保険ですが、優秀なFOがいる場合よりも敵の出方を読む能力は要求されるでしょう。しかし、運に任せて中途半端な遅延時間で撃ち続けるよりも、1ターン待って着弾を完璧にコントロールした方が、無駄弾は撃つべからずの原則を徹底でき効果的に砲兵を運用できるのです。

砲撃計画の実際

以上、新米砲兵よりワンランク上の「砲兵将校」になるために必要な知識を紹介してきました。以下では通常のゲーム展開を追いながら、さらに具体的な砲兵将校の役割や心構えを紹介します。といっても、常にこの通りに展開するわけはないので、あくまで参考程度に留めてくださいね。

購入

キャンペーンやPBEMで最も頭を悩まされるところです。砲兵将校として特に考慮すべき点は、シナリオの任務・マップ・有効視界です。任務の観点から言えば、Assault戦では地雷原や要塞が待ち受けている可能性が高いので、大口径の盤外砲や航空機が有効です。Advance戦を含めた攻勢シナリオでは立てこもる敵をピンポイント砲撃できる迫撃砲が不可欠です。マップの観点から言えば、市街地では迫撃砲、開豁地や渡河シナリオでは煙幕弾を豊富に持った中口径の盤外榴弾砲(105mmクラス)が必要です。

そして最も影響するのが有効視界で、低視界か高視界かは最低確認しておく必要があります。仮に視界が5HEX以下の場合、150mmクラスの盤外砲は着弾のばらつきが大きすぎて使い物になりません。同様の理由でロケット砲や航空機、直射しかできない盤内砲も無意味です。このような低視界戦では即応できる盤内迫撃砲が最強で、盤外砲は105mmクラスまでが無難でしょう。

 どのような状況でもそこそこ使えるオールマイティな砲兵は、105mmクラスの盤外砲中隊と盤内中迫撃砲(81mmクラス)で、迫撃砲用に補給手段を用意できれば最高です。もう一つ、忘れてはならないのがFOで、購入した砲兵の規模に応じて必要になります。盤内砲が多い場合は特に意識する必要はありませんが、盤外砲が多数ある場合は、盤外砲3〜4ユニットにつきFO1くらいの割合で用意できれば万全です。もちろん上述した「浮動照準法」を使えば、ある程度不足を補うことは可能です。

配置

ここで考慮すべきは、FO・盤内砲・補給手段の配置と事前照準の設定です。特に事前照準は後の砲撃計画を大きく左右するので、充分にマップをにらんで慎重に計画を立てましょう。

まずFOの配置場所は、連絡不能事態を避けるためHQユニットの3HEX以内に置くことが基本です。FOが複数いる場合は、残りのFOを前線に出しておくのがオススメです。盤内砲の配置場所も同様の理由からHQの周辺3HEX以内が基本でが、射程を考慮する必要はあります。ただしPBEMの場合、敵プレイヤーは「硝煙を目標にした対砲兵射撃」や「地上戦力による砲兵溜まりの蹂躙」を狙ってくるので、この原則は常に正解ではないかもしれません。

HQとの連絡を絶やさず砲兵を安全に運用するというジレンマを解消する配置方法としては、二つの方向性が考えられます。一つは、HQと砲兵を安全と思われる戦線後方で固定することです。この場合、偽煙幕などの陽動作戦とともに少数の護衛ユニットを用意する必要があるでしょう。しかし険阻な地形や地雷などの障害物を活用すれば、護衛コストはかなり抑えられます。この方法はHQとの連絡を絶やさず砲撃回数をセーブする必要がないという点はメリットですが、一度見つかってしまうと集中的な砲撃を受けたり、強力な敵部隊の前には抵抗する術がないという欠点があります。もう一つの方向性は、HQと砲兵を自走化して主力部隊に追随させることです。この方法にもコスト増大や後方陣地が空白化するという欠点がありますが、ターン数が長い大マップ戦闘では効果を発揮します。

一方、事前照準の設定では、自軍砲兵力・シナリオ任務・有効視界・マップサイズ・地形・敵プレイヤーの思考など様々な要素を考慮しなければいけません。あらゆる状況を想定した説明は不可能なので、ここでは基本的な考え方だけを紹介します。まず、事前照準はその地点を砲撃することを狙うものではなく、あくまで付近一帯を砲撃する場合の照準の起点だという認識が大事です。マップをいくつかのエリアに分割し、全てのエリアをカバーするように設定するのが基本ですが、最適なエリアの分割方法はマップサイズや地形によって異なるでしょう。

例えばマップを縦3×横3で均等に分割して9つのエリアを想定します。その中には地形から判断してほぼ戦闘は発生しないと予測されるエリア(山岳地帯など)もあるでしょうし、反対に道路・小市街の存在から戦闘の焦点になりそうなエリアもあるはずです。ほとんどのシナリオはVHの取り合いが戦闘の焦点になるので、VHのあるエリアの照準優先度は高くなります。さらに地形を吟味してVHまでの彼我の侵攻路を想定すれば、VHが無くても照準を設定しておくべきエリアがあるかもしれません。例を挙げれば、マップ中央エリアがVH密集地で、そこを見通すことのできる高地エリアが敵陣にある場合などは、VHが無くても高地上に事前照準を設定すべきでしょう。このようにVHの位置や彼我の侵攻路を想定して、マップ全体をいくつかのエリアに分割し、できるだけ均等に事前照準を設定していきます。

この際忘れてはならないのは、上述したようにFOが事前照準以外の地点に砲撃要請した場合の遅延時間と照準を修正した場合の遅延時間を調べておくことです。配置画面での砲撃要請はやり直しをしても命令ポイントを消費しない点を利用しましょう。特に、修正遅延時間を知っておくことは重要です。修正遅延時間が短いFOがいれば、事前照準間の間隔を大きくしても着弾のコントロールは容易になり、少ない事前照準数でより広い範囲をカバーできるのです。

進軍

ゲームが始まるとお互いの地上部隊が策敵を開始します。この段階での砲兵の任務は、必要に応じて煙幕を展開する「遮断射撃」が主になるでしょう。着弾地点は自軍部隊の侵攻路前方の開豁地、理想的な遅延時間は0.0です。できる砲兵将校ならば事前照準を用意しているか、事前照準がない場合でも第一ターン開始直後に「浮動照準法」を使って準備ができているでしょう。

地形にもよりますが、効果的な遮断射撃の方法は二通り考えられます。一つは、部隊の前進に合わせて着弾地点を漸次延伸していく方法。もう一つは敵の配置を予想して敵部隊手前の同一地点に着弾させ続ける方法です。前者の方法は遭遇戦に最適で、後者はAssaultやAdvance戦に適しています。つまり両者の違いは、敵の移動(前進)を想定するかどうかです。敵が前進してくる場合は、自軍のすぐ前を煙幕遮蔽して敵が懐に飛び込んでくるのを待つのに対し、敵が固定されている場合は敵の目前を塞ぐことで、ぎりぎりまで安全に接近できるというわけです。

接敵

さて、何とか安全に前進できたとします。しかし偵察部隊が最前線の煙幕のカーテンを超えると・・もちろん敵の第一線が待っているでしょう。砲兵将校はこの偵察結果を基に彼我の戦力を分析して砲撃計画を立てます。ここでは、煙幕の向こう距離100mの敵第一線にAT兵器を持った塹壕化歩兵、その後方の第二線にはMGとATGが構えていたと想定します。第一線と第二線の間隔は約200m。使える自軍砲兵は105mm盤外砲中隊のみ。さてどうする?

以下は独断と偏見ですが、安全策なら遮断射撃、強攻策なら第二線の砲撃を狙います。最も手っ取り早そうな第一線の砲撃は、友軍誤爆の可能性があり、敵ターンで回復されると弾の無駄遣いに終わる気配が濃厚です。特に塹壕にこもる歩兵は少々の砲撃では「破砕」するほどの効果は期待できない点にも注意しましょう。

また、砲兵には地上部隊には不可能な任務を与えることを意識しましょう。近距離にいる敵AT歩兵はバランスの良い地上部隊だけでも制圧可能ですが、300m以上離れた第二線を安全に叩くのは砲兵の支援無しでは難しいのです。


全面砲撃

上記の例は、敵の陣容が判明していることが前提となっていますが、敵の配置と戦力がわからなければ、効果的な砲撃計画はたてられません。地上部隊指揮官と同じく、砲兵将校にとってもゲーム序盤はできるだけ敵の情報を得ることが重要で、以降刻々と判明する敵情をもとに砲撃計画を修正していく必要があります。この段階から砲兵は、「遮断射撃」「阻止射撃」「制圧射撃」「破砕射撃」という全ての役割を負うことになります。

当面の目的は、最初の接敵地点に救援に向かうであろう敵後続部隊の阻止、そしてそれを援護する敵戦力の無力化です。デキる砲兵将校なら、最初の接敵と同時に接敵地点の敵陣後方に「浮動照準」を準備しているはずです。敵の後続部隊を発見次第、遅延時間0.0〜0.2で着弾する「制圧射撃」を狙うか、とりあえず敵後続の進撃路にあたりそうな地点に着弾させて「阻止射撃」を狙うというわけです。また、敵の後続部隊が後方で第二線陣地を築きはじめたら、当面の無力化を狙って「遮断射撃」するのも良いでしょう。

 もちろん、接敵地点以外にも目を配らなければいけません。人間なら迂回攻撃は当たり前なので、接敵地点の南北にはすでに敵が進出しているかもしれません。この方面にも「浮動照準」を準備しておけば万全でしょう。

対砲兵戦

「自分が考えていることは敵も考えている」。つまり、当然敵も砲兵支援を行うに違いありません。できれば敵砲兵力を序盤で無力化しておきたいところです。盤外砲の対砲兵射撃が発生するかどうかは運次第ですが、盤内砲同士の戦いなら知恵の勝負になります。

両軍の盤内砲がともに固定陣地ならば、先に位置がバレた方が圧倒的に不利になります。盤内砲の主役である迫撃砲を先につぶすことができれば、地上部隊同士の接近戦では圧倒的に有利に立てるのです。

敵の盤内砲陣地を発見するには、敵後方に潜入部隊を送り込んだり、狙撃兵を単独派遣しておくという手もありますが、最も簡単なのは砲撃に伴う硝煙を確認することです。毎ターン必ず敵陣後方を観察して硝煙が上っている地点がないかどうかを確認するのは、砲兵将校の重要な役目なのです。

もしも敵の盤内砲陣地(らしきもの)を発見できたなら、遅延時間0.1か0.2で砲撃すべきです。なぜ遅延時間が0.1か0.2なのか?まず敵ターン開始前の第一弾幕で着弾することにより、敵に回復(Rally)作業を強います。この時点で回復に失敗した敵火砲は砲撃不能になりますが、運良く回復に成功した場合は砲撃を開始しようとするでしょう。しかし、さらに敵ターン終了後の第二弾幕で着弾すれば、兵員に損害がでたりして再び砲撃不能になる可能性があるのです。

この「二段階砲撃」の効果をさらに高めるならば、火砲2ユニットを使ってそれぞれ遅延時間0.0と0.3で砲撃させれば完璧です。ただしこの砲撃方法は効果も大きいですが、自軍砲兵の弾薬消費もバカになりません。そこで、砲兵戦力に余裕がない場合は、火砲1ユニットで第一・第二弾幕ともに着弾するように、遅延時間を0.1か0.2にするのがオススメなのです。

対砲兵射撃では、敵より先に砲撃を加えることも重要ですが、一回砲撃しただけでは大した効果はありません。やがて敵は回復し自由に移動や砲撃ができるようになるのです。対砲兵射撃の目的は、できるだけ長い間敵砲兵に抑圧を与え、兵員や弾薬などの砲兵資源を直接・間接的に奪うことなのです。

この目的を達するには、狭い範囲に最低限の砲弾を毎ターン着弾させ続けるのがベストでしょう。この任務に適しているのは、75〜105mmクラスの盤外砲です。初回だけ他の砲兵と協同して多大な抑圧を与えれば、敵砲兵は移動も砲撃も不能になります。二回目以降は上述したように使用砲門を制限して弾薬消費量を抑えれば、20ターン程度は敵砲兵を制圧し続けられるのです。

しかし敵砲兵が機動力を持っている場合、対砲兵射撃はぐっと難しくなります。対処法は偵察を強化して、敵を発見次第遅延時間0.0〜0.2で着弾させてまず足を止めるしかありません。また、砲撃のタイミングとあわせて他の火砲で自陣内に偽煙幕を張ればさらに発見は難しくなります。逆に考えれば、こういった方法で敵からの対砲兵射撃のリスクも減らすことができるのです。

優先目標

砲兵にとっての優先目標は何か?もちろん状況によっても異なりますが、通常は「盤内砲兵」「FO」「HQ」「その他ソフトスキンの戦闘部隊」という順番になるでしょう。

敵の盤内砲兵を制圧するメリットは上述の通りですが、敵FOやHQもまた盤内砲兵と同様に重要です。特にC&Cがオンの場合、FOやHQがいなければ、遅延時間の操作や連絡の維持などの面で砲兵の運用が非常に難しくなります。一部FOやHQは敵陣後方に配置するのが普通なので発見が難しいのですが、C&Cがオンの場合は盤内砲兵・FO・HQの連絡を維持するために、この三者を3HEX以内に配置するのがセオリーだという点を覚えておきましょう。

つまり、盤内砲兵を発見できれば、その3HEX以内にFOとHQがいる確率が高いのです。FOやHQを抑圧できれば、連絡不能が多発し砲撃要請さえ難しくなります。さらにどちらも価値が高く、HQを殲滅できれば勝利はぐっと近づきます。この点からも、敵の盤内砲兵陣地を叩いておくことは重要なのです。

砲兵の優先目標の最後は、その他ソフトスキンの戦闘部隊です。これには、歩兵・砲兵タイプのユニットや、非・軽装甲(オープントップ含む)の車輌ユニットが含まれます。これらの中でも射程距離の長い直射砲兵ユニット(対戦車砲や歩兵砲)は、最優先目標になります。この直射するGunタイプの盤内砲は自軍地上部隊にとって脅威で、安全に排除するには何らかの砲兵支援が必要だからです。この場合、砲兵は「遮断射撃」や「制圧射撃」で自軍地上部隊の安全な接近を支援します。

また、非・軽装甲の車輌ユニットは密集しているほど絶好の標的になります。特に、ゲーム序盤の進撃時に敵輸送車輌の隊列を砲撃できれば、その後の戦力展開が著しく困難になるからです。「輸送ユニットは序盤で叩け」という原則を覚えておきましょう。

輸送車輌以外の車輌ユニットは、単独でいる限りわざわざ砲兵の標的にする価値はありませんが、強力な砲を備えたオープントップの車輌は例外です。車体装甲があってもオープントップ車輌は上からの攻撃(砲爆撃)には弱い点を突いて、迫撃砲でピンポイント砲撃するのがベストです。

最後に、最も砲兵が狙う機会の多いのは歩兵タイプのユニットです。歩兵ユニットは移動していたり開豁地にいる場合は非常に砲撃に弱い反面、険阻な地形に立てこもっている場合は少々の砲撃ではビクともしません。つまり、歩兵は状態によって最も砲撃に強かったり弱かったりするのです。

防御態勢にある敵歩兵を砲撃だけで壊滅させることは非常に難しいので、砲兵が歩兵を標的にする場合は、必ず地上部隊と協調しなければいけません。理想的な協調作戦は、敵に回復する暇を与えず第二弾幕で着弾するように「制圧射撃」を行い、その直後に地上部隊が突入して一掃するというものです。この場合の砲兵の役割は、敵歩兵に抑圧を与えて釘付け状態にしておくことで、それ以上の効果を砲兵に望むのは筋違いなのです。

以上挙げた砲兵の優先目標にならないのは、装甲が厚く固定戦闘室をもつ装甲車輌−つまり戦車です。砲撃で戦車を破壊できることはごく希で、ほとんどの場合はわずかな抑圧しか与えられません。その抑圧も数ターンで回復できるほどなので、費用対効果を考えると積極的な目標にはなり得ません。

戦車に対して最も効果的なのは航空機による爆撃ですが、航空機も使用できず地上部隊にも対処できないとなれば、砲撃支援が必要な場合もあります。しかし移動力も防御力も豊富な戦車に対しては「遮断射撃」も「制圧射撃」も一時的な効果しか持たないことを忘れてはいけません。

戦車相手に砲撃する場合は、迫撃砲でピンポイント砲撃しつつ大口径盤外砲を雨霰と降らすと効果的です。迫撃砲の直撃により戦車に最大の抑圧を与えると同時に、戦車の周辺にいるだろう敵歩兵の抑圧も狙います。移動中の歩兵は砲撃に弱く、随伴歩兵のいない戦車は無力なのです。