第二次大戦期の軍用機は、用途によって「戦闘機」と「爆撃機」に大別できます。前者は対空攻撃、後者は対地攻撃を主目的とします。SPWAWは地上部隊の戦闘に主眼をおいているので、登場するのは「爆撃機」だけです。
しかし一口に「爆撃機」といっても、"Stuka"と呼ばれ連合軍から恐れられたJu-87から、ドイツ諸都市を壊滅させたB-17までその役割はさまざまです。共通するのは、地上部隊には決してできないことを成し遂げる、これが航空兵の任務です。
航空機の種類
SPWAWに登場する航空機のクラスは、"Level Bombers"と"(Strike) Aircraft"の2つだけで、それぞれ「水平爆撃機」・「攻撃機」と訳しています。両者の運用法は全く異なるので、整理しておきましょう。ちなみに戦闘機も登場しますが、あくまで戦闘爆撃機としてしか使えず、航空機同士の空戦は発生しません。
水平爆撃機

SPWAWにおける水平爆撃機は、高々度を水平に飛びながら大量の爆弾を落とす大型爆撃機です。その役割は、一定範囲を制圧することで、具体的にはマップ横軸方向に6〜8HEXに渡って爆弾を連続投下します。地上部隊が前進する前に敵支配地域に絨毯爆撃を行う、という使い方をイメージしてください。
この爆撃は非常に強力で、うまく敵密集地を爆撃できれば歩兵なんぞは木っ端微塵、戦車でさえ抑圧急上昇は免れません。ただし、

水平爆撃機の爆撃時には爆弾投下音が聞こえるだけで、マップ上にユニットが表示されることはありません。"Bombers"と複数形になっている通り、登場ユニットはあらかじめ2機・4機・6機の編隊になっています。右上図は日本軍の中爆6機編隊のデータです。
ほとんどの主要国は"Medium"(中型)の水平爆撃機をもっていますが、米軍などはさらに重爆も持っています。右下図は米軍重爆のデータですが、上図と比べるとその装備の違いに愕然と・・。
攻撃機

上記"Level Bombers"以外の航空機は、全て"(Strike) Aircraft"クラスに分類されます。
この「攻撃機」クラスには、軽爆撃機や急降下爆撃機、対地攻撃仕様の戦闘機(戦闘爆撃機)が含まれます。
水平爆撃機の任務が面を制圧することであるとすれば、攻撃機の任務は点を破壊すること、つまり敵ユニットを破壊することです。装備によっては歩兵を粉砕することも、ピンポイントで敵戦車を狙い撃ちすることも可能です。

このクラスの航空機は個別の機体名が表示され、爆撃時には一時的にマップ上に表示されます。
「攻撃機」には豊富なユニットがあり、各機体の装備する兵器も多種多様です。機銃や小型爆弾しか装備していないものから、ロケット弾やナパーム弾を装備するものまであります。
右上図は大戦初期日本海軍の誇る「九九式艦上爆撃機」、右下図は37mm対戦車砲を装備したタンクバスター「大砲鳥」ことドイツ軍の「Ju 87G-1」です。
「攻撃機」クラスのユニットデータには、"Durability"と"Armor"という独自の項目があります。前者は機体の耐久性を示し、後者は機体下部の装甲の有無を示します。両項目とも値が大きいほど、少々の命中弾に耐え墜落しにくくなります。
また、"Armor"値が"1"のユニットは、「地上支援専門機(Ground Support Specialist)」扱いになり、損傷(Damage)を受けない限り複数回の攻撃が可能です。"Armor"値が"0"のユニットは、一回飛行するごとにモラルチェックを受け、失敗すると基地に帰投する(=以降の攻撃は不可能)ことになります。
水平爆撃機の運用
水平爆撃機は、攻撃機とは異なりゲーム中の爆撃要請ができません。せっかくユニットを購入しても、配置画面で爆撃要請するのを忘れると役立たずのままお終いです。実際には使う機会の少ないユニットですが、使い方を覚えておきましょう。
事前爆撃
何度も繰り返しますが、
- まず水平爆撃機を購入して、配置画面に進みます。
- 任意のユニットを選択した状態で"Bombardment"ボタン
を押すか、"B"キーで砲撃要請画面を開きます。
- 最初に爆撃したい地点をマップ上でクリックし、次に砲撃アイコンを押して終わりです。
・・・ってこれじゃあ普通の砲撃要請と同じですね。この状態でゲームを開始すると、0ターン目(先攻プレイヤーの第1ターン開始直前)に爆撃がおこなわれます。とりあえず、これが最低限必要な基本操作です。
この事前爆撃(0ターン爆撃)では、敵の最前線陣地(があると思われる地点)や敵戦線後方の盤内砲陣地(があると思われる地点)を狙うのがセオリーです。つまり、ゲーム開始直後に地上部隊が敵第一線をスピーディに粉砕したり、敵の砲兵を序盤で無力化するのが狙いです。
しかしこの運用法には限界があります。仮に爆撃が敵密集地に運良く命中したとしても、数ターンすれば敵の抑圧は回復してしまうのです。0ターン目で敵陣奥地を爆撃しても、実際に地上部隊が前進して交戦を開始する頃には、敵は万全の状態に戻っているかもしれません。
そこで思いつくのは、0ターン目では敵の最前線を、2ターン目ではさらに奥を爆撃というように、地上部隊の進撃速度を想定して時間差で爆撃していくことです。そのためには、爆撃を実施したいターン数を指定してやる必要があります。
ETAの指定

爆撃ターン数を指定するには、
- 砲撃要請画面を開き、砲撃したい地点をクリックした状態で"T"キーを押します。
- 図のように"Enter turn to enter (0 to 40)"というメッセージがでるので、爆撃したいターン数を入力します。
- このETA(Estimated Time of Arrival;到達予定時刻)を指定した後、砲撃アイコンを押して手順は終了です。
このようにETAを指定してやれば、地上部隊の進撃にあわせてゲーム途中で敵の後方陣地を爆撃することも可能です。
しかし当然ながら、当初予想したように自軍地上部隊が進撃できるかどうかはわかりません。地上部隊の進撃が予定より遅ければせっかくの爆撃も無駄になり、逆に早すぎればモロに誤爆する可能性もあるのです。
このようにETAを指定した爆撃は非常に扱いにくいため、ゲームとしてはあまり使えない機能でしょう。しかし、現実の戦闘をシミュレートするという観点にたてば、実に魅力的なルールです。地上軍が空軍部隊に爆撃を要請するには事前の調整が必要で、戦闘が開始してしまえば、前線部隊は誤爆の危険性に怯えつつ予定に従って行動するしかないのです。
しかし幸いなことに、SPWAWでは実際に爆撃が行われるまでは、爆撃命令を取り消すことが可能です。もちろん一度取り消してしまえば、再度爆撃要請することはできません。つまり爆撃機を購入したこと自体が無駄になっていまいます。
爆撃目標と精度

右上図は、6機編隊の中爆隊2つに爆撃目標を指定したところです。
爆撃目標としては、敵ユニットが密集していそうな勝利目標(VH)付近を狙うのがセオリーですが、橋梁や建物などの重要地形を目標にするのも有効です。
爆撃により建物を倒壊させれば建物内の敵は大打撃を受け、橋梁を破壊することで敵の進撃を大幅に遅らせることができます。
水平爆撃はマップX軸に平行に6〜8Hex連続して爆撃が行われるのが特徴です。
爆撃効果(抑圧)は、着弾した隣接HEXにも及ぶので、最低でも6×3+前後2=20HEXの範囲に影響を与えます。複数の爆撃目標を指定する場合は、この特徴をいかして図のように上下2HEXの間隔で指定すると効果的です。

しかし実際に爆撃してみると・・右図のようになりました。赤線は爆撃効果がある地点を示しています。
このように、ほとんどの場合は予定どおりにいきませんが(!)、高々度からの爆撃なんてこの程度の精度だと納得しましょう。むしろ、赤線内の広大な範囲が制圧できたので、万々歳だと思わなければなりません。
この例からもわかる通り、水平爆撃には常に誤爆の危険が伴います。地上部隊と爆撃目標地点との間隔は、1〜2ターン分の移動距離くらいの余裕を見た方がよいでしょう。そして精度の悪さを見越して、複数の目標を平行に設置しておくことも必要です。
強力な水平爆撃を有効に使うのは非常に難しいですが、ETAを指定した爆撃が見事に決まったときの爽快感は何とも言えないものがあります。
攻撃機の運用
攻撃機はゲーム中に照準指定でき、一時的にはユニットが表示されるので爆撃の様子も見ることができます。爆撃要請の方法は水平爆撃機とほぼ同じですが、決定的に違う点もいくつかあります。特徴をつかんで、有効に利用しましょう。
進入・退出経路

攻撃機の爆撃要請手順が火砲や水平爆撃機と唯一異なるのは、
この指定は、基本的に攻撃機1ユニットづつ個別に行う必要がありますが、まったく同じ進入・退出地点を連続して指定したい場合は、特に指定する必要はありません。
進入・退出経路は攻撃結果に大きく影響します。航空攻撃でも盤外火砲の砲撃と同じく照準地点を指定しますが、必ずしもその照準地点に対して爆撃を行うとは限りません。
具体的に言うと、攻撃機は指定された進入経路から照準地点めがけて飛行し、照準地点付近にいる目ぼしい敵ユニットを発見すると、そのユニットに勝手に照準を定めて攻撃をおこない、退出経路から離脱するのです。
また、攻撃機は飛行経路上に存在する敵を発見することもあります。しかし経路によっては全く敵を発見できなかったり、敵を発見しても攻撃する対象が異なる可能性もあります。飛行経路をうまく指定すれば、敵を側背面から攻撃したり、敵の対空兵器を避けて飛行することも可能です。
標的選択
上述のとおり、攻撃機は指定した照準に正確には従わないので、必ずしも思い通りの攻撃を期待することはできません。プレイヤーは、飛行経路上で発見した敵を攻撃しろ!と命令するだけで、実際に何を攻撃するかはやってみるまでわからないのです。
さらに攻撃機の策敵率は低く設定されているので発見できる敵は限られています。具体的に言えば、車輌、サイズの大きなユニット、移動中のユニット、抑圧の高いユニットなどです。
そして発見した敵の中で最も価値(Value)の高いもの=値段の高いものに攻撃を仕掛けようとします。つまり攻撃機は、指定した照準付近で発見した戦車やトラックなどの車輌ユニットに攻撃を仕掛ける確率が高く、歩兵系のユニットを攻撃目標にする確率はかなり低いということです。
通常、攻撃機は機銃と爆弾を装備しています。搭載兵器の種類と数は多様で攻撃力もさまざまですが、一般に爆弾は強力な歩兵殺傷力をもっています。たとえ敵の歩兵部隊が塹壕化(Entrenched)していたとしても、爆弾投下地点から2HEX以内にいる場合は、ほぼ間違いなく大量の死傷者が発生し、生き残っている歩兵にも大量の抑圧を与えます。
また、戦車などの装甲標的や堅固な建造物に対しても、最も装甲の薄い頂部に命中する可能性が高いため非常に効果的です。小口径の機銃だけでは、戦車そのものを破壊するのは難しいですが、各システムに損害を与えることはできます。また、機銃でも命中さえすれば、乗員が脱出してしまう可能性もあり、そうなれば続く爆撃で乗員が全滅することはまず確実です。
したがって、
攻撃の特徴
攻撃機の攻撃手順は次のように分けることができます。
- まず進入地点から飛来して照準地点付近で勝手に攻撃目標を決定し、急降下を始めます。
- 次に、攻撃目標からやや離れた地点で機銃などの射程の長い兵器を発砲します。
- 最後に、攻撃目標上空地点に到達すると、装備している数にあわせて爆弾を投下します。
- 爆弾投下が終わると上昇しながら退出地点に向かいます。
爆弾投下地点から2HEXの範囲にいるユニットには何らかの損害(死傷・抑圧)が発生します。したがって、敵ユニットが密集している地点に爆弾を投下できれば、非常に大きな被害を一気に与えられるのです。
しかし逆に考えれば、この範囲内に自軍ユニットがいれば被害が及んでしまうことになります。これが近接航空支援(Close Air Support;CAS)の落とし穴です。
あくまで攻撃目標が何になるのかはわからないので正確な予測は不可能ですが、
上述の通り、全ての攻撃機は損害を受けた時点で基地に帰投し、以降の攻撃が不可能になります。
基地に帰投するまでは、搭載兵器が使用できる限り何回でも飛行できますが、ほとんどの攻撃機は一回の飛行で全ての爆弾を投下してしまいます。したがって多くの場合、二回目以降の飛行は機銃攻撃だけになってしまう点に注意しましょう。
では実際に攻撃機を使ってみましょう。
航空演習
- ダウンロードページから航空演習をダウンロードしてください。
- ファイルを解凍し、付属のテキストに従って演習を開始してください。
防空戦闘
演習シナリオで示したとおり、航空攻撃はかなりの破壊力を秘めています。そのため、対人戦では何らかの使用制限を設けるのが普通ですが、AIは遠慮無く使用してきます。特にAIが米・英を担当する場合、大量の航空機を1ターンに全て使用する「集中爆撃」作戦を多用してきます。その破壊力は言うまでもなく強烈です。
航空兵としては、どうすれば敵の航空攻撃を防ぐことができるかも知っておきましょう。
航空攻撃に対処するアプローチとしては、2つの方向性が考えられます。一つは積極的に迎撃を狙う方法、もう一つは損害を抑えることに重点を置く方法です。
積極的に迎撃する場合は、専門の対空ユニット(AA,FLAK)を配備する必要があります。対空兵器には10mmクラスの小口径機銃から90mmクラスの大口径砲までありますが、一般に小口径で連射能力が高いものの方が有効だとされています。
大口径砲は一発でも命中すれば撃墜可能ですが、連射もきかず何しろ当たらないからです。それに対し小口径の機銃は、1ターンで複数の航空攻撃が行われても対応できるくらいの連射力があります。ただし一発命中したくらいでは撃墜はできませんが、航空機は損傷を受けると二度と飛行てきなくなるという点を狙います。
具体的には、これらの対空ユニットを自軍部隊を見渡せる視界の開けた地点に均等かつ隙間なく配置し、できるだけ破壊力を損なわないために臨機射撃を行う距離を20HEX以内に設定します。
・・といっても実際にはそんなに都合の良い場所に大量の対空部隊を配置するのは不可能に近いので、他の手段もあわせて補うことになります。
損害を抑えることに重点を置く方法としては、航空攻撃の標的になりそうな味方ユニットを隠すという点に尽きます。例えば盤外砲を使って自軍ユニット周辺に煙幕の壁を作る、森林などの地形を利用して移動するなどです。
これだけでも敵航空機の索敵力は大きく低下します。ちなみに対空ユニットは航空機への臨機射撃の際には煙幕の存在を無視できるので、煙幕越しに一方的に射撃できる可能性もあります。
さらに用心するなら、高価な戦車などの周辺に「おとり」として安い車輌ユニットを配置しておくという方法も考えられます。同時に、