<おしらせ1>
またまた、いつの間にか掲示板がダウンしていたようですね。ログを見ると、およそ2年半ぶりの改修です。
この間、何度かメールでご要望があったようですが、この度ようやく重い腰を上げて掲示板を修復いたしました。
管理不行き届きで申し訳ありません。

<おしらせ2>
サイト管理を楽にするために体裁を変更しています。
本サイトのメインコンテンツであったSPWAWの解説記事は以下からアクセス可能です。
SPWAW解説記事一覧


<5分で調べたSPWAW界の近況>

びっくりしたことーその1「Depot リニューアル」
SPWAW界を長年牽引してきた世界最大のファンサイトSPWAW DEPOTが、昨年の4月に閉鎖、13年の歴史に幕を下ろしたようです。
と同時にDepotメンバーの一人 Falconさんが新たなサイトSPWAW DEPOTを立ち上げたようですね(笑)。
まあ、中心メンバーが入れ替わって、こじんまりした感はありますが、実質的にはリニューアルって感じですかね。
旧DEPOTの遺産は相続されているようで、今後ともがんばって欲しいところです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawdepot/

びっくりしたことーその2「砲撃要請画面ラグ解消」
マルチコアCPUが普及した頃でしょうか、ある程度以上のスペックのPCでは、砲撃要請画面で挙動がおかしくなる不具合がありましたね。
それが原因でSPWAWを離れた・・という方もおられたような記憶がありますが、どうやらこの不具合、ついに修正されたようです。
これもDEPOTメンバーのおかげみたいですね。Matrix Games 公認(というか黙認ですね)のもと 、本体ファイル MECH.EXE をいじることに成功したようです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawde ... -t277.html


というわけで、この機会にもう一度SPWAWをやってみようかな、と思われた方は次のリンクからダウンロードをどうぞ。
DEPOTで全てのファイルのホスティングも始めたようです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawde ... es-t6.html

Enh 7th Armoured "Desert Rats" 総評

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Enh 7th Armoured "Desert Rats" 総評

Post by Nor » 2008.Apr.05(Sat) 18:50

Enh 7th Armoured "Desert Rats" 総評


【キャンペーン結果】

プレイVersion    Ver8.403 + Enhanced 2008
設定        Spotting 80%, Art vs soft 120%
総プレイ時間    約48時間
シナリオ数     16(戦闘シナリオは13)
キャンペーンスコア MV(DV9:MV2:Draw2)



【キャンペーン概要】

「章」単位でリリースされる予定の本キャンペーン。この第一章は1936年のパレスチナ暴動から1941年初頭のベダ・フォムの戦いまでを扱っています。本章で敵となるのはアラブ・ゲリラ(というか暴徒)とイタリア軍で、分量的にはだいたい半々になっており、前半はアラブ暴徒と、後半はイタリア軍と戦うことになります。

キャンペーンの主役はイギリス軍第7機甲師団「デザートラット」ですが、この師団が誕生するのは1940年のことです。なのになぜ1936年から始まるの?というのは当然の疑問ですが、この点が本キャンペーンが「指揮部隊を選べる」システムを採用していることに繋がってきます。

この第一章では、後に第7機甲師団の一部隊となる第11軽騎兵連隊(11th Hussar Regiment)を指揮するところから始まります。その後、分岐点が二回あり、プレイヤーは第7軽騎兵連隊(7th Hussar Regiment)や第7戦車連隊(7th Royal Tank Regiment)のいずれかを指揮することができるようになります。この3部隊のどれを選ぶかはプレイヤーの自由で、最初から最後まで同じ部隊を指揮することも、どんどん変更していくことも可能です。

この3部隊に共通するのは、全て第7機甲師団の一員であることです。つまり、このキャンペーンでは、第7機甲師団に所属する3つの連隊のいずれかを選んで戦いを進めていく、という独特なシステムを採用しているのです。おそらくこれは、Depotの前作キャンペーン"Das Reich"リリース時に、「一師団の戦いを再現する場合に最適なコア編成とはどんなものか?」という疑問が挙がったからでしょう。

確かに、多様な部隊を集めた一個師団の典型的な編成を再現するのは難しい。ならば基本単位をもう少し小さくして連隊ならばどうか?それも典型的な編成を持つ連隊をいくつか選べるようにしてはどうか?と、おそらくこんな感じで、このシステムが考えられたのだと推察します(推察かい!)。

実際にプレイヤーが操作するのは中隊規模の部隊で、第11軽騎兵ならば装甲車中隊、第7軽騎兵ならば巡航戦車+軽戦車の混成中隊、第7戦車連隊ならばマチルダ戦車中隊という、この時期の第7機甲師団に特徴的な部隊を選択可能にすることで、コア編成にリアリティを与えようとしているようです。


<コア編成とアップグレード制限の試み>

こうしたリアル志向のために、本キャンペーンでは、コア部隊の編成ユニットは完全指定されています。最初の編成時は、絶対に司令部輸送車とロールス・ロイス装甲車中隊を選ぶことになり、キャンペーン中に二回設けられている「指揮部隊の変更ポイント」でも、どのユニットに変更すべきかが細かく指定されています。また、この時以外のアップグレードはほとんど許可されていません。

つまり、このキャンペーンは通常とは違い、プレイヤーがコア編成やアップグレードについてアレコレ悩む余地は一切ないのです。この特殊な仕様が、一般ウケするものかというと・・・やはり敬遠する人の方が多いと思われます。キャンペーンはシナリオと違って、自由にコア部隊を編成し、アップグレードしながら育てていくのが一番の楽しみだ、と考える人はやはり多いでしょうから。

しかし、あまりに自由なコア編成は、作者の意図するキャンペーン進行を阻害する可能性があることも事実です。作者の想定とかけ離れたコア編成では、キャンペーン全体がまるで面白くなくなるということです。それゆえ、これまでのキャンペーンでは、「コア部隊の推奨編成例」を提示することで、作者の意図が反映できる範囲で自由なコア編成を許容するという折衷策がとられることが多かったのでしょう。

本作では、この考えを作者よりに一歩進めて、完全に作者の意図するようにキャンペーンを進めてもらうために、コア編成とアップグレードの自由を制限したとみることができるでしょう。そしてこれは、徹底したリアル志向で知られている制作チーム・リーダーの FlashfyreSP 氏の強い意向であると思われます。

この方向性の是非は人によって意見の分かれるところでしょうが、個人的にはアリだと思います。何よりも、史実にコダワりたい作者は、状況・マップ・戦力が完全に固定できるシナリオを作るしかないとともに、史実重視のプレイヤーはシナリオをプレイするしかない、という固定観念を一蹴する新しい試みであることが評価できるでしょう。

さらには、従来はシナリオでのみ鮮明に打ち出されてきた「プレイヤーが作者に挑戦する」「作者の出したパズルを如何に上手く解くか」という対AI戦ならではの面白さを、キャンペーンにまで拡大したともいえるでしょう。エラそうに言うなら、本作で採用したコア編成とアップグレードの完全制限は、今後のキャンペーンのあり方に一石を投じる試みといえるでしょう。


<章立てシステムの試み>

本作は「デザート・ラット」キャンペーン第一章と銘打たれており、いずれ第二章がリリースされることになっています。第二章では、いよいよドイツ・アフリカ軍団との戦闘が中心になるので、おそらくこの第一章よりは人気がでるでしょう。

長編キャンペーンを出来たところまでとりあえずリリースするという手法は、すでに Russian Steel で用いられていますが、RSでは新しいバージョンがリリースされたら、また一番最初からやり直さなければならないというのが致命的な欠点でした。

本キャンペーンでは、章の最終シナリオでセーブしておくことで、新たな章がリリースされても、最初からやり直すことなく、以前のセーブデータをそのまま持ち越すことができるようになっている・・・というのが宣伝文句でした。これは間違いなく誰もが嬉しい新システムでしょう。

ところがところが、私が今回選択した第7戦車連隊の最終シナリオでは、「第7戦車連隊のキャンペーンはこの戦闘で終了します。この部隊は第二章に持ち越せないので、ゲームをセーブする必要はありません。」なんていう但し書きがあるではありませんかっ!!こりゃヒドい!!選択部隊によって、持ち越せるものと持ち越せないものがあるなら、最初から教えてくれなきゃ!!

というわけで、少なくとも2回目の部隊選択で第7戦車連隊を選んでしまうと、セーブデータを第二章に持ち越せないことがわかったので、これからやってみようという方は気をつけてください。


<シナリオ概要>

上述のように、本キャンペーンはリアル志向・史実志向のもとに作られているので、登場する部隊・兵器はもちろん、マップもできる限り実際の地図から起こし、各シナリオも史実の戦闘に基づいたものになっています。いわゆる完全な仮想シナリオは一つもありません。

また、各シナリオのブリーフィング・テキストは、実際の作戦命令書や電文を模した形式で書かれており、シナリオ終了後のテキストは、上級司令部からの簡単なメッセージと、前線の兵士が祖国の家族や恋人にあてた手紙という形式で統一されています。こういった細部でも、リアルな雰囲気作りにも気を配っているようです。

肝心のシナリオの内容ですが、率直な印象としては、完成度が高いというか細部まで相当細かく研究されているという感じです。一言でいうと、手堅い・巧いということですね。具体的にいえば、戦力バランスの破綻がない大シナリオ、緊張感を損なわない適切なターン数、統一感とリアリティのある大マップ、説得力のある敵ユニットの配置や挙動、などの要素が挙げられるでしょう。また、コア部隊は装甲車両のみという制限があるにも関わらず、バラエティに富んだシナリオが多いのも特徴です。

ただし、これらはシナリオ作成者の視点から見て「良く出来ている」という意味であり、純粋にプレイする立場から見ると、また違った印象を持つかもしれません。はっきり言えば、「リアルかもしれないけど面白くない」と思われかねない要素もあるような気がします。リアリティとプレイアビリティのどちらを優先するかという問題は、シナリオ作成者には常に悩ましい問題ですが、このキャンペーンでは「できるだけ両立させたいが、いざとなればリアリティ優先」という立場をとっているようです。

具体的な例で言えば、終盤のイタリア軍陣地攻略三連戦が好例でしょう。補給のないまま転戦を続けたマチルダ隊を再現するために、この三シナリオではユニットの修理もアップグレードも禁じられます。これはプレイヤーにとって非常に挑戦し甲斐のある制限と考えることもできますが、仮にコア部隊が激しく損害を受けると、プレイヤーのやる気は著しく低下してゲームを投げ出す事態さえ予想されます。それでも、制作陣はこのようなリスクを承知で、あえてこうした制限を設けたのでしょう。

そういう意味では、リアリティよりも面白さやプレイしやすさを重視するプレイヤーにとっては、つらいシナリオが多いかもしれません。振り返ってみても、「あ〜気持ちよかった!」と思うような爽快なシナリオは少なかった気がします。

また、AUX戦力は歩兵部隊が中心になることが多く、コア部隊の装甲車両中隊がそれを支援する、という作戦が一般的で、そのために、攻撃の大部分を担当して損害が多くなるのはAUX歩兵部隊です。コアの温存という意味では嬉しくもあるのですが、どうせAUXだから・・ということで、歩兵の人的損耗に無関心になりやすく、結果としても作戦失敗に繋がりやすいという点には要注意でしょう。個人的には、コアに歩兵がいないともうひとつ燃えないので、最初から分かっていたことながら、やはりそこは最後まで不満でした。


<難易度>

今回は、Mr.Fix による経験・士気値修正を適用しながらプレイしたという前提での感想ですが・・・

リアル志向という要素とあいまって、どのシナリオもかなり難易度が高めに設定されている印象を受けました。「もうね、全然楽勝!」というシナリオは少なく、それよりも「これって・・・どうやってDV取るの?」と悩むシナリオの方が多かったのは確かです。

概して言えば、全般的な作戦から、砲兵・歩兵・戦車の協同戦術、さらには戦車小隊や歩兵小隊の運用にまで至る、戦闘のあらゆる要素に気を配らないとスンナリとは勝てないように作ってあるなという印象を受けました。

例えば、イタリア戦で頻出する陣地攻略戦では、英軍歩兵小隊の多くに軽迫撃砲班が付属しています。これらのシナリオでは、もちろん野砲中隊なども用意されているものの、全戦線にいつでも支援を提供できるほどではなく、接近戦になるとこれらの大口径砲は使えません。したがって、各歩兵小隊が目前の敵塹壕線を突破するには、どうしても軽迫を有効に使わざるを得なくなるような状況に追い込まれます。

軽迫だけでなく、機関銃班や対戦車砲、さらにはブレン・キャリアといった実に地味なユニットまでフル活用してはじめて道が開けるというバランスは、シナリオを一回でも作ったものにとっては驚嘆に値する技術なのですが、このような細かい芸が一般的なプレイヤーの理解と共感を得られるかというと・・・はなはだ疑問ではあります。

しかし、少なくとも私は、プレイしながら「あ〜、こりゃ見事に作者の思惑通りの展開になってるな〜」と感じることが多々ありました。あらゆるところに散りばめられている作者の意図を感じ取って、その上を行こうとしたり裏を取ろうとしたりする一人駆け引きが、私にとってはこのキャンペーンの面白さの源泉だったといえるかもしれません。

ま、そんなことはとにかく、このキャンペーンの難易度は並以上なのは間違いないでしょう。SPWAWをはじめたばかりという方にはあまりお勧めできません。一通りの技術を習得して、もっと難しいヤツがやりたい!と望む中堅・ベテラン指揮官にはお勧めです。



【ユニット使用感想】

おそらくほとんどの人にとって使う機会の少ないイギリス軍。今回はさらに、リリースされたばかりの Enhanced Mod 2008 を使用したので、どのユニットにどれくらいの能力があるのかさっぱりわからない状態でのプレイでした。

指定されているコア編成は、装甲車中隊と司令部用輸送車だけですが、その全てが Recon 能力を持っているので、C&Cオンでも移動目標の指定に煩わされることはありません。アップグレードしても偵察能力は最後まで引き継がれるので、この点は非常にプレイしやすかったです。


・ロールス・ロイス装甲車(Rolls-Royce AC)
第11軽騎兵連隊の主戦力。ゲーム前半のアラブ暴徒戦は、この装甲車で戦いぬくことになります。武装はヴィッカーズ機関銃が1挺のみ。装甲はだいたい9mm前後。ライフルならほとんど問題になりませんが、それ以上の武器に対しては破壊される危険性が常にあります。移動力40という装甲車ならではの機動力をいかした戦術をとれるかどうかが生死の分かれ目かもしれません。

・クロスリー装甲車(Crossley AC)
最初に購入するコア装甲中隊に、なぜか2両だけ含まれる軽装甲車。上記ロールス・ロイスと同様に、前半を戦い抜くことになります。性能はほとんどロールス・ロイスと変わりませんが、装甲は全て8mm、移動力36とこの二点は少しだけ劣ります。そして敵はこの弱点を知っているのか、アラブ・ゲリラは徹底的にこのクロスリーを集中攻撃してきます。

・ハンバー・スナイプ(Humber Snipe)
名前だけは格好良い司令部専用車。クラス分類は偵察APCになります。武装はライフルのみで装甲はもちろん皆無。移動力54はコア部隊の中で常に最高移動力を誇ります。もう本当にタダの車なので、戦闘での使い道は無し。あえて言えば、AUXで登場する徒歩FOなどに貸してあげたりすると、ちっとは作戦の幅が広がるかもしれません。

・ヴィッカーズ軽戦車 Mk.VI B(Vickers VI B)
イタリア戦開始と同時に変更可能な第7軽騎兵連隊の装備。砲塔に.50機銃、同軸機銃は7.92mm。装甲も12mm平均くらい、移動力34と、実に軽戦車らしいボチボチな性能。ただし、これまでの装甲車と違って、蹂躙攻撃(ALT+ O)が使用可能なのは大きな利点です。イタリア軍のL3豆戦車には勝てますが、M11系列の中戦車が出てくると不利。対歩兵・対軽車両に徹するのが長生きのコツでしょうか。

・巡航戦車 Mk.I A9(Cruiser I A9)
第7軽騎兵連隊の主戦力。主武装にかの有名な2ポンド砲を装備しているのが最大の特徴。しかし、巡航戦車と言うわりには移動力24とイマイチの機動性で、2ポンド砲の存在を除けば武装・装甲ともにヴィッカーズ軽戦車に毛が生えた程度の性能です。何より、2ポンド砲はAP弾しか装填できず、対ソフトスキンには一切使えないのが最重要ポイント。これは後のマチルダにも共通する問題です。とはいえ、この時期、敵の中戦車を簡単に破壊できるのはコイツだけなので充分役には立ちますが。

・マチルダ歩兵戦車 Mk.II(Matilda II)
コンパス作戦開始と同時に選択可能な第7戦車連隊の主戦力。全周70mm以上の装甲を誇り、距離さえ保てばほとんどの大口径砲の攻撃を跳ね返せますが、接近しすぎると50mmクラスの対戦車砲にでも抜かれてしまいます。武装は2ポンド砲と7.92mm同軸機銃。つまり対ソフトスキンにはショボイ機銃しか使えません。歩兵支援任務が多いこのキャンペーンでは、この点が深刻な悩みになります。また、歩兵に随伴することに徹するならば、移動力14という鈍足ぶりはあまり気になりませんが、開豁地にある敵の大口径砲陣地に突撃する時などは、この鈍足のせいで何度も止まらねばならず、味方砲兵の援護がないと深刻な被害が出ます(泣)。


以上が、私がコア部隊として使ったユニットの全てです。振り返ってみれば、たった6種類しか使ってないんですねえ。このキャンペーンでは、戦車戦だけが任務になることはあまりなく、ほとんどが歩兵を支援せよという任務なので、対歩兵(ソフトスキン)性能に優れたユニットが要求されます。しかし、巡航戦車やマチルダは2ポンド砲のせいで(!)、この面での能力は低いと言い切ってよい存在です。実は、上記ユニットの中で一番対歩兵に役立つのは、軽戦車かもしれません。

以下、AUXとして登場したユニットで気になったものを紹介します。


・ブレン・キャリア(Bren Carrier)
ブレン・ガン・キャリアとも呼ばれるように、.303ブレン軽機銃を搭載した装甲兵員輸送車。全周12mm以上の装甲を持ち、装軌車両なので蹂躙攻撃も可能。輸送力108というのがちょっと中途半端で、10名分隊が多い歩兵小隊は乗せられないってのが悩みではありますが、損害がではじめた歩兵小隊を乗せて一気に移動するには実に最適。登場シナリオも多いので、このユニットを活躍させるテクニックは習得必須です。ボイズ対戦車銃を搭載したATバージョンなら、敵戦車やトーチカをやっつけることさえ可能です。いざとなれば、コア部隊への集中攻撃を避ける囮ユニットとしても役立ちます。

・AOPキャリア(AOP Carrier)
聞きなれない名前ですが、AOPとは Armoured Observation Post の略で、あえて訳すなら装甲監視哨といった意味でしょうか。実体は装甲車両型のFOユニットです。12mm装甲とブレン機銃を持っているので前線に進出することも可能で、ささやかに歩兵支援しながら砲撃要請も行える地味ながらなかなか便利なユニットです。

・長距離砂漠挺身隊(LRDG Team)
今回のプレイではわずか1シナリオにしか登場しませんでしたが、個人的に最も愛する英軍ユニット。いわゆる特殊部隊で、クラス分類はゲリラ部隊になります。ライフル・軽機関銃・爆薬・グレネードと、この時期の英軍ユニットには珍しく4つの武装スロットが全て埋まる装備を持ち、もちろん経験・士気値も優秀なので、このシナリオに登場する歩兵では最高の能力を持ちます。

・モリス1.5tトラックLRDG仕様(Morris 15 LRDG)
一般にはデザート・シボレーとして知られるLRDG仕様のトラック。なぜ有名なシボレー製じゃなくドマイナーなモリス製をOOBに入れたのかは不明です。名称はともかく、ヴィッカーズ製とルイス製の対空機銃2挺とボイズ対戦車銃まで装備する万能車。トラックなので装甲こそないものの、強力な武装で豆戦車くらいなら単独で相手にできます。

・ANZAC兵
コモンウェルスの一員として参戦したオーストラリアやニュージーランドの兵士は、本国の「トミー」よりも勇猛果敢な兵士として知られ、特に「オージー」はこのキャンペーンでもかなり優秀な歩兵として扱われています。といっても、能力を過信すると痛い目に遭うような厳しいシナリオでのみ登場します(笑)。

・インド兵
アンザック軍団とはちょうど逆の扱いになるのがインド兵。インド自体にはグルカ兵やシーク兵など優秀なユニットも存在しますが、このキャンペーンに登場するのは、装備も錬度も不十分なセポイ兵ばかりです。デフォルトOOBの装備をさらに弱体化してあることが多く、近距離戦用の装備しか持ってないこともあります。しかし、この典型的なお荷物ユニットを活躍させないと勝てないシナリオもあります。



【 Mr.Fix 使用感想】

今回のプレイの目的は、経験・士気修正ツール "Mr.Fix" を使用しながらキャンペーンを戦い、このツールの効果がどんなものかを実際に体験してみることでした。"Mr.Fix" の機能は大きく次の3つに分けられます。

1) 兵員損害があったユニットの経験・士気値の修正
2) ユニット特殊能力の強制維持
3) HQやFO死亡時に、適切な階級・技能を持つ後任指揮官を着任させる。

このうち、今回のプレイで実際に使用した機能は1番だけでした。ユニットの特殊能力が勝手に変更されることはなかったので2番の機能の出番はなく、また、HQが死亡することもなくFOはコアにいないので3番も使う機会はありませんでした。ただし、2番については、シナリオ移行時に特殊能力がおかしなことになっていないかを確認するのに、本ツールの表示情報が役立ちました。

"Mr.Fix"による経験・士気値修正の手順は、次の通りです。

1) シナリオ終了後にスコア画面でセーブする
2) キャンペーンテキストの指示に応じて修理やアップグレードを行う
3) 次のシナリオの配置画面でセーブする
4)一度ゲームを終了し、1と3のセーブデータを基に Mr.Fix による修正を行い、修正後のデータを新たなセーブデータとして保存する。


<分析結果と考察>

一つのシナリオを終えるたびに、上記の手順を行った結果、最終的に我がコア部隊の平均経験・士気値の推移は、添付グラフのようになりました。横軸はシナリオ面数、縦軸は経験・士気値です。このグラフを見ると、7〜8面と11〜12面で経験・士気値が大きく低下していることに気づきますが、ここはキャンペーンの分岐シナリオで、指揮部隊を変更して大幅なアップグレードを行ったところと一致します。

このキャンペーンでは、都合2回しか大きなアップグレードは行えないようになっているので、経験・士気値の大幅な下落もこの2回しか発生していません。しかし、一般的なキャンペーンで、もっと頻繁にアップグレードを繰り返すと、その分、平均経験・士気値の下落も頻繁に発生することは避けられないと考えられます。

また、このキャンペーンのコア部隊は、HQを除けば全て車両ユニットで、兵員損害が発生しにくい状況にあったことも考慮すべきでしょう。今回と異なり、歩兵ユニットを多く含むコア編成ならば、必ずといっていいほど兵員の損耗は毎シナリオ発生するはずなので、必然的に Mr.Fix による修正対象ユニットも増えるはずです。つまり、歩兵を多く含むコア編成のキャンペーンで Mr.Fix を使用すると、今回よりも一層厳しい経験・士気値の下落が発生するでしょう。

そもそも Mr.Fix 開発の目的は、長編キャンペーンでコア部隊が「スーパーエリート」になってしまわないように、兵員損害に応じて経験・士気値を低下させることで、プレイの緊張感を最後まで持続させることにありました。そして、この大目的については、少なくとも今回の使用に関しては、かなりの程度達成されているのではないかと思います。

Mr.Fix の修正方法では、全滅したユニット(車両なら乗員全滅)は常に、その年のデフォルト経験・士気値に戻されます。今回のシナリオは1936年から1940年にまたがっていますが、1939年以前のシナリオには1939年のデフォルト値が適用されます。したがって、実際に適用されるデフォルト経験・士気値は、1939年以前なら(55,70)1940年なら(59,70)でした。

つまり、仮に経験値が100を超えたユニットであろうと、全滅してしまえば絶対に経験値は50台にまで低下するわけで、これは私にとってかなりのプレッシャーになりました。ただし、残念ながら今回は車両ユニットしかなかったので、全滅しそうなユニットを大事に扱うといった配慮はあまり必要ありませんでした。歩兵がコアにいれば、そういった点を考慮して、たとえ一人でも兵士を残そうとするでしょうし、被害の大きいユニットは後方に下げるなど、よりリアルかつ緊張感のある対応を強いられるでしょう。

57から始まった経験の最高値は85、72から始まった士気の最高値は94でした。グラフの変動傾向とこれまでの経験から言えば、このキャンペーンを Mr.Fix を使わずに普通にプレイすると、10面目くらいで平均経験値は90を超えてしまうでしょう。

個人的な感覚では、一般的なキャンペーンでは経験値が90後半のユニットがコアの大半を占めるようになると、シナリオのバランスが崩れていく印象があります。もちろん、多くのキャンペーン作者はこの傾向を知っているので、後半のシナリオになるほど平均経験値の高いコアユニットを想定してバランスを取っているはずです。

このキャンペーンに関しては、後半のシナリオでは平均経験値90程度のコア部隊を想定してバランスを取っているようなので、今回の平均85という経験値は、最終面の値としては実にチャレンジングなものだったと思います。つまり、Mr.Fix を使えば、最終面まで、少なくとも作者が想定した程度、あるいはそれ以上の難易度が保たれると思われます。

今回のテストによって、Mr.Fix を使えばキャンペーンの難易度が上げられることを再確認できました。今回は特に、修正基準を「兵員1名単位」としたので、経験・士気値の下落度も高くなりました。しかし、修正基準にはもうひとつ「50%以上の兵員損害」という基準もあります。こちらを使えば、大損害を受けたユニットのみ修正適用をうけるので、経験・士気値の下落はある程度緩和できます。したがって、最高に厳しい条件で挑戦したい場合は前者の基準を、いやいやそんなに厳しくなくていいよという場合は後者の条件を使用することをオススメします。

というわけで、最後は Mr.Fix の宣伝になってしまいましたが、実際なかなか良い感じのツールだと思うので、キャンペーンでより厳しい戦いを求めている方は是非お試しください。
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経験・士気値の変動
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付記

Post by Nor » 2008.Apr.06(Sun) 16:34

【キャンペーン総評付記】

二回目の分岐点(コンパス作戦開始時)で、第7軽騎兵連隊(7th Hussar)を選択して再挑戦してみた印象です。

分岐後の3シナリオは、はっきり言って出来がいずれもイマイチでした。ただ、時間はかからず難易度も低いことは救いでした。シナリオの内容がマズいというのに加えて、テキストの内容もすっきりしない感じ。必要だと思われる修理やアップグレードに関する情報が書いていなかったり、任務の具体的な指示が明確ではなかったり。時間が足りなかったのかな。

というわけで、プレイの面白さから言えば、二回目の分岐で第7軽騎兵連隊を選択するのはあまりオススメできませんが、第二章に持ち越せるという意味では、やっぱりコレを選ぶにもアリなのかなあ。
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【キャンペーン総評付記2】

Post by Nor » 2008.Apr.13(Sun) 14:59

【キャンペーン総評付記】

二回目の分岐点(コンパス作戦開始時)で、第11軽騎兵連隊(11th Hussar)を選択して再挑戦してみた印象です。

分岐後の4シナリオ(戦闘があるのは3シナリオ)は、前半2シナリオは第7軽騎兵連隊のものとほぼ同じものです。したがって違いは後半の2シナリオですが、これはどちらも本当によく出来ており、なおかつ難しく面白かったです。

プレイ前は、装甲車中隊なんて非力な部隊を率いて戦っても面白くないんじゃないの?と思っていましたが、この2シナリオはちゃんと装甲車の特徴を活かして戦わないと勝てないようにできていると思います。

難を言えば、二回目の分岐で他の部隊から装甲車中隊に変更すると、選択できる装甲車ユニットが、時期的にモーリス製のものしか選べないという点でしょうか。本来ならば、ロールス・ロイスも選べないといけないはずなので、これは作者陣のミスだと思います。

私は、一回目の分岐で第7軽騎兵(軽戦車+巡航戦車)に変更してしまいましたが、最初からずっと装甲車で通してプレイするのも面白いのかもしれません。なお、この第11軽騎兵連隊で終了したセーブデータは、第7軽騎兵と同様に、第二章に持ち越せるようです。つまり、マチルダで編成される第7戦車連隊で第一章を終えた場合のみ、第二章にデータを持ち越せないということのようですね。
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