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Red steel at Tylizi

Posted: 2005.Jun.18(Sat) 00:00
by Nor
1. v8.3
2. 289 Red steel at Tylizi(TYLIZIの赤軍戦車隊)
3. 2時間
4. ソ連
5. 難易度 4.5/5
6. 司令部標準
1941年7月7日1500時 ロシア、ヴィテプスク近郊 有効視界50 ターン16 Assault

【前フリ】
 今回の主役はソ連第7機械化軍団第187戦車師団のKV重戦車。5輌のKV-1(うち2輌は増援)と2輌のKV-2、そして1個中隊の歩兵がドイツ軍陣地を襲います。12.7mm DShK重機関銃が2つあるが、砲兵は一切無し。独ソ戦が始まったばかりのこの時期、KV重戦車はドイツ軍を恐れさせた東部戦線最強の戦車でしたが・・。

【戦闘経過】
 VHはEOB9個とPPT10が2個。PPTは初期配置地点からすぐのところにあるのだが・・はて?なんでこんな設定にしたのだろう?いぶかしみながら歩兵が前進。その理由はすぐに分かった。ダッシュでPPTに向かった歩兵はあっさり発見され、敵のターンにこれでもか!というぐらいの銃撃を受ける。どうやら敵は歩兵部隊が多いらしい。

 マップ東西に川が流れる。VHの配置状況からみて敵陣地は南側の高地付近。川の北側には増援KV-1と歩兵1個小隊。残りは高地の東側、つまり正面から攻め込むことになる。北側の部隊が側面攻撃をかけるのが王道だろう。ただ川の周囲は湿地が多く渡りづらいので牽制と監視が主な役目になるだろう。

 東から攻める主力は歩兵が1HEX移動でじわじわ前進。敵はよく隠れており歩兵は全く見えない。北側のKV-1に砲撃した時だけ若干の戦車が見えるが、すぐに見えなくなってしまう。ドイツ軍が上手いのか、我が赤軍歩兵が劣っているのか。おそらくどちらも正しい。確認できる敵戦車は38(t)、三突B、3号J型。他にも隠れていそうなのでKVといえども迂闊には近づけない。戦車隊は高地にのぼっちゃ降りての姑息なヒットアンドアウェイを繰り返す。

 ドイツ軍にとっては結構有効なこの方法は、KV-1ではほとんど意味無し。全く当たらない!ただし敵歩兵を発見したKV-2にはかなり有効。152mm砲で完全に敵歩兵をピヨらせることができる。歩兵を見つけては後方の機関銃とKV-2がピヨらせて、何とか前進。前進歩兵が攻撃してしまうと、わんさと隠れている敵歩兵に集中攻撃されて次のターンは動けなくなるので、なるべく射撃しない。

 しかし1HEX移動に徹すると制限ターンが厳しい。もとより全部のVHを取るつもりはないが、最終的には高地のふもとまで前進して、9個のEOBのうち6つは取っておきたい。中盤にさしかかる頃、KV隊が姿を晒して前進を開始。すると途端に猛攻を受ける。戦車以外の姿は見えないが、37mmと50mmの対戦車砲がうまく隠れているようだ。しかし所詮はドアノッカー。全弾跳ね返す。が、それなりに抑圧は受ける。距離が縮まれば致命弾を受ける可能性もあるだろう。特に10HEX以下でのAPCR弾には油断できない。

 うまい具合にKV戦車は発煙弾を持っているので、やばそうな所を目隠ししながら前進。最強戦車とは思えないほど細心の注意を払いながら距離を詰めて、何とか38(t)に命中させて破壊。そう、KVは遠いと当たらないのだ。隠れた対戦車砲もどうにかいぶり出して排除。しかし問題は歩兵同士の戦い。攻める赤軍兵は弱い。特にこの時期は最低レベルだ。これまで強力に支援してきた後方の機関銃も、故障したり弾切れしたりで全部使えない。最後はKVが歩兵相手に主砲を撃ちまくるみみっちい戦いで、どうにか高地ふもとまで到達。

【結果】
スコア 2987:512(DV)
ソ損害:Men49
独損害:Men140、Art3、AFV5

【感想】
 かの「街道上の怪物」でもおなじみのドイツ軍を震撼させたKVショック。しかしKV戦車は本当にそれほどの脅威だったのでしょうか?このシナリオではKV戦車の長所と短所が見事に現れています。正面から遠距離で対峙した場合にはほとんど無敵で、この時期のドイツ軍でKVを排除できる兵器は88くらいでしょう。しかし遠距離交戦では、この時期のソ連軍の練度もあいまってKVの撃つ弾は全くといっていいほど当たりません。20HEX程度の遠距離交戦では、10発に1発ラッキーショットが期待できるくらいでしょうか。少なくとも敵を破壊できる可能性がある分、KVは有利かもしれませんが、そんなに大きな利点ではないような気がします。ただしKV-2の152mmは歩兵に対しては絶大な効果があります。

 おまけに"攻める"側に回ったKVは、自身を守る"距離"という最大の盾を捨てなければなりません。彼我の距離が詰まれば、ドアノッカーと笑っていた対戦車砲にも側面を撃ち抜かれる脅威は高まり、10HEXを切ればAPCR弾で正面でも撃ち抜かれる危険があります。これを防ぐには、歩兵が側面を固めて敵の布陣をしっかり見極める必要があるのですが、この時期の赤軍兵は弱い弱い!数さえあれば何とかなりそうですが、このシナリオのように数でも負けてるととてもドイツ兵と互角には撃ち合えません。

 さらに言えば、このシナリオのドイツ軍は全く動かないのですが、KVは鈍足なので難地形を踏み越えて側面や背後に迂回して奇襲するという作戦も不可能です。結局、史実のソ連軍が採った戦法、歩兵の数と戦車の重装甲をいかしてただただ正面から突っ込む、という方法はそうせざるを得なかったから・・ということがよく分かります。

 これが防御戦ならまた違うのでしょうが、この攻撃シナリオではKVの重装甲と強力な主砲でワハハハハ!とドイツ軍を踏みつぶすつもりでいると、こてんぱんにやられてしまうでしょう。最強戦車のはずなのに、ものすごく地味な戦いを強いられる。独ソ戦初期の赤軍の脆さを痛感できる納得の好シナリオです。