<3ターンまでのソ連軍動向>
ソ連軍は序盤の戦力優位をいかそうとして、開始直後から誰もが予想しないほど果敢な前進を見せました。1ターンでM20を血祭りに、2ターンではHTと歩兵2個を壊滅させて勢いにのるかと思われましたが・・・。3ターン米軍の攻撃で手痛いしっぺ返しを食らいました。結局、この3ターンでソ連軍は全面撤退を決断。安全地帯で増援を待って報復の機会を狙う手に出たようです。3ターン終了時点での現有戦力は以下の通り。
<P2:Skyray>
IS-4
T-70−壊滅
M5 Halftrack
M5 Halftrack−壊滅
M5 Halftrack−壊滅
IS-4(T6増援)
IS-4(T7増援)
<P4:Sufiy>
SO Company HQ
M9 Halftrack
SO Assault Sqd
SO Assault Sqd
SO Assault Sqd
T-44(T4増援)
T-44(T5増援)
T-44(T5増援)
<P6:ハゼドン>
SO Btln HQ
Comsomolets
ISU-122s−壊滅ただし乗員は生存
ISU-122s
ISU-122s
<事前のソ連軍作戦>
最初の段階では、1ターンでは最前線道路付近に集結して2ターンで一斉攻撃・・という穏健作戦が支配的でしたが、ゲーム開始直前にドンドン飛び出て見える敵はガンガン撃っちゃえ!という積極作戦が提案されました。この両プランの提案順およびタイミングがゲーム開始後の展開に微妙に影響したような気がします。
また、最終的な目標−損害を減らしつつきっちり戦ってDVを狙うのか?損失によるDraw覚悟で面白い戦いを目指して敵全滅を狙うのか?−といった大目標がイマイチ議論されないまま始まってしまったのもその後に影響したようです。
<米側作戦の事前予想>
プレイヤーによって敵の予想は割れましたが、米軍はあまり前に出てこないんじゃないかという読みが支配的だったようです。当初提案されていた穏健作戦は、この予想に基づいたものでしょう。ただし、敵がVH周辺に展開していた場合の対抗策も考えられていました。
<3ターンまでの攻防>
実際にプレイを開始すると穏健作戦はあっさりと反故になってしまいました。敵1ターンの布陣を見たとたん赤軍の血が騒いだのか、想定されていた以上の積極作戦が発動されてしまいました。HT歩兵がじゃんじゃん近接攻撃を開始します。
この積極的な攻撃は、ゲームを派手にして盛り上げようという配慮をもとに、見える敵は今のうちにやっつけてしまおう!という動機が強かったと思われます。したがって、その先どうするのか?という点に関しては、敵の出方次第ということになりました。
ジャクソンの登場する3ターンまでは、とにかく見える敵を撃ちまくって数と質で圧倒しようという考えでしょう。その結果、2ターンでT-70を失ってしまいましたが、HT歩兵は道路を越えて米軍側の森にまで進出、PPT周辺にIS-4とISUを配置する形になりました。この果敢な配置が仇となり、3ターン米軍の攻撃で、HT2両と歩兵1個、おまけにISUを1両を失ってしまいます。
<HT歩兵>
ここでソ連にとって痛かったのは、ISUを失ったことよりもHT2両と歩兵を失ったことでしょう。2ターンまでのソ連軍最大の長所は、HT歩兵の意表をつく大胆な機動でした。こんなに早く米軍側の森に進出されるとは、米軍は予測していなかったはずです。森に見えないHT歩兵がいる限り、米軍は増援HEX付近の警戒を怠れず、戦闘の主導権を握れません。この意味で、ソ連の快進撃を支える基幹戦力は強力な戦車ではなくHT歩兵だったはずです。
<ISUについて>
ISUを敵の思い通りに操られて撃破されたことは、実際の損失以上に心理的なダメージになったでしょう。ISU損失の原因は、米軍の巧みな偵察と臨機引き出しにあります。最初からジャクソンと撃ちあうのであれば、どっちが勝つかは運次第だったでしょうが、M20に臨機を吸いつくされた挙句、向きまで変えられるとどうしようもありません。敵のこのような攻撃方法は、2ターンのT-70撃破でも使われていました。しかし、このISUの損失でソ連側も対処法を学習したはずです。
北と東に布陣する敵に側背を晒さないためには、ISUはできるだけ後方(西側)に配置しておくこと。臨機を簡単に吸われないためには、他のAFV(この場合はIS-4)とスタックしておくか、臨機距離を極端に短くしておくことなどが考えられます。今後、友軍AFVが増えてくれば、ISUは武装をオフにして臨機は一切せず、しばらくは自ターンの攻撃支援に専念するのも有効でしょう。そして停止し続けてIn-Coverが取れれば、ISUは正確な臨機ができる最強の火点になれるでしょう。
<転機>
この3ターンはソ連軍にとって大きな転機になりました。結果的には、道路角のPPTを囲むように煙幕を二重に張って、歩兵を含む全部隊が後退しました。全面撤退です。しかし選択肢で言えば、積極作戦を継続するという手もあったはずです。少なくとも、米軍に残された唯一の歩兵であるLMG分隊を壊滅させて隠れるという作戦は充分に実現可能だったはずで、ハゼドンさんが冗談半分で言っていた、IS-4に歩兵を積んで敵増援HEXにいる迫撃砲に突進!という作戦も、実行されていたら米軍にはかなりの打撃になったはずです。
しかし、そのような積極作戦は継続されなかった。なぜか?ここが対人戦の面白いところで、対人戦では一か八かの勝負にかけるのを避けようという心理が働きます。これはゲームを台無しにしてはいけないという相手に対する配慮もあるでしょうが、無様な完敗だけはしたくないという見栄も大きいと思われます。その結果、よく言えばバランス重視の、悪く言えばどっちつかずでキレの無い作戦が採用されがちです。
そしてこの傾向は、チーム戦でより顕著になります。プレイヤーにはそれぞれ個性があります。単純にいえば、積極派と消極派に分けられるでしょう。調子の良い時は積極派が音頭をとって全員がイケイケムードになっても、少し不利な展開になると、消極派は途端にブレーキをかけ全体のバランスを取ろうとします。作戦会議の経過を見てもわかる通り、ソ連軍は1ターンは全員がイケイケモードだったのに、3ターンでわずかに形勢不利を感じると、途端にチーム内の雰囲気がドンヨリしてしまい、口数も減り、不必要な心配をはじめ・・・。まるで2ターン開始前の米軍のようです。これはどちらが良いとか悪いとかではなく、組織というものはバランス重視で動いていくという特徴を如実に現すもので、チーム対人戦最大の面白さと捉えるべきでしょう。
<ソ連軍の弱点>
現時点でのソ連軍の弱点としては、まず第一に偵察力の弱さが指摘できるでしょう。2ターンでT-70を失ったことが偵察力の大きな損失になりました。次に、HQを除くHTと歩兵全てが最前線にいるため、後方から広い範囲で敵を監視できるユニットがHQしかいないのも不利になりました。そしてHT歩兵は中長期の作戦計画が無いまま、最初から見える敵の掃討に奔走したため、得意の威力偵察もほとんどできないままです。
この偵察力の欠如が、ソ連軍全面撤退という決断のもとになっていることは見過ごせません。ソ連側プレイヤーは、米3ターン終了時点でISUを葬ったジャクソンはまだ一級道路南の高地にいて、ソ連軍増援が通る南道路を視界に入れていると考えていました。ソ連軍が退却を決意した大きな要因は、この「いるはずのジャクソン」対策であり、増援路の安全を確保するためだと思われます。しかし、実際にIS-4が退却してみるとジャクソンはいない・・。このようなソ連軍の状況に対して、現時点の米軍はソ連側ユニットのほとんどの位置を特定できています。ソ連軍が何らかの対処をしない限り、この偵察力の差はこれからも戦況に大きく影響するでしょう。
<これから>
2ターンまでのイケイケモードから一転、3ターンで全面撤退したソ連軍ですが、まだまだ勝負はこれからです。AFVはISUが一両やられただけなので、まだDV勝利も狙えるでしょう。そもそも、全体戦力優位のソ連軍にとって最も堅実な作戦は、序盤はPPT高地をできるだけ確保しながら増援の到着を待ち、戦力が充実した中〜終盤にかけて一斉攻撃にでることです。おそらく、現時点のソ連軍はこの基本方針を思い出したに違いありません。
<総評>
・ソ連軍に足りないのは偵察力である。
・今後、損失を減らして敵AFVを撃破するには、ISUを有効活用する必要がある
・いつどのように攻勢を開始し最終目標は何かを明確にすることも不可欠