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歴史的に正しい部隊編成・再掲

Posted: 2005.Nov.10(Thu) 20:58
by junkers
歴史的に正しい中隊編成 その1
(著者注・この文章が書かれた時点ではver.8.2くらいでした)

 SPWAWの優れている点としてコマンドコントロールシステムを採用している点が挙
げられます。これによって従来のゲームでは再現が困難であった「軍隊が分隊を底辺
とするピラミッド状に組織されている理由」が感覚的にわかりやすく再現されています。
しかしながら、ゲームであるが故になにがしかの抽象化、簡略化は不可避なものであ
ります。今回はその省略化された部分にスポットをあてたコラムを書いてみました。


 さて、SPWAWでは1ユニットは1個の兵器/1個分隊の歩兵を現します。1個分隊の
歩兵は国によって構成人数に差があり、同一軍でも時期や所属などによって異なって
きます。今回は独軍歩兵についての説明から始めましょう。

 大戦初期〜中期の一般歩兵の装備はどの国も似たり寄ったりでした。ライフルは米
国をのぞきボルトアクションライフルが主流で、これは一発撃つごとにボルトを前後さ
せて装填する必要があります。ライフルのモデルガン(ないしエアガン)を抱えてみれ
ばわかりますが、走っているときはおろか歩いているときでさえ操作することが難しいも
のです。結局、分隊レベルにおいてはその火力のほとんどを実際に受け持っていたの
は分隊支援火器〜軽機関銃でした。
 独軍はMG34という、大戦における最良の機関銃が分隊レベルにまで配備されてい
ました。ここで独軍ライフル分隊のユニットデータをみてみましょう。


GE Rifle Sqd
Men 10
Rate of fire 9
Fire control 3
Kar 98K Rifle;  ACC 4, Kill 1, Range14.
MG34;   ACC 7, Kill 8, Range 16,
Stielhandgr

 独軍歩兵分隊は10人で構成されていました。指揮官、副指揮官はMP38短機関銃
(SMG)を、1名がMG34軽機関銃(LMG)を、残る7名がKar 98Kライフルを装備してい
ました。ゲームではMP38が省略されていますね。とはいえ1人分の短機関銃の火力
は省略されてしかるべきかもしれません(副指揮官はMG34のアシスタントクルーにつ
くことが多かったようです)。
 ちなみに他の国1941〜42年の標準的なライフル分隊の軽機関銃のデータを並べて
みました。

303 Bren LMG(英;Fire control 4);   ACC 6, Kill 6, Range 15
7.62mm DP LMG(ソ;Fire control 1);  ACC 6, Kill 6, Range 16
M1918A2 BAR(米; Fire control 2);   ACC 5, Kill 5, Range 14

 国籍ごとに微妙にfire controlが違うことに注意してください。この数字はエリート部
隊、つまりSSや親衛赤軍、コマンドやレンジャーでは+1〜+2されます。練度はここで
再現しているようです。どうりでソ連歩兵は弱いわけです。

 この軽機関銃の比較を見るとMG34の優位性が歴然とします。米軍のBARは(映画
「プライベートライアン」でライベンが持っていたと記憶していますが)、給弾がマガジン
式で(ベルト式ではない→アシスタントクルーを要しない兵器で)あり、軽機関銃という
よりはライフルと軽機関銃の中間的な兵器でした。史実どおりに火力不足なのがわか
ると思います。よく再現されていますね。

 このMG34に替わるMG42もさらに優秀な機関銃で、大戦を通じ独軍歩兵分隊は強
力な火力を保有しています。結論として「独軍歩兵分隊の火力優位性」が言えます。こ
れは米軍がBARを分隊に2丁配備する大戦後半まで続きます。



 さて、分隊が集まると小隊になります。独軍ライフル小隊は1939年のポーランド戦以
降は4個のライフル分隊からなりました。ゲームでもこれが再現されていて、Rifle plt
は4ヶ分隊から構成されています。B0とかC0のように末尾が0番の分隊が小隊長のい
る分隊としていますが、実際には4ヶの分隊の上に小隊本部がありました。小隊本部は
小隊長や伝令兵、衛生兵、御者(馬車が配備されていましたので)などで構成されてい
ました。ゲームでは戦闘能力がないことから小隊本部を省略し、小隊長を第一分隊に
含めてしまっているものと思われます。馬車は小隊本部あたり1〜2両が定数だったよ
うです。
 部隊によっては小隊につき1〜3門の50mm軽迫撃砲を装備していたようです(おそら
くは小隊直属の軽迫撃砲班の分遣隊)。ゲームでもこれが再現されており、小隊あたり
1門の50mm light Mortarが配備されています。
 
 さあ、これで1ヶ小隊になります。(ここまでがオレンジのラインで囲まれた部分です)
小隊の上は中隊です。独軍ライフル中隊は3〜4ヶのライフル小隊と1ヶの機関銃分
隊、サポート部隊(補給、糧食その他の細々としたサポート)からなっていました。機関
銃分隊はMG34中機関銃/重機関銃2〜3丁で構成され、これはそのまま各分隊に1丁
ずつ分散されたり、あるいは防衛拠点などに集中配備されたようです。機関銃分隊の
所属は(文献により差違はありますが)大隊司令部麾下の重火器中隊からの分遣隊と
思われます(図中で点線で示した部)。同様に大戦初期には対戦車ライフル分隊
(7.92mmATR×3丁)が配備された部隊もあったようで、これも時に各分隊に1丁ずつ
分散されたようです。
 これら小隊の上には中隊本部がありました。中隊長、伝令兵、医官、衛生兵などから
なります。見ての通り戦力にはなりませんが、ゲームでは中隊本部所属の軽迫撃砲
班、対戦車ライフル班の司令部に当たる1ヶ分隊を中隊長が指揮する分隊(C0,D0,E0
の上のB0分隊)と想定しています。サポートには少数のトラックやオートバイも含まれ
ているのですが、直接戦闘に関わりはしないということでゲームでは省略されていま
す。
 サポートは武器担当下士官や行李担当下士官、馬車(4台程度)、糧食用の馬車やト
ラック、雑務用のサイドカー(1台)、トラック(2台)などからなります。
 
 そういうわけで、ゲームでの1ヶ中隊(3ヶ小隊編成)を完全再現しようとすると、
Rifle sqd×13(1×中隊本部, 3×小隊(=4ヶ分隊))
MG34 MMG(orHMG)×3
50mm Mortar×3
7.92mmATR×3


の計22ユニットがそれに当たります(緑のラインで囲まれた部分です)。これはキャン
ペーンなどでRifle coがまったく同じ編成にされていて、このゲームのマニア性が伺わ
れます。
さらにサポート(糧食除く)として
Wagon or Pack Mule×6〜9(1or2×小隊本部, 3×中隊本部)
Gun team×1(中隊本部)
Med Truck×2(中隊本部)

になりますが、これらが運ぶのは武器、弾薬などであり、ゲームのように重火器や歩
兵分隊を運ぶ目的には使われなかったと思われます。


 さあ、いよいよ本番です。なにせSPWAWは大隊規模のゲームと謳われており、たっ
たの22ヶユニットでは全然足りないのです。
 独軍大隊は大隊本部、3ヶライフル中隊、1ヶ重火器中隊、1ヶ工兵小隊、サポート部
隊からなっています。
 大隊本部は大隊長、副官、伝令兵や軍医、獣医、書記、ラッパ手などからなり、定数
は25人程度だったようです。ゲームではGE HQがそれに当たりますが、6人編成で少
し寂しい気がします。隣接してCommand Post(20人編成)を配置すると人数的にも雰
囲気的にも正確になります。
 重火器中隊は中隊本部、3ヶ重機関銃小隊、1ヶ迫撃砲小隊からなります。中隊本部
は中隊長の他、観測係や通信班などからなっていました。FOで再現するのがよいでし
ょうか。重機関銃小隊は先に述べたように各ライフル中隊に分遣されていたようです。
迫撃砲小隊は小隊本部、迫撃砲分隊×3からなり、各分隊は81mmMortarを2門ずつ
保有していました。
 ゲームではMed Mortar Btyを購入すると小隊本部代わりのRifle sqd×1、81mm
Mortar sqd×6が含まれていて、迫撃砲小隊を完全再現できます。厳密に言うと1ヶ
Mortar sqdには2門の81mmMortarが含まれることになるのですが、考えるとややこ
しくなるので数が合っていれば良いとしましょう。
 工兵小隊は1ヶ工兵分隊、1ヶ短機関銃分隊、1ヶライフル分隊からなったとする資料
(SPWAW TOE)もあるのですが、3〜4ヶ工兵分隊でよいのではないでしょうか。

さて、独軍一個歩兵大隊をゲームで再現すると、こうなります。

GE HQ(大隊本部)
Command post(大隊本部)
Engineer Plt(工兵小隊;計4ユニット)

Rifle co(計22ユニット)(第一中隊)
Rifle co(計22ユニット)(第二中隊)
Rifle co(計22ユニット)(第三中隊)

FO(重火器中隊本部)
Med Mortar Bty(計7ユニット)(迫撃砲小隊)

 実に80ユニット、ポイント数にして2300くらいになります。1個歩兵大隊の戦線は400
〜1000mが望ましいとされていましたから、上記の80ユニットで8〜20ヘクスを受け持
てるわけです。はて!20ヘクスとしても、その戦線で80ユニットもあれば何とも密度の
濃い戦線ができそうですが…

 最後に、独軍の歩兵大隊の編成にも部隊ごとに様々なバリエーションがありこれが
絶対ではありません。おおよその1ヶ大隊の雰囲気を知っていただければ幸いと考えま
した。
 タイトルにその1とつけましたが、かなり疲れたので当面その2はありません。(2003.1.28 junkers)

RE:ドイツ歩兵部隊

Posted: 2005.Nov.11(Fri) 19:46
by Magsaysay
ドイツ軍歩兵の編成について書かれたものとしては、

http://maisov.oops.jp/oss/index.htm

上のサイトの「ドイツ軍の小編成」が極めて分かりやすく書いてあります。
#1 ドイツ歩兵中隊の編制  #2 大隊本部と重火器中隊
辺りは一読オススメ。
いわゆる、補給部隊やその他の部隊。製パン部隊やら野戦病院まで色々な部隊の情況が載っているのもありがたい所です。

ちなみに、第2次大戦頃の歩兵部隊には(そしてちょっと前までの陸上自衛隊も :cry: )トラックなどの特別な移動手段など無く、戦場と戦場の間を移動する際にも、徒歩で移動しなければならないことが多々ありました。
ドイツ陸軍歩兵も一部のSS部隊やエリート機械化部隊をのぞくと、戦場間を移動する際の移動手段を保有していないことが多かったようです。
そして、馬車やトラックなどがあっても、補給・整備部隊分を供給するのが精一杯でありました。歩兵の移動手段としては自転車も重宝されていたようです。

ちなみに、歩兵の徒歩移動の分野では特に日本陸軍が優れており、インパール作戦の時には英軍が日本の徒歩移動能力を軽視して、遅滞戦闘に失敗し酷い目にあっています(でも日本陸軍はもっと酷い目にあいました :cry: