<おしらせ1>
またまた、いつの間にか掲示板がダウンしていたようですね。ログを見ると、およそ2年半ぶりの改修です。
この間、何度かメールでご要望があったようですが、この度ようやく重い腰を上げて掲示板を修復いたしました。
管理不行き届きで申し訳ありません。

<おしらせ2>
サイト管理を楽にするために体裁を変更しています。
本サイトのメインコンテンツであったSPWAWの解説記事は以下からアクセス可能です。
SPWAW解説記事一覧


<5分で調べたSPWAW界の近況>

びっくりしたことーその1「Depot リニューアル」
SPWAW界を長年牽引してきた世界最大のファンサイトSPWAW DEPOTが、昨年の4月に閉鎖、13年の歴史に幕を下ろしたようです。
と同時にDepotメンバーの一人 Falconさんが新たなサイトSPWAW DEPOTを立ち上げたようですね(笑)。
まあ、中心メンバーが入れ替わって、こじんまりした感はありますが、実質的にはリニューアルって感じですかね。
旧DEPOTの遺産は相続されているようで、今後ともがんばって欲しいところです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawdepot/

びっくりしたことーその2「砲撃要請画面ラグ解消」
マルチコアCPUが普及した頃でしょうか、ある程度以上のスペックのPCでは、砲撃要請画面で挙動がおかしくなる不具合がありましたね。
それが原因でSPWAWを離れた・・という方もおられたような記憶がありますが、どうやらこの不具合、ついに修正されたようです。
これもDEPOTメンバーのおかげみたいですね。Matrix Games 公認(というか黙認ですね)のもと 、本体ファイル MECH.EXE をいじることに成功したようです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawde ... -t277.html


というわけで、この機会にもう一度SPWAWをやってみようかな、と思われた方は次のリンクからダウンロードをどうぞ。
DEPOTで全てのファイルのホスティングも始めたようです。
https://www.tapatalk.com/groups/spwawde ... es-t6.html

【映画】『告発のとき』 ・『リダクテッド 真実の価値』 ・『ストップ・ロス/戦火の逃亡者』

参考になる書籍・映画・ウェブサイトなどの紹介
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【映画】『告発のとき』 ・『リダクテッド 真実の価値』 ・『ストップ・ロス/戦火の逃亡者』

Post by Nor » 2009.Nov.01(Sun) 16:31

<イラク戦争三部作>

現代アメリカのイラク戦争に対する厭戦ムードを如実に表す三作をまとめてご紹介。

告発のとき(In the Valley of Elah) 2007 アメリカ
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実話を基にした政治サスペンス。突如失踪したイラク帰還兵の息子は殺されていた。元軍警察だった父親ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)が真相を追う。ポール・ハギス監督。トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン出演。

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リダクテッド 真実の価値(Redacted) 2007 アメリカ
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アメリカ兵によるイラク人少女レイプ事件にインスパイアされた擬似ドキュメンタリー。ブライアン・デ・パルマ監督。

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ストップ・ロス/戦火の逃亡者(Stop-Loss) 2008 アメリカ
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兵役期間が自動延長されるストップ・ロス制度を告発する。キンバリー・ピアース監督。ライアン・フィリップ主演。DVDスルー。

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<ハギスにハズレなし>

これら三作はいずれも、現在も進行中であるイラク戦争で戦地に送られる若者たちの苦衷が描かれている点で共通しています。WW2用語なら「シェルショック」、現在では「PTSD」ですが、現在のイラク情勢がいかに若者たちの心を破壊しているかを描き、ひいてはこんな現実を引き起こしたアメリカという国家、ブッシュに代表される政治体制を批判しています。他国人からみると、やっとこんな映画が出てくるようになったかと一安心、というところでしょうか。ただ、批判が露骨すぎる反戦映画というのは映画そのものとしても面白くないもので、そうした点でおそらく世評が最も高いのは「告発のとき」で、あとの二つはどっこいどっこいのイマイチさです。

「告発のとき」は殺人事件の真相を追うという筋なので、戦闘シーンは皆無で映像的には最もインパクトがありませんが、一番考えさせられる作品です。イラク帰還兵である息子が殺された真相を探る父親ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)は、ベトナム戦争を経験した生粋の軍人で、アメリカという国家や軍隊の素晴らしさを豪も疑っていない古き良きアメリカを体現する人物として描かれます。しかしそんな父親に憧れて軍隊に入った息子の死の真相を追うにつれ、その信念は揺らぎ始め、最終的にはこの国は危機に瀕していると確信するに至ります。

原題である「エラの谷」とは旧約にあるダヴィデとゴリアテの戦った場所で、劇中ではハンクが女性刑事エミリー(シャーリーズ・セロン)の息子デイビッドに寝物語としてこの有名なエピソードを語ります。事件の真相を知る前のハンクは、このエピソードの眼目を恐怖を克服することの重要性として語り、幼いデイビッドは一時この話に夢中になりますが、ラストで同じ話を語る母親に対し「なんで王様は子どものダビデを戦わせたの?」「ダビデは怖くなかったの?」と問いかけます。

本作のベースとなった実話は、そこまで政治的な主張が強い話ではありませんが、実際に起こった戦友殺しという事件からここまでお話を広げて、例によって張り巡らせた伏線を回収しつつ、きっちり人間を描くハギスの手腕はさすがです。ジョージア星人がオスカーを取った名演技も見ておいて損はないでしょう。


<やりすぎデ・パルマ>

米兵によるイラク人少女強姦事件という実際の事件を元に、擬似ドキュメンタリーというあざとい手法で描いた実験的映画。私は手ぶれ映像に酔う方ではないので、素人っぽいハンディカムの映像も苦にはなりませんでしたが、ここまでわざわざ見難い画面を作る必要があるかはとても疑問に思いました。ただ、ベトナムで自由な報道を許して失敗した米軍は、湾岸戦争以降はきっちり報道統制を行ったため、ヤバイ事実が世間に晒される可能性があるとすれば、この映画のように現場の兵士が個人的に撮影した映像や写真しかないわけで、この映像はそうしたことを言いたいがためだと解釈できるかもしれません。

事実、映像作家志望の兵士がハンディカムで取り続ける日常生活風景をベースに、時折フランスのテレビ局の映像が混じるという構成で、兵士たちが見る現実と世間で報じられるイラクの様相とが対比されながら話は進みます。"Reducted" とは「検閲済み」を意味し、最後は米軍の撮影した本物のイラク人死者の写真に黒塗りの目線が入っているというオチがつきます。この目線は映画会社が遺族に訴えられるのを恐れてデ・パルマに要求したと説明されてますが、そういうのも話題作りの一環じゃなかろうかと疑ってしまいます・・。

お話としては、検問任務を担当する分隊の兵士が「クソみたいな日々」にウンザリしていき、酒の勢いも手伝って14歳のイラク人少女をレイプし、その一家を虐殺するというのがヤマです。その後、報復として兵士が誘拐されてネットで処刑映像が公開され・・と、いろんな種類の映像をみせつつも、いちおう話をまとめようと努力しているのは感じられるのですが、作り手のこれ見よがしな意図ばかりが目について、話の内容はだんだんどうでもよくなっていきました。

おまけに登場する米兵はアホばっかり(笑)。これじゃさすがに本物の兵士は怒るだろうなと私も同情してしまいました。良くも悪くもデ・パルマの存在感に圧倒されるという点では間違いないし、ベネチアで銀獅子を取ったことに価値を見出すなら見るべし。


<映画らしい映画>

最後にご紹介する「ストップ・ロス」は、戦争映画であり青春映画でありながら社会性もたっぷり、そしてなぜかMTVが制作に一枚噛んでいるというモロ若者ターゲットの映画です。MTVはすでに出発点であった音楽番組専門局という看板を捨て、若者に関することなら何でも手を出しているとは聞いてましたが、映画にまで進出してきましたか。にも関わらずというべきか、だからというべきか、興行的には制作費の半分も回収できないほど大ゴケしたそうです(笑)。

Stop-Loss というのは、志願制をとっている米軍が兵士不足を解消するための兵役期間延長制度で、映画の最後に出てくる説明によると「9.11以降アフガンとイラクに従軍した兵士は65万で、そのうち81,000人がストップ・ロスを適用された」とあります。軍によって必要と判断された兵士は、兵士自身の意思とは無関係に強制的に兵役期間を延長されてしまうというのが最大の問題で、憲法に違反するかどうかが争点になっています。最初に適用されたのは湾岸戦争時で、それ以来現在も続いていますが、さすがにオバマ政権は同制度の適用数減少を命じており、今後は減る方向になるそうですが・・。さてさてどうなるか。

あらすじは、主人公ブランドン二等軍曹(ライアン・フィリップ)がイラクでの兵役を終えて勲章を貰った地元のヒーローとして凱旋帰国し、出遅れた人生を取り戻そうとしようとしていたところ、突然再度のイラク行きを命じられてしまいます。個人の自由意思を無視したストップ・ロス制度に納得できない彼は、上官の目の前でブッシュ大統領を罵倒したばかりか、逆上して脱走してしまいます。官憲の目を逃れる逃亡生活では将来の希望もなく、ついに家族を捨てて国外に逃亡しようとするのですが・・・。

序盤の見所はイラクでの戦闘シーン。お馴染みの検問任務中にテロリストが突破を図ったのでハンヴィーで追跡開始。そして路地に誘い込まれて銃撃戦開始!お約束の「RPG~!」が炸裂するミニ・ブラックホークダウン的な展開です。おおっ、つかみはバッチリじゃん!と思ったら、ここで突如MTVの横槍が入って雰囲気が台無しに(笑)。でも若者的にはアリなのか?

以降はアメリカ本土が舞台となるのですっかり青春映画になってしまいますが、軍隊の中で主人公に "Fuck the President!!" のセリフを言わせたところは評価ポイントでしょう。「ヤツは現地で戦ってやしない。ハンヴィーの中で生きながら焼かれる戦友を見たこともない」と続く怒りの叫びは一部兵役経験者の喝采を招いたでしょうが、一般には一線を越えた表現であることも事実でしょう。アメリカでそれを言っちゃあオシマイよというところでしょうか(笑)。

これ以後はひたすら苦悩する主人公を含めて、従軍兵士すべてが何らかのPTSDに苦しむ描写はわかりやすく共感が得られやすいでしょう。トドメは顔面に火傷を負って視覚を失い片手・片足もなくした部下を訪れるシーンで、こんなもん見たら戦争なんて行くもんじゃないなと誰しも思うし。あまりにこれでもか、これでもかと続く反戦メッセージでどうやってオチをつけるんだと思ったら、最後は案の定な終わり方で、変ないいかたですがホッと安心。よく出来た青春映画だ。

当たり前といえば当たり前ですが、アメリカでは、特に従軍体験のある方からはリアリティの面で酷評されています。曰く「二等軍曹ともあろうものがストップ・ロス制度を知らないわけがない」「ストップ・ロス適用者は周りにゴマンといたはずだ」「あんな退役直前に告知されることはない。俺は規定どおり退役90日前にイラクで知らされた」「警察が無許可離隊兵を追うことはない」「ラストは現実なら営倉・降格で終わる」といったものから、「検問守備隊と追跡隊は絶対に別部隊」「あんなわかりやすい待ち伏せにひっかかるのは無能すぎ」などなど、さすがに説得力のあるご意見が多数寄せられているようです(笑)。

ま、確かにそういう部分に不備はあるにせよ、外国人である我々に現代アメリカの若者の代表的な心の叫びを聞かせてくれたという点では評価できる作品です。そしてここまで明確に反戦をアジる映画を見ると、たった数年で時代は変わったなあとも、アメリカってやっぱ懐深いよなあとも、自分で始めといて今さら何言ってやがんだとも思うわけです(笑)。
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